研究課題/領域番号 |
06041091
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
山崎 柄根 東京都立大学, 理学部, 教授 (90008714)
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研究分担者 |
SLAYTOR M. シドニ大学, コン虫学科, 教授
山岸 宏 筑波大学, 生物科学系, 講師 (80092534)
音川 実 法政大学, 社会学部, 教授 (70072923)
相原 康二 東京都立大学, 理学部, 教授 (70091874)
田中 浩輔 杏林大学, 医学部, 助手 (50236585)
黒川 信 東京都立大学, 理学部, 助手 (50211222)
矢沢 徹 東京都立大学, 理学部, 助手 (30106603)
桑沢 清明 東京都立大学, 理学部, 教授 (10015589)
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研究期間 (年度) |
1988 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
8,200千円 (直接経費: 8,200千円)
1994年度: 8,200千円 (直接経費: 8,200千円)
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キーワード | カギムシ / 有爪動物 / 系統分類学 / 神経生物学 / ゴンドワナ大陸 / オーストラリア / マレイシア / 原始動物 |
研究概要 |
カギムシは動物系統学上、環形動物と節足動物の間の中間的特徴をもつ1つの固有な原始的動物といわれる。実際、その祖先的なグループの化石はカンブリア紀の軟質頁岩層から知られ、今日みられるカギムシとほとんど変わらない体制を備えている。この動物の分布は、地球上に不連続にみられ、しかもマレー地域を除くと、いずれも南半球の特別なところに生息していることはゴンドワナ大陸起源の動物であり、このことからもその起源がカンブリア紀に逆上るとも考えられるのである。 この動物は一見して唇脚類のヤスデ、あるいは環形動物のゴカイなどを思わせるが、体表がきわめて薄く、軟らかいクチクラからなっており、その表面がビロード状であるところに大きな特徴がある。 採集に当たってはこのビロード体表のヤスデ状のむしを目安に探した。実際採集地にはカギムシと見誤るヤスデが多く見られた。またヤスデなどの似た動物との区別点は、カギムシがすこぶる強力な粘液を出すことであった。こうした特徴をもとにオーストラリアとマレーシアのこの動物の調査を行った。調査に当たっては、オーストラリアにおいては、担当者のM.Slaytor教授(シドニー大学昆虫学教室)ならびに彼から紹介されたN.Tait教授(マコ-リ-大学生物学教室)にお世話になり、またマレーシアではH.S.Yong教授(マラヤ大学動物学教室)から貴重な情報をいただいた。 オーストラリアの調査。調査直前の文献調査からキャンベラ近辺では9月ごろがもっともカギムシにとってよい季節である(Moore,1978)情報を得た。このことから、Slaytor教授と連絡を取り、地元の採集地にくわしいシドニーのN.Tait教授を紹介してもらい、この二人、同僚研究者、大学院生ならびに運転手など総勢13名で、ニューサウスウエールス州一帯のユ-カリ林に分け入った。Tait博士によれば、この動物はきわめて個体数が少なく、まる1日かけて1個体程度しか採れないとのことであったが、いった住み場所を見つけると、かなりまとまって採れることもあるとのことであった。結局、シドニーから300キロメートル離れたブルーマウンテン国立公園内の標高1200メートルの1地点で、倒木からEoperipatoides leuckartiiと思われる黒い種類ともう少し色が淡く、しかもより大形の種を得た。前者は一応leuckartiiとしたが、オーストラリア側の研究者によれば、新種とのことであり、また後者の種も別の新種とのことであった。 採集した材料はアイスボックスにつめ、シドニーまで生かしたまま持ち帰った。マコ-リ-大学の実験室を借りて、系統学上の研究のために組織切片用固定を行い、また神経生理学予備実験日として開腹して免疫細胞化学組織標本の固定処理を行った。オーストラリアでは、動物類は法律によってその持ち出しがきびしく制限されているが、共同研究であることから、とくに大学側の好意により多く採集できたleuckartiiの近似種については持ち出すことができた。もう1種の方は許されなかったのは残念である。 マレーシアの調査。マレーシアのカギムシはすでにこの国の絶滅危急種に指定されており、仮に採集しても観察後にすぐ放すか、採集許可を国から得て持ち出すか、のどちらかしか選択できない。採集許可の方は、補助金の交付が遅かったため、こちらもマラヤ大学の動物学教室のYong教授にお世話になり、マラヤ大学で実験用に使うということで、固定処理した後のものなら提供できるという約束をとりつけてから、調査地に入った。マレーシアでは、最近10年間に採集されたことはないということであったが、Yong教授の資料ならびにオーストラリア側のTait教授の採集文献資料を参考にして、過去の採集場所もしらみつぶしに探索調査した。マレーシアの場合は主に熱帯雨林の床上の落葉中を調査したが、採集するまでにいたらなかった。調査は12月であったが、この時期は雨期に当たり、かなり湿度が高く、この動物の採集にはよくないのか、あるいは記録にあるかつての採集地は開発などで環境破壊が進んだため生育地として適さなくなったのかとも思われ、今後よりくわしく調査を進め、カギムシの保護対策をまず練る必要が痛感された。
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