研究分担者 |
PLAMONO M. インドネシア航空宇宙研究所, 所長
WARDHANI Ir. インドネシア電力公社, 研究所, 所長
SUNOTO M.E. ダルマペルサダ大学, 研究部, 部長
SIRAIT K.T. インドネシア, クリスチャン大学・バンドン工科大学・工学部, 学長教授
角 紳一 中部大学工学部, 電気工学科, 講師 (00102773)
依田 正之 愛知工業大学工学部, 電気工学科, 助教授 (80103240)
河崎 善一郎 大阪大学工学部, 電気工学科, 助教授 (60126852)
中村 光一 名古屋工業大学, 工学部・電気情報工学科, 助教授 (10024283)
仲野 みのる 豊田工業高等専門学校, 情報工学科, 教授 (50023685)
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研究概要 |
1.研究の目的 本研究は1989年以来インドネシアで行われている国際学術研究の継続発展を目指すもので,わが国ですでに1977年以来130回の誘雷成功の実績があり,インドネシアでも1992年までに14回の成功を収めているロケット誘雷技術を駆使して,雷の多発地帯として知られるジャワ島・ボゴール地区にて,熱帯地域の雷放電特性を調査研究することを目的とする。更に,インドネシアとの共同研究を通じて,観測技術・データ解析手法等の交流・移転を行うことにより,インドネシアにおける電力設備・通信設備への雷害防止技術研究の発展に寄与することも本研究の目的である。 2.研究方法 ロケット誘雷の実験地は,ジャカルタの南50kmのプンチャ峠近くにある国営のグヌンマス茶園で,こゝにロケット発射台と制御観測小屋を設置した。ロケット発射台は,制御観測小屋から61m離れた丘の頂上に6基があり、小屋の内からひもを引っ張ってロケットに点火し、ほゞ真上に発射される。ロケットは接地された0.2mmの太さのスチールワイヤを高度500mほどに引き上げる。雷雲が接近し,地上電界が5KV/mほどになったときロケットを発射すると,上昇途中のロケットから上向きに先駆放電が進展して,その直後に放電電流がワイヤに沿って地上に流れる。この電流をロゴスキーコイルで検出し,メモリに記録すると共にオシロスコープで測定し,磁鋼片により電流波高値を記録する。また,静止カメラ,流しカメラ,VTRなどで放電の状況を撮影する。更に,発射台まわりに配置した静電アンテナにより,落雷時に周囲に誘起される電界を測定すると共に,発射台の横の試験用配電線の誘導電圧も観測する。 3.本年度の研究成果 本年度は,1994年3月21日から4月16日までと,1994年12月23日から1995年1月31日までの2回に分けて実験を実施した。誘雷の成功は,1994年4月15日の1回と,1995年1月9日の3回の計4回である。いずれも負極性雷雲に対し、負極性放電電流が流れた。 次に個々の実験結果をみると,1994年4月15日は,134mの高さにロケットが上昇した瞬間に放電が誘発された後,発射台から約6m離れて12mの高さの避雷針にも3回放電している。この放電電流の記録によると,波頭長/半波尾長は10/50μsで,波頭長はややゆるやかであるが,典型的な雷電流波形である。その電流波高値(第1波)は4KAであるが,磁鋼片による後続放電の最大値は13.5KAを示した。 1995年1月9日のNo.1とNo.3は,いずれも電界の弱い時に発射されて,No.1は誘雷に失敗し,No.3の放電も微弱である。No.4と5は電界が強まっており,特にNo.5の電界は10KV/mを超えており,電流も強大であった。雷雲はすべて負極性で,約1時間半ほどで実験地を通過し,その間に数分間隔で落雷による電界の急変があり,典型的な日本の夏の熱雷と同様である。 4.これまでの研究成果のまとめ 1990年以来の15回の実験結果をまとめると,実験はすべて14時以降から夜半にかけてであり,雷雲の極性は1回を除きすべて負極性で,わが国の夏季雷と同様である。電流は1.5KA以下が半数に達し、これは強制的な人工誘雷に特徴的な放電である。残りの平均は9.8KA,最大は15KAである。これらの値は,わが国の夏季雷よりやや微弱であるが,電流波形は立ち上がり1〜10μs,半波尾長約50μsの標準的雷電流波形であることからみても,本質的にわが国の夏季雷と類似しているものとみられる。 15回の内3回は,第1放電がロケットの引っ張るワイヤに沿って大地へ流れた後,0.5秒ほどおいた第2放電以後は,近くに立つ避雷針の先へと飛び移る現象がみられた。最初の放電は明らかに,12mの高さの避雷針の先端から下に向けて90°の傘形の保護範囲の内にあり、第2放電以後はこの避雷針に保護されたものと考えられる。避雷針の保護効果が再確認されたといえる貴重な記録である。
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