研究分担者 |
ERDEM Yesila Gazi大学, 薬学部, 教授
EKREM Sezik Gazi大学, 薬学部, 教授
高石 喜久 徳島大学, 薬学部, 教授 (60035558)
田中 俊弘 岐阜薬科大学, 薬学部, 助教授 (90082990)
武田 美雄 徳島大学, 総合科学部, 教授 (70025716)
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研究概要 |
本調査研究の初年度にあたる平成6年度は、わが国の国家予算の成立の遅れから、7月下旬になってようやく現地入りが実現した。またこの年は現地の天候がきわめて不順で、標本採集や分析用資料の収集に少なからず支障をきたしたが、調査地域の変更や隊員の努力により、薬用植物関連標本約900点、成分分析用資料40点(150kg)薬用遺伝子源50点など、ある程度の成果が得られた。 平成7年度は、現地の天候は順調であったが、前年の影響も残されていた。われわれは初夏にあたる7月初旬に現地入りし、以下に記す2ヵ所を集中的に調査した。先ず、7月6日から10日まで、これまで見調査のマルマラ海およびエ-ゲ海北部の沿岸部を、ブルサ〜ベルガマ〜クタヒヤの経路で調査した。また、7月13日から17日までは、アナトリア高原西部をコンヤ〜ベイセヒール〜アクセキの経路で調査した。 今年度の現地の調査内容としては、成分分析用資料の収集を中心に、特にシソ科(Labiatae)のBallota,Marrubium,Nepeta,Origanum,Phlomis,Prunella,Salvia,Sideritis,Stachys各属、ジンチョウゲ科(Thymelaeaceae)のDaphne属、ムラサキ科(Boraginaceae)のAlkanna属、オオバコ科(Plantaginaceae)のPlantago属、イラクサ科(Urticaceae)のUrtica属ほかをそれぞれ数g〜数kgずつ、都合50種類あまりを採集した。以上の調査で入手しえた資料については、順次成分分析が進められている。また、薬用植物標本については、およそ500点を収集しえたが、これらは1セットずつ京都大学とガジ大学の標本室に収納・保管され、双方で分類学的同定を進めている。 わが国に自生するムラサキの根は"紫根"と称し、染料、薬用に供されてきたが、この植物は現在絶滅に瀕している。トルコにおいてはムラサキの近縁植物が多数自生しており、ムラサキと同様のナフトキノン系色素を含有することが知られている。しかしその薬学的評価はあまりなされておらず、今回の調査研究で収集し得た資料を用いて、色素成分の定性・定量分析を行った。その結果、Alkanna cappadocica,A.confusa,A.pseudotinctoria,Arnebia densifloraはムラサキの数倍の色素量をもつことが判明し、光学活性は異なるものの、色素源として非常に有望であることが明らかとなった。 トルコにの薬用植物は、天然物化学的にはまだ十分精査されているとは言い難く、興味ある植物が数多く残されている。まず、シソ科植物より、Nepeta nuda ssp.albifloraより数種の新規iridoid化合物を単離、・同定し、近縁のNepeta ciliciaからも同様に新規化合物nepetaciliciosideを単離・同定した。また、Marrubium astracanicumからは2種の新規ラブダン骨格をもつditerpenesを単離・同定した。 以上述べてきた種々の解析のうち、現地調査のまとめについては、関連する専門誌(J.Ethnopharmacol.,Economic Botany,Int.J.Pharmacog.)にシリーズとしてこれまでに6報が発表されている。また一部は、国際伝統医薬シンポジウム(富山、1995)で発表、また日本薬学会116年会(金沢、1996)のシンポジウムでも発表を予定している。また、すでに分析研究が終了したものについては、一部が専門誌(Phytochemistry,Chem.Pharm.Bull.,J.Nat.Prod.etc)に発表され、また、日本薬学会116年会(金沢、1996)の生薬・天然物部会での発表を数題予定している。 今後は、これまでの調査で集積された資料について、日ト間の共同研究による解析と分析実験を推進し、より一層、資源開発研究に寄与して行きたいと考えている。
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