研究分担者 |
SOMSRI Aruni タイ国土地開発局, 塩性土壌部, 研究官
安富 六郎 山崎農業研究所, 研究員 (10011892)
成岡 市 東京農業大学, 農学部, 講師 (70211448)
佐々木 寧 埼玉大学, 工学部, 教授 (90162388)
原 道宏 岩手大学, 農学部, 助教授 (80003763)
足立 忠司 岡山大学, 環境理工学部, 教授 (20012007)
長野 敏英 東京農業大学, 農学部, 教授 (10012006)
石原 邦 東京農工大学, 農学部, 教授 (70014925)
中村 武久 東京農業大学, 農学部, 教授 (60078136)
藍 房和 東京農業大学, 農学部, 教授 (20014920)
ARUNIN Somsri Land Development Department, Thailand
筒木 潔 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教授 (80180024)
後藤 逸男 東京農業大学, 農学部, 助教授 (60130308)
沖 陽子 岡山大学, 農学部, 助教授 (30127550)
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研究概要 |
本研究は、ボルダー・システム(輪中形式)を取り入れて、持続的生物生産方式の可能性を検討したものであり、耐早性・耐塩性植物の導入、換金作物の栽培、土壌・水環境の改善、表土の安定化(土壌侵食防止)、小動物飼育、養魚等を組み合わせた複合的生物生産方式を計画し、持続的農業の展開を目的とした。 作業者手順に(1)ボルダーの造成(承水路、配水路掘削)、(2)気球による試験地の継続的空中写真撮影、(3)植生群落の人為的設定と遷移の追跡、(4)有用植物・作物栽培、(5)地表水動態・地下汽水動態・水質変化の追跡、(6)潅漑水確保(地下水・ため池利用)、(7)堤内塩類集積制御機構の検討、(8)土壌理化学性・土壌有機物・肥沃性の検討など総合的作業が組まれた。対象とする塩害地は植生が乏しいため降雨による表面流出が大きく、土性が砂質土壌であるため土壌侵食が激しく、局所的な洪水がしばしば起こった。また、地下汽水位が常に高く(通年80cm前後)、汽水の毛管上昇が起こる。乾期はほとんど降雨がなく、潅漑水不足に悩まされている。わずかな地表水は塩分濃度が高く(乾期NaCl濃度2〜3%)、潅漑水として不適である。 試験地は東北タイのコンケン市から西南約25km(N16°17′47″,E102°39′08″)に位置する。堤内BM標高は177.948mである。周辺の土地利用は、耕地率81%、耕地に占める水田の割合86%の水田農業中心であるが、気象変動は大きく収穫量は常に不安定である。また地形的に洪水常襲地であり、強度塩害地として指定されている。'56年〜'85年の気象データによると、平均年間降雨量1.177mmの約90%が雨期にスコールとして降り、平均年間蒸発量2,020mm、平均最高気温は雨期・乾期の較差は少なく30〜35℃、平均最低気温は雨期22〜25℃、乾期16℃であり、本地域は熱帯サバンナ気候帯に属する。ホルダー堤体は、卵型の堤体を重機を用いて3基造成した。卵型は洪水流による堤体崩壊を緩和させるために採択した。地形に合わせて東側へ傾斜させ、排水口(角落し)を東側最下部に設置した。水門で雨期に締切り、乾期に開ける。3基の面積は、各々1600m^2(ポルダーNo.1)、1120m^2(No.2)、3200m^2(No.3)であり、承水路容積は1500m^2(No.1〜2周囲)、1100m^2(No.3周囲)である。表土の土性はL〜SL(1:1型粘土含む)、地表から2m深までの土壌硬度(山中式)20〜35mm、間隙率30〜55%、飽和透水係数10^<-7>〜10^<-8>cm/sオーダー、乾燥密度1.7〜2.0g/cm^3である。周囲に設置したピエゾメータによる地下水動態調査の結果、ホルダーサイト南方400m(周囲に村有のユ-カリ林)に深さ8m(礫層,通年低EC)の浅井戸を2つ堀り、パイプラインでホルダーサイトまで導水し、雨期後期〜乾期初期の潅漑水確保を計った。地表水のECが低い雨期は承水路に流入した水を潅漑水として使う。畑作には点滴潅漑を計画した。また、ゴムアスファルト被覆した貯水量250m^3のため池と承水路水位を制御するポンプステーションを作った。水位は常時70〜80cmに計画した。ポンプはため池管理にも使った。堤内排水は水門による自然排水とポンプ排水の2方式をとった。リーチングのために堤内湛水を試験したが、乾期は水不足で不可能で、雨期は堤外水位が地表数十cmと高くなり不可能であった。畑作には高畝にするか毛管汽水制御の方式を探索している。堤体には地被植生(Panicum repens)で覆った土壌流亡を抑制した。結果として、受食性の高い現地土壌を土盛りしているので当初降雨ごとの侵食が激しかったが、1年後には現地雑草による法面被覆が安定して堤内への土砂流入は無くなった。外周の承水路は、(1)地下水位制御、(2)雨期の潅漑水確保、(3)養魚池、(4)洪水流の減勢による堤体保護、(5)堤外からの動物侵入のバリアー、(6)堤内気象の緩和などの役割を果たしている。堤頂部には綿、アカシア、ユ-カリなどを植え、堤体の安定と同時に成長も順調であった。 本研究は初年度にハードウエアの設定を完了し、2年目に詳細の調査研究を継続し、データ集積と分析を進め、段階的に各研究分野から調査・研究の結果を公表する予定である。なお、とくに耐塩性作物の導入、地域植生の導入、畑作方式の検討などについては、時間を要する研究課題であり、本研究期間では公表できる結果が整理できず、継続研究として今後の行動を計画している。
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