研究課題/領域番号 |
06041056
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
古川 久雄 (1995) 京都大学, 東南アジア研究センター, 教授 (00026410)
高谷 好一 (1994) 京都大学, 東南アジア研究センター教授 (90027582)
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研究分担者 |
川勝 平太 早稲田大学, 政経学部, 教授 (70097252)
濱下 武志 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (90126368)
山本 紀夫 国立民族学博物館, 教授 (90111088)
吉田 集而 地域研究企画交流センター, 教授 (90099953)
松原 正毅 地域研究企画交流センター, 教授 (30110084)
片倉 素子 中央大学, 総合政策学部, 教授 (60055308)
高谷 好一 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (90027582)
立本 成文 京都大学, 東南アジア研究センター, 教授 (50027588)
海田 能宏 京都大学, 東南アジア研究センター, 教授 (00026452)
応地 利明 京都大学, 東南アジア研究センター, 教授 (60024212)
坪内 良博 京都大学, 東南アジア研究センター, 教授 (00027583)
土屋 健治 京都大学, 東南アジア研究センター, 教授 (60009701)
古川 久雄 京都大学, 東南アジア研究センター, 教授 (00026410)
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
25,100千円 (直接経費: 25,100千円)
1995年度: 12,600千円 (直接経費: 12,600千円)
1994年度: 12,500千円 (直接経費: 12,500千円)
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キーワード | 移動史観 / 海域世界 / 多雨林多島海生態史 / 離散 / 乾燥帯生態史 / メスティーソ文化 / イベリア混淆文化 / 環大西洋スペクトル / 地域研究 / プランテーション / 風土 / アイデンティティ / クレオール |
研究概要 |
分野の異なる12名の研究者が東南アジアのヌサンタラ海域、同大陸部、沿岸インド、中南米とカリブ海域、アラビア海海域で調査を行った。研究のねらいは熱帯海域のネットワークが多雨林気候下と砂漠及びサバンナ気候下でどう違うのか、また類似点があるとすれば、それは生態の違いを越えて広がる文明のどんな性格に由来するのか、を明らかにしようとした。 東南アジアのヌサンタラ海域と南支那海海域は、やはり中華帝国との交易ネットワークが古くからあり、銘木、香木、特殊海産物、米、特殊食素材、生薬材料の集散に関わる華僑ネットワークが張り巡らされている。その窓口は広州が長い伝統をもっているが、近年に入ってシンガポールの発展及びバンコック、マニラ、ジャカルタといった首都の膨張と共に華僑ネットワークは格段に広がっている。それと並行して漢文化の浸透程度を異にする重層的圏域構造は、より多層的且つより強くなっている。つまりネットワークは中華帝国に収斂する側面が強まっている。 他方、この海域には西アジア及び南アジアの文化の浸透がやはり古くから存在する。この動きはしかしインド自体におけるインド化がそうであるように、定着農村と内陸王国に集中していき、ネットワーク形成の面は中世に弱まる。それが再び活発化するのは14世紀、15世紀以降のアラブ商人の活躍期で、イスラーム化と共に少し強まった。イスラーム帝国の拡大は、要するに砂漠と乾燥ステップという限られたエクメネ-しか持たず、内的エネルギーの成長が人口の離散を引き起こす会社に必然的な過程である。そこは爆発、離散、混血と定着という段階を古く時代から繰り返してきた。ネットワークそのものは継続するが、それはやがて流砂に埋まり、離散した人々も土着化して、次の爆発過程で離散してくる人々に発見されるのを待つ。アラブ圏の周縁はそういう地域である。14、15世紀の東南アジアへの回帰は。西方におけるキリスト教圏のリコンケスタによって西への離散を封じられた勢力が東方へ向かうに至ったものと考えられる。東南アジア海域はイスラーム化を相当に受け入れるのだが、しかしたとえばスワヒリ地域と比べると、人口、社会構成や精神的影響は違いがある。東南アジア海域の特徴は、熱帯多雨林、多島海の環境が強い整流作用を行う場、そこに稲作と物質文化を持ってきた華人、心を磨いたヒンドゥ文化とその内陸王国、それらを結ぶ華人ネットワークという具合に、生態と文化の多様な多層圏域があり、そこへイスラームが薄く広がったという構造になっている。それらの圏域は各自が自立・完結していて、しかも互いにつながっており、地域全体としての安定性を増すという柔構造になっている。ネットワークが全部切れたとしても、おのおの圏域は自立可能な物質的、文化的、会社的基盤がある。いわば東南アジアの安定性の確認である。但し、現在進行している生態的、文化的変化はこの内的自立性を振り崩す危険性をはらんでいることも感知される。 本調査で得られた別の成果はカリブ海や中南米のような極めて新しい混血・混住社会に接して生まれた新しい視点である。そのひとつは新大陸への人の移動を考える時、ユーラシアの乾燥帯から地中海を経て新大陸に達する巨大な移動帯が歴史の諸段階を大きく動かした、その移動帯の最先端に新大陸の社会が作られつつある。いわば移動史観で世界の諸地域を一元的に整理してみる視点も可能ではないかという点である。人は何故移動するのか。それは特定の生態に関係しているのか、人間の本性に由来するのか、移動帯の最先端でさまざまな文化はどのように生まれ変わるのか、こうした問題意識の発生である。第二の視点は新大陸に入った地中海の諸文化、就中最初の移住者となったポルトガル及びスペインをどう見るかである。アングロ・サクソンが新大陸でもやはり温帯・高緯度地方に入植したのに対して、ポルトガルは熱帯低地へ、スペインは低緯度の島嶼へ入植し、インディオ及び黒人と混血が著しい現象を見る時、既にヨーロッパにおいて混血・混淆文化を持っていたポルトガル・スペインの物質が浮かび上がってくる。人口総入れ替え的現象が生じた新大陸は旧大陸の分光スペクトルを呈しているという視点は東南アジアの分析にも有効である。
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