研究課題/領域番号 |
06041055
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
梅原 郁 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (00027541)
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研究分担者 |
赤松 明彦 九州大学, 文学部, 助教授 (80159326)
辻 正博 滋賀医科大学, 医学部, 助教授 (30211379)
西脇 常記 京都大学, 総合人間学部, 教授 (50108966)
冨谷 至 京都大学, 人文科学研究所, 助教授 (70127108)
籾山 明 埼玉大学, 教養学部, 教授 (70174357)
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
11,600千円 (直接経費: 11,600千円)
1995年度: 5,600千円 (直接経費: 5,600千円)
1994年度: 6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
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キーワード | 敦煌漢簡 / 簡牘 / カロシティー木簡 / 敦煌古文献 / トルファン文書 / トルファンコレクション / ロプノール簡 |
研究概要 |
平成7年度の海外調査は、前年度に引き続いて簡牘班と紙文書班に別れて調査及び研究を行なった。 簡牘班(冨谷・籾山・赤松)は7年7月末から8月20過ぎまでヨーロッパに滞在、木簡の現物を逐一調査し、必要なものは写真撮影を行なった。前年度はスエ-デン民族博物館での調査に比重をかけたが、本年度は、大英図書館所蔵の簡牘の調査により多くの時間をかけた。前年度を調査により、大英図書館所蔵スタイン将来簡の中には、未発表簡が数多く存在していることが判明し、その分析が当面の急務であったからにほかならない。 未発表簡の調査は、主として籾山と冨谷がおこない、全簡の書き写しと釈読をひとまず完了した。今後の分析をまたねばならないが、現段階ではそれら未発表の木簡は、字書の断片とくに『蒼頡編』の一部であることが明らかになった。『蒼頡編』はすでに公開されている敦煌漢簡のなかにも確認され、そのほかに居延出土の漢簡いわゆる居延漢簡のなかにもその断片が存在する。ただいずれの場合にも断片、削り屑であり、しかも同じ箇所(『蒼頡編』冒頭部分)に偏る。今後さらにこの方面の考察を進めていくつもりであるが、ひとつは、今日すでに散逸してしまった漢代の字書をこれら出土簡牘資料で復元すること、いまひとつは辺境の官吏の識字教育の実態を明らかにすることこの二点に絞って研究を進め、成果を発表したい。 字書木簡の調査は共同で進められたが、各分担者はそれぞれ独自の関心で以て、調査・研究をおこない、いくつかの成果が得られ、すでに本年度中に発表したのもある。 籾山「刻歯簡牘初探」(『木簡研究』17)はそのひとつで、大英図書館所蔵の木簡のなかで、刻みが簡の側面に確認されるものを取り上げ、その刻みの意味と「符」と称する契約簡の性格を明らかにしたものである。従来その刻歯の意味は全く気付かれなかったものであり、今回の調査による誇るべき成果である。それは一に現物を実際に手にとって観察せねば判明しないもので、写真での研究ではとうてい不可能であった。 冨谷「漢代穀倉制度」(『東方学報』)も7年度に発表されたものであり、対象としている簡牘資料は敦煌簡より居延漢簡ではあるが、辺境の穀物出納に関する帳簿の様式の分析において、その自筆署名の有無などで、敦煌漢簡さらにはロブノール晋簡がおおいに参考になった。簡の書式の分析もやはり現物の調査が不可欠である。なお、冨谷による成果のひとつとして『古代中国の刑罰』(中央公論社)があるが、「法制文書の総合的調査」と銘うつ本学術調査が有形無形に寄与したこと間違いない。 赤松は大英図書館所蔵のすべてのカロシティー木簡を現物にあたり調査し終えた。とくに、法制文書・裁判案件にかんして、その書式、封印の方法、出土場所と文書の内容等の点に注目して考察を加えたのであるが、カロシティー簡に関する従来の研究は、単に簡面に書かれた内容にのみ興味が注がれ、古文書学的考察はと閑視されていた。今回、現物の調査により、また中国簡牘の研究者との共同研究をどうして新しい研究方法が得られ、今後3世紀から5世紀にかけてのクロライナ史を漢文木簡とカロシティー簡の両者の有機的連関性を視坐にした共同研究を進めていくつもりである。 一方、梅原・辻分担の紙文書調査班についていえば、今年度は主にフランス国立図書館所蔵のべリオ将来敦煌文献の調査に重点を置いた。梅原は、ペリオ将来書のうちの法制関係の文献を実見し、マイクロフィルムの不鮮明箇所、従来の釈分の誤りの訂正を行った。その成果は、梅原作成の補正ノートにまとめられており、今後それをどのような形で公開すべきか、検討中である。なお、辻は大英図書館所蔵のS.6981以降の文書(写真等未発表)について、必要箇所のカラー写真を入手し、今後それを発表する計画でいる。 最後に、分担者のひとり西脇は今年度は諸般の都合で現地に赴き調査ができなかったのであるが、ドイツのトルファンコレクションに関しての、貴重な現状報告と研究論文を発表した。「ベルリン所蔵トルファン文書二則」がその一つであり、CH3095文書の紹介と考察を写真も含めて発表している。 今後の研究の展開に関する計画を述べれば、今回の海外学術調査は海外の諸機関の協力のうえに行なわれたのであったが、同時にお互いの研究にかんする情報交換もできた。それに基づき、平成8年度から、新たにスエ-デン、スウェンヘディン財団と、ヘディン将来文物に関する合同研究をはじめる予定でいる。
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