研究分担者 |
LAMOTE Argme メキシコ自治大学, 理学部, 教授
PINTO Mario サンカルロス大学, 医学部, 教授
畑 英一 千葉大学, 医学部, 助手 (00110304)
小林 仁 千葉大学, 医学部, 助手 (80009654)
頓宮 廉正 岡山大学, 医療技術短期大学部, 教授 (80032895)
VELASKEZ Edm グアテマラ公衆衛生省, マラリア部, 部長
織戸 康秀 杏林大学, 医学部, 講師 (50185683)
横川 宗雄 千葉大学, 名誉教授 (60009066)
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研究概要 |
1.住民検診成績: グアテマラのサンタロ-ザ州のパーセラミエント46,プランデロスアマテス,ロスセリトスの3地区でメキシコ肺吸虫抗原による皮内反応を行った結果,412名中10名(2.4%)が陽性せあった.これら皮内反応陽性者について血清反応を行った成績はELISAで6名,ラテックス凝集反応で6名,寒天二重拡散法(オクタロニ-法)で2名が陽性であった.この2例はパーセラミエント46の住民で,何れの血清反応も強陽性を示した.糞便検査は401例についてセロファン厚層塗抹法とホルマリン・エーテル法を行った.その結果,蛔虫が28%,鞭虫が53%,鉤虫が43%と高率で,その他糞線虫が6%,小形条虫が4%,テニア条虫が0.5%検出されたが,血清反応強陽性を示した2例を含め,肺吸虫卵の陽性者は1名も見いだされなかった.一方腸内原虫の嚢子は赤痢アメーバが6%,大腸アメーバが33%,ヨードアメーバが9%,ランブル鞭毛虫が6%で検出された. 2.グアテマラにおける肺吸虫第二中間宿主の調査成績: 現地の河川で採集した淡水産カニ Pseudothelphusa spp.の内臓と筋肉を検査したところ,肺吸虫メタセルカリアの寄生率はクイラパで56.7%,エスキントラで2.9%,ロスセリトスは0%であった.カニ1匹当りのメタセルカリアの寄生数は最低2匹,細孔60匹で平均12.5匹であった.カニにおける寄生部位は肝膵臓が最も多く、陽性カニのすべての肝膵臓からメタセルカリアが検出されてた.同時に行った淡水産貝からセルカリアは検出されなかった.なお同地区における住民検診では皮内反応および血清反応の強陽性者が検出されたにも拘らず,今回の検便および検痰では肺吸虫卵陽性者は1名も見いだされなかった.しかし上記のごとくカニからメタセルカリアが多数検出されていること,および問診でカニの生食経験者が多数いることから,肺吸虫感染者は存在するものと思われ,さらに長期にわたり検便を行えば肺吸虫の虫卵陽性者は検出されるものと推察される. 3.グアテマラ産肺吸虫の形態学的所見: 今回のグアテマラの調査で得られた肺吸虫メタセルカリアは被嚢しておらず,活発に運動していた.10%温ホルマリン固定の計測で体長は平均1,156μm,口吸盤は122×122μmで23μmの1本の穿刺棘を有している。腹吸盤は192×189μmで口吸盤よりは大きい.腸管は太く,大きく蛇行している.排泄嚢は黒色を呈し,腸管の分岐点にまで達している.炎細胞は2[3+3+3+3+3)+(3+3+3+3+3)]=60であった.体表には全体に単棘の小棘が密生している.走査電子顕微鏡で観察すると腹吸盤上の inner papillae は6個で, outer papillae の数は20-30個であった.これら papillae の形態は明瞭であり,ヴェネズエラ産の肺吸虫のそれとは異なっていた.これらのメタセルカリアを猫に感染させて得られた成虫は10%温ホルマリン固定の計測で体長は平均8.9mm,体幅は4.2mmであり,口吸盤は512×640μm,腹吸盤は664×704μmの大きさであった.卵巣は複雑に分岐しており,これらの特徴はメキシコ肺吸虫の所見と一致していた.尚これらの成虫から得られた虫卵は71×42μm大で,卵殻は薄い.結論的にグアテマラ産の肺吸虫はメキシコ肺吸虫と同一種であると考えられる.
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