研究課題/領域番号 |
06041098
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
諏訪 春雄 (諏訪 春男) 学習院大学, 文学部, 教授 (60082921)
|
研究分担者 |
依田 千百子 摂南大学, 国際言語文化学部, 教授 (20149149)
葉 漢鰲 学習院大学, 東洋文化研究所, 客員研究員
武内 房司 (竹内 房司) 学習院大学, 文学部, 助教授 (30179618)
曽 紅 学習院大学, 東洋文化研究所, 客員研究員
崔 吉城 広島大学, 総合科学部, 教授 (80236794)
黄 強 学習院大学, 東洋文化研究所, 客員研究員
川村 湊 法政大学, 第一教養学部, 教授 (70224855)
萱沼 紀子 作新学院女子短期大学, 文科, 教授
YEH Hann-AUI Gakushuin University
ZENG Hong Gakushuin University
HUANG Qiang Gakushuin University
CHOI Kil-sung Hiroshima University
KAYANUMA Minato Hosei University
曾 紅 学習院大学, 東洋文化研究所, 客員研究員
|
研究期間 (年度) |
1994 – 1996
|
研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
|
配分額 *注記 |
25,400千円 (直接経費: 25,400千円)
1996年度: 7,900千円 (直接経費: 7,900千円)
1995年度: 8,500千円 (直接経費: 8,500千円)
1994年度: 9,000千円 (直接経費: 9,000千円)
|
キーワード | 祭祀 / 東アジア / 民俗学 / シャーマニズム / シンクレテズム / 宗教 / 比較研究 / 中国 / 農村祭祀 / 民族信仰 / 日中韓ベトナム / ムーダン / 仙婆 / 母道 / 長江文明圏 / 年中行事 / 日常生活 / 日韓中 / 男女シャーマン / 神 / 仏 |
研究概要 |
平成6、7、8年の三年間にわたった調査研究は、つぎのような目的をもっていた。中国本土・台湾・韓国などの東アジアの農村祭祀、ことにシャーマニズム系統の祭りを、中国や韓国の研究者たちとの密接な協力態勢のもとに現地調査を実施し、その成果を日本各地の農山漁村の祭りの研究成果と比較検討し、東アジアにおける共通の信仰圏と信仰形態の存在を確認し、その理由をきわめるとともに、日本民族の信仰のあり方を確認することである。三年間にわたって、日本沖縄の久高島の夏祭り、青森県の地蔵会、九州の盆行事、韓国江陵の端午祭、韓国珍島の死者儀礼、韓国南部の女巫、中国湖南、湖北、広西チワン族、江蘇、浙江、雲南、上海、北京、河北、黒竜、吉林、内蒙古などの各地域のシャーマン、台湾原住民の首狩り儀礼、さらにベトナムの母道などの調査をおこなってきて、われわれは、多くの事実をあきらかにすることができた。その内容をつぎにしめす。 1 祭りを神と人が公に交流する場であると定義すれば、東アジアの祭祀は調査研究のととのった日本の祭祀をモデルとして各地域の特色をとらえることができる。 2 いずれもアニミズムや古代の自然信仰を基層にすえたシャーマニズムの系統に属する。 3 この民俗的なシャーマニズムが道教、仏教、儒教、キリスト教などの文明(体系)宗教と融合して複雑なシンクレティズムを形成している。 4 シャーマニズムは南方系の憑霊中心型、北方系の奪魂中心型に二分されるが、両型は多くの場合に融合している。 5 われわれの調査した範囲内での知見でいえば、男女シャーマンの入巫儀礼、祈願型式、祭壇の配置や飾り、祈願対象としての神仏などに顕著な共通性がみとめられる。 6 祭祀の形態は、つぎの(1)(2)(3)の三種の分類方法を採用することが可能である。 (1)その集団のおかれている優勢な経済の発展段階に注目して、狩猟採集型・雑穀型・稲作型・漁労型・混合型にわける。 (2)主要な祭神に注目して、自然神型、精霊神型、祖先神型、国家神型、混合型にわける。 (3)優勢な文明(体系)宗教に注目して、民俗型・道教型・仏教型・儒教型・キリスト教型・イスラム教型・混合型にわける。 こうした調査結果をふまえて、われわれが確認したことは、東アジアの農山漁村の祭祀の基本構造が、地域を異にしながらも顕著な類似性をもつということである。たとえば、日本の神社神道や東北、沖縄の各地のシャーマニズムは、中国、台湾、韓国などのシャーマニズム系統の宗教とほとんどかさなりあう信仰形態をそなえている。韓国江陵の端午祭の基本構造は、日本の冬の春日若宮の御祭と完全に一致するし、多少の演出面の違いを無視すれば、天竜川ぞいの花祭とも、中国各地の巫師が主宰する民俗祭祀ともみごとな共通点をみせている。さらにそうした信仰の類似性はおそらく東南アジアにもひろがって存在していることが予想される。われわれが、たまたま機会にめぐまれて、平成八年の夏に調査したベトナムの女性シャーマンが主宰する民俗信仰の母道は、中国の儺儀や日本の民間神楽、韓国のムーダン・クッと構造をおなじくしている。 このような研究実績をとおして、中国の黄河と長江に発した二大文明が、左右対称にアジアにひろがっていた共通文化圏の存在を予測し、シャーマニズム系統の信仰もその文化圏のなかに位置づける構想をえがきだしているが、その完成には東南アジアの調査を必要とするものとかんがえている。
|