研究課題/領域番号 |
06041095
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 北海道東海大学 |
研究代表者 |
印東 道子 北海道東海大学, 国際文化学部, 助教授 (40203418)
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研究分担者 |
RUBINSTEIN D グァム大学, ミクロネシア地域研究センター, 助教授
片山 一道 京都大学, 理学部, 助教授 (70097921)
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研究期間 (年度) |
1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
4,200千円 (直接経費: 4,200千円)
1994年度: 4,200千円 (直接経費: 4,200千円)
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キーワード | ミクロネシア / ファイス島 / 外界接触 / 異文化認識 / 東南アジア |
研究概要 |
本研究ではファイス島の埋葬遺跡調査に関連して、周辺諸地域の人類集団、埋葬をめぐる諸習俗、生態環境、地域間交流を示す自然遺物および人工遺物などの比較研究を行った。具体的には、ファイス、ヤップを含む西ミクロネシアとフィリピン、マレーシア、南中国地域において、一次資料の収集およびこれまでに蓄積された博物館資料の調査をおこなった。 片山は、人類学的な調査を中国広西チワン自治区柳州市にある白蓮洞科学博物館および、フィリピン国立博物館所蔵の古人骨資料を対象としておこなった。中国では、今から8千年程度さかのぼる大竜潭人の人骨化石を調査し、ミクロネシアなどのオセアニア方面に最初に拡散したグループの身体特徴を推測するための重要な知見を得た。後者では、ルソン島およびミンダナオ島の考古遺跡で出土した合計20体分の古人骨資料を観察して、ファイス島で出土した人骨を分析するための比較資料を収集した。 印東は、まずマリアナ諸島にてこれまで発掘報告された遺跡および出土遺物に関する調査を行い、西カロリン諸島の物質文化とはかなり異なることを確認した。つぎにマレーシアのサラワク州のサラワク博物館にて、同州出土の物質文化を収蔵品を調査した。特に、土器やガラスビーズの計測調査を行い、西カロリン出土の同種遺物との類似性を観察した。さらにサバ州においては、ファイス島から出土しているフタバガキ科の樹脂の種別鑑定に用いる比較サンプルを採取した。最後にフィリピンでは、フィリピン国立博物館所蔵の発掘遺物全般の確認調査をしたのち、南東のサマール島および南西のパラワン島のフィールド調査を行った。サマール島は16世紀以来カトリックの宣教師によって、ファイス島をはじめとする西カロリン諸島の人々が漂着したことが、たびたび記録に残されている島である。そのため、チャータ-したボ-トで沖合いに出て、漂着民が見たであろう海岸線を確認し、小さな2つの島へ上陸して遺跡の踏調を行った。その結果、一方のセント・ヴィセント島の地表からかなりの量の土器片や陶器片を採集したことにより、遺跡の存在を確認した。現在フィリピン国立博物館に提出するレポートの作成中である。これまでサマール島の考古学調査はほとんど行われてきておらず、ミクロネシアとの先史時代のコンタクトに関して、フィリピンではそれほど関心が払われこなかった。そのため、今回の遺跡の確認は、フィリピン考古学者にとって新しい研究方向を示したものとなり、将来の共同研究へとつながるものとなろう。サマール島およびパラワン島では、さらに熱帯雨林に生育するフタバガキ科の植物の樹脂を採集した(近年フタバガキ科の乱伐がひどく、サンプルの入手は非常に困難であったことを記録しておきたい。フィリピンの農林省は、フタバガキ科の樹脂の採取を禁止する法律を制定して保護をはかっている)。フタバガキ科の樹脂は1991年のファイス島での発掘で出土しており、種レベルの同定を行うためにサンプルが必要であった。フィリピンではこの樹脂は伝統的にカヌー建造に際して接着剤として用いられてきた。ファイスから発掘された樹脂がどのような経路を経て持ち込まれたのかを解明する。重要な手がかりとなろう。 ルビンシュタインは、ヤップに滞在しているファイスの古老およびファイス島居住民にたいして、インタビュー調査を主とする文化人類学的調査を行った。ファイス島居住民の外界認識や埋葬習俗に関する資料の収集と分析は、考古学資料を解釈する上で重要なものとなる。
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