研究課題/領域番号 |
06041086
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
鳥山 寛 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教授 (00108359)
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研究分担者 |
江藤 秀顕 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助手 (80244094)
板倉 英世 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (00010512)
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
10,300千円 (直接経費: 10,300千円)
1995年度: 4,300千円 (直接経費: 4,300千円)
1994年度: 6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
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キーワード | カポシ肉腫 / アフリカ / 病因論 / EBウィルス / エイズ / 地理病理学 / 細胞起源 |
研究概要 |
本年度は研究代表者鳥山、研究分担者江藤が現地におもむき、各施設に収集保管されていた組織標本、約3,500例を光顕的に調べ、その中から25例のカポシ肉腫およびカポシ肉腫と病因的になんらかの関連性をもつとおもわれる小児ホヂキン病、バ-キットリンパ腫など132例を得た。組織学的検索の過程で診断困難な例には特殊染色をほどこし、診断の一助とした。また、各症例についてその臨床および病態像、患者の年令、性、居住地、民族、エイズウィルス感染の有無などを調べ、従来よりおこなってきた調査で得た結果と併せ解析した。 1.カポシ肉腫の疫学:西ケニア地域にエイズが蔓延しはじめたと考えられる年代は1980年半ばであり、調査結果をこれ以前と以後に分けて分析すると、1)ヴィクトリア湖周辺部やウガンダに隣接した高温で湿潤な地域に住む民族、ルオ-、ルィアに多く見られたカポシ肉腫が乾燥地帯や冷涼な熱帯高地の住民に広がった。2)男女比は9:1から6:1となり、女性における頻度が上昇した。3)幼児期(5才前後)と中高年期(50才以上)に見られた二峰性の好発年令に青年期(20才代)が加わり、三峰性となった。4)患者の平均年令は40才から36才へと若年化した。5)全悪性腫瘍中に占めるカポシ肉腫の頻度は2.6%から3.8%へと増加した。6)初発部位は乳幼児ではリンパ節、成人では足、下肢の皮膚に結節状病変として見られることが多かったが、成人でもリンパ節浸襲をともなう例あるいは体幹初発例が増加した。7)全身撒布性の丘疹状病変を示し、病態的に欧米のエイズ流行病型カポシ肉腫に酷似した激症性のカポシ肉腫が増加した。これらの結果から西ケニア地域におけるカポシ肉腫の疫学的な推移を見ると、1980年代後半より従来のエイズウィルス感染をともなわないアフリカ風土病型カポシ肉腫に代わって、エイズ流行病型カポシ肉腫が増加し、西ケニア地域におけるカポシ肉腫の大半を占める傾向に移行しつつあるという新知見を得た。これらの結果は第32回日本アフリカ学会総会および第37回日本熱帯医学会総会で発表し、第85回日本病理学会総会でも発表予定である。また、データの一部は論文としてAmerican journal of Tropical Medicine and Ilygieneに投稿、受理された。 2.カポシ肉腫の細胞由来およびその性状:収集した標本材料は現
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地機関の許可のもと、当研究所に持ち帰り、すでに保有している標本とともに光顕、電顕および免疫組織学的に検索をおこない、光顕的に1)アフリカ風土病型カポシ肉腫の初期像は肉芽組織様病変であり、その進展とともに血管肉腫様病変、線維肉腫様病変、未分化細胞の出現を示し、同時に病変部の細胞密度が増加する、2)増生した非腫瘍性血管の周囲に存在する未分化な間葉系細胞の増殖がカポシ肉腫の本態である、3)病変が進展した例でも多くの悪性腫瘍に見られる異常な核分裂像などの強い悪性を示唆する所見は少ない、などが明かになった。電顕的に、どの病期におけるカポシ肉腫細胞も1)血管内皮細胞由来を示唆するWeibel-Palade小体は見られない、2)織内に漏出した赤血球や、赤血球を貪食したカポシ肉腫細胞はふんだんに認められるが、これらの細胞は血管内皮様の連続した細胞構築を示さない、3)カポシ肉腫細胞は真皮の血管周囲、皮膚付属器周囲に存在する樹状ないし紡錘型細胞(筋線維芽細胞?)に類似する、などの結論を得た。免疫組織学的研究では、Vimentin、Laminin、S-100蛋白、VIII因子関連抗原、XIII因子関連抗原、Actin、endothelial cell surface marker、endotheilin、collagen IV、UEA-1など各種の免疫染色をおこなった結果、カボシ肉腫細胞は多くの細胞に分化する能力を持つ未分化な間葉系細胞由来であることが推察された。これらの知見はSpringer社のTropical Pathologyに記載した。また国際病理アカデミー・タイ支部会にて招待講演をおこなうとともに第85回日本病理学会総会でも発表予定である。上記の免疫染色のほか、HLA-DR、Smooth muscle specific actin、CD34などの新しい細胞マーカーを用いて検索を続行中である。 3.カポシ肉腫とEBウィルスとの関連性:現地で得たバ-キットリンパ腫、小児ホチキン病組織標本を対象に免疫染色、PCR法、in situハイブリダイゼーション法にて検索をおこない、いくつかの小児リンパ節型カポシ肉腫にEBウィルスの存在を確認した。現在、他のヘルペスウィルス類の検索を含めて、研究を継続中であり、アフリカ風土病型カポシ肉腫の発症に関与するウィルスを検索し、エイズ関連型カポシ肉腫の発症機序との違いを解明したいと考えている。 これらの研究結果は論文とし、ケニアの関連機関に送付する予定である。 隠す
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