研究分担者 |
KNAVE B. National Inst. of Occup. Health, Sweden, 教授
野呂 影勇 早稲田大学, 人間科学部, 教授 (70122851)
菅野 重樹 早稲田大学, 理工学部, 助教授 (00187634)
菅野 重樹 早稲田大学, 理工学部, 助教授 (50196698)
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研究概要 |
本年度はヨーロッパから人間中心生産システムに関係の深い3名の研究者を招へいして調査を行った.その成果は下記のとおりである. 1.Prof. Dr. B. Knave, Department of Neuromedicine National Institute of Occupational Health : Knave教授はヨーロッパのコンピュータ作業における健康問題の第一人者である.ヨーロッパにおけるこの分野の研究は進んでおり,人間中心生産システムの調査研究に大変有益であった.まずコンピュータ作業における健康問題としては目に関するもの,筋,骨格に関するもの,ストレス,皮膚に関するもの,電気に対するハイパーセンシティビテイなど多岐にわたる.これらに対する対策として興味あるのは,物理的な環境や装置の改善だけでは根本的な解決にならないということであった.コンピュータリゼーションは上記以外に仕事が単調で退屈になり,しかも低賃金になるという問題も含んでおり,これらの根本的な解決策としてはグループ作業を含めた精神的な満足が大切であることが判明した.これは正に人間中心生産システムを早急に実現しなければならないことを意味しており,本システムがヨーロッパで重要視されている一つの背景が明らかとなった. 2.Dr. Dietrich Brandt, University of Techonolgy, Aachenは人間中心的なシステムの制御の研究ではヨーロッパの第一人者である.今回は人間中心工作機械のためのヒューマン・マシン・インターフェースの設計法に関する,ヨーロッパの最先端の研究を知ることが出来た.しかも,これは工作機械だけだなくあらゆるシステムに適応できるものである.またその設計基準はわれわれが従来研究開発してきた人間中心生産システムのコンセプトと大変似ていることに驚かされた. その設計方法論は以下の通りである.ますタスク-人工物サイクルに従った分析と設計サイクルが提案される.この分析と設計プロセスに別に提案している人間の物理的メンタルモデルを適用して,最適なインターフェースの設計が行われる.この一つの応用例は作業場指向型プログラミング(Workshop-Oriented Programming WOP)用システムである.これは上記の手法を適用するとグラフィカル・インタラクティブなシ
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ステムが良いと結論された.この手法を用いてドイツのKeller社はCNC工作機械用ヒューマン・マシン・インターフェースを開発した.このプロトタイプは次の3つの操作モードを持つ. (1)直接マニュアル制御モード:ユーザは仮想工具を電子ダイアルを使ってコンピュータ・シミュレーション上で動かす.この切削はシステムによって記録され,プログラムが変更される. (2)ダイヤルによる位置決めモード:CRT上で工具刃先につながれたゴムバンドを引っ張りある位置に置くと,そこまでの工具経路が自動的に生成される. (3)幾何学的に複雑な要素のモード:グラフィック・インタラクティブな方法で描かれる. このシステムをユーザにより評価してもらったところ,分かりやすい作業方法が高く評価された.この設計手法は人間中心生産システムの構築に大変有効である. 3.Dr. Ernst Andreas Hartmann, John Deere Werke Mannheimは University of Technology Aachenからこの企業に移ったがヨーロッパにおける人間中心生産システムの実際的な研究の中心的な人物である.彼は現在所属するジョン・ディール・マンハイムのトラクター工場において実施された人間中心的な新トラクター組立工場の設計について報告された.これはヨーロッパにおける人間中心的な工場建設の最新の情報であった. 手順はまず導入チームと現在の組立工場に置ける作業をグループワークに変えるためのチームの二つが協力して計画設計した.最初にブレーン・ストーミング・セッションで現状を分析,アイデアを分類し,一連の機能的要求項目とその重み付けを行った評価基準表を作成した.この基準表は大変貴重なもので,我が国の人間中心生産システムの構築には必要なものと考える.つぎに,導入チームは組立工場の9つのシナリオを提案した.このシナリオを前述の評価基準表を用いて評価して,そのうちの最良のシナリオを1つ選定した.最後にこの最終案について詳細な計画を立案し経済性の検討が行われた.これを基に実際の建設が現在行われているところである. 以上の3名の招待講師の報告によりヨーロッパにおける人間中心生産システムの最前線が明確に掌握できた.またシンポジウムを開催し多くの参加者に貴重な情報を提供できたことは本研究費が有効に使用できたことを証明している. シンポジウムの翌日は早稲田大学のこの分野の研究者全員(7名)とヨーロッパからの研究者と合同でディープ・ディスカッションを行いさらに理解を深めることができた. 隠す
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