研究課題/領域番号 |
06041050
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
近藤 豊 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 教授 (20110752)
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研究分担者 |
MURCRAY D.G. デンバー大学, 物理学科, 教授
PYLE J. ケンブリッジ大学, 化学科, 教授
MATTHEWS W.A ニュージーランド 国立水大気研究所, 大気部門長
AIMEDIEU P. フランス国立科学研究センター, 主任研究員
OEIHAF H. ドイツ原子核研究センター, 主任研究員
SCHMIDT U. ドイツ地球圏化学力学研究所, 主任研究員
笹野 泰弘 国立環境研究所, 主任研究員 (90124346)
柴崎 和夫 国学院大学, 文学部, 助教授 (00178899)
鈴木 勝久 横浜国立大学, 教育学部, 教授 (60011764)
中島 英彰 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 助手 (20217722)
小池 真 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 助手 (00225343)
柴田 隆 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 助教授 (70167443)
OELHAF H. ドイツ原子核研究センター, 主任研究員
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
12,500千円 (直接経費: 12,500千円)
1995年度: 6,300千円 (直接経費: 6,300千円)
1994年度: 6,200千円 (直接経費: 6,200千円)
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キーワード | 成層圏オゾン / 窒素酸化物 / 硫酸エアロゾル / 火山噴火 / 不均一化学反応 / 中緯度 / 北極域 / 極渦 / 気球実験 |
研究概要 |
長期的な成層圏オゾンの減少減少は緯度45度を中心とした中緯度で顕著で、高緯度では更に大きなものとなっている。しかし観測されたオゾンの減少は気相反応過程のみでは説明できない。硫酸エアロゾルや極域成層圏雲などの微粒子上での窒素酸化物が関与した不均一化学反応過程が重用な役割を果たしている可能性が高い。しかし、大気中で実際に起きている不均一化学反応過程を実証した例は極めて少ない。ここではオゾンの破壊が顕著な中緯度と北極でオゾン破壊の化学反応システムを構成する多くの大気組成の高度分布を同時に気球及び地上からのリモートセンシングで測定することにより不均一反応過程を解明することが大きな目的である。 まず、北緯44度に位置するフランスの気球実験場で成層圏オゾン破壊の化学反応に関連する大気微量成分の気球観測を実施した。我々は一酸化窒素(NO)、硫酸(HNO_3)、反応性総窒素酸化物(NO_y)、オゾン(O_3)、エアロゾル、を測定する装置準備し、ドイツ側は塩素化合物、一酸化二窒素(N_2O)、メタン(CH_4)の測定器を準備した。フランスのAire surl'AdourにあるCNESの気球実験場で1995年10月12日にこれらの成分の高度10kmから32kmまでの高度分布の観測を行なった。これらの測定結果より、N_2OとNO_y及びCH_4とNO_yの間に極めてよい反相関関係が成り立つことが分かった。この関係は北極域でのNO_yの挙動の解析の解析に有効である。また測定されたNO/NO_<y1>の比は硫酸エアロソル表面上での不均一反応を取り入れた光化学モデルと良く一致した。このことから、中緯度でNOは硫酸エアロソルの不均一反応より大きく低下することが定量的に示された。 1995年2月11日にはスウェーデンのキルナ(北緯68度)に位置するエスレンジの気球実験場でフランス気球実験と同じ測定器を用いて大気微量成分の気球観測を実施した。実験は、極渦のキルナが中心付近に入ったときに行われ、高精度のデータが得られた。特にこのフライトでは、総窒素酸化物が極渦の中で大幅に失われる現象(脱窒)が観測されたことが極めて大きな発見的成果である。フランスの実験で観測されたN_2OとNO_yの反相関関係をこの解析で用いている。脱窒は1994年12月から1995年1月にかけて北極域に起きた極低温状態で発生した氷粒子の落下によりもたらされたものと考えられる。得られた観測データはノルウェーの大気環境研究所(NILU)のデータベースに送られた。 1995年5月にドイツに於いて本計画の気球実験に参加したフランス、ドイツ、アメリカなどのグループと研究打ち合わせを行なった。これらのグループの全てのデータを検討した結果、脱窒過程の進行に関しては整合性のある結果が得られた。しかし、NO_yを構成する各成分の濃度の比は光化学モデル計算による比の値に比べかなり大きい。この理由は現時点では分かっていない。モデルとの不一致を理解することが今後の大きな課題である。 デンバー大学のグループと共同で分光観測のためのソフトウェアーの開発を行なった。特に高度分布を求めるためのアルゴリズムを開発し、試験的なオゾン、HCl,HFの高度分布の導出を行った。またオゾンゾンデにより測定された高度分布と比較し、20%程度で一致することが分かった。今後この比較を数多く行い、高度分布をより高精度で求めるようアルゴリズムを改良する予定である。 またスウェーデンのキルナ宇宙空間物理研究所で用いるため高分解能のフーリエ変換型赤外分光器を新規に導入した。この赤外分光器をドイツの原子核研究センターにおいてドイツと共同で調整した。また太陽追尾装置についても同グループと共同で開発した。従来のフーリエ変換型赤外分光器による観測は1995年12月よりキルナのエスレンジで行われている。新規に導入した高分解能のフーリエ変換型赤外分光器の宇宙空間物理研究所への設置を1996年3月に行った。冬から春にかけて極域成層圏雲の発達と共に塩素化合物がどのように再配分されるかということを中心にHCl,HFの挙動を詳しく調べることのできるデータが得られつつある。また同時期北海道で赤外及び可視分光観測データが得られており、北極域と中緯度の化学過程を比較することができるはずである。
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