研究課題/領域番号 |
06041130
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | (財)日本蛇族学術研究所 |
研究代表者 |
森口 一 日本蛇族学術研究所, 生態学研究室, 研究員 (40142020)
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研究分担者 |
黄 満いん 広西医科大学, 生物学教室, 教授
王 乃平 広西医科大学, 副学長
竹中 践 北海道東海大学, 教育開発研究センター, 教授 (00206997)
川村 善治 日本蛇族学術研究所, 所長 (30109855)
鳥羽 通久 日本蛇族学術研究所, 分類学研究室, 主任研究員 (40109856)
WANG Nai-ping Vice-president, Guangxi Medical University
HUANG Man-Ying Professor, Guangxi Medical University
黄 満盈 広西医科大学, 生物学教室, 副教授
王 万平 広西医科大学, 副学長
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 6,500千円)
1995年度: 3,200千円 (直接経費: 3,200千円)
1994年度: 3,300千円 (直接経費: 3,300千円)
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キーワード | 中国 / 毒蛇類 / 分布 / 生態 |
研究概要 |
平成6年度は、9月から10月にかけて採集調査を行ったが、成績はあまり良くなかったので、7年度は6月から7月にかけて調査を行った。一部で出水のため通れないところがあったが、前年よりも採集状況は良好だった。しかし、中国では食用としてのヘビの利用が盛んなためか、小型のヘビを除くと、人里に近いところではあまり見かけない。 主な調査地は、北部では資源県、東部は玉林市、南部は龍州県から防城港市にかけてで、北部では特にマムシの調査を行った。単に採集を行うばかりでなく、地元の住民への聞き込みも行ったが、マムシを知っている人はほとんどおらず、その存在はかなり疑問である。ただ、この地域は湖南省など北の方に普通に分布する、キタカナヘビやトノサマガエルなどがよく見られるなど、明らかに広西壮族自治区では唯一北の系統の動物が入り込んでいるところなので、一概に否定はできない。また、このような調査はもっと時間をかけて行うべきだと考え、資源県の衛生局に、マムシの写真と標本固定用のホルマリンを預けてきて、今後マムシらしいヘビが見つかったら固定保存しておいてもらい、将来機会を見て再訪することにした。マムシが見つかるとしたら、やはり資源県とその付近で、もっと南の平楽県の咬症記録は、誤認と思われる。この地域でよく見られたヘビは、タイワンハブ、アカマダラ、シロハラミスヘビ、サビイロヒバカリ、キスジヒバアでアオハブも目撃された。このうちアカマダラとサビイロヒバカリは北の系統のヘビで、特に後者は広西の他の地域では見られない。 マムシと並んで、主な調査対象は、アオハブ2種の分布状況だった。従来はタイワンアオハブは広西全域に分布し、シロクチアオハブは南半分に分布するとされてきた。しかし今回、採集では確認できなかったが、標本の調査で、シロクチアオハブは広西の北を越えて、貴州省まで分布することが確認された。ただ、これまでの記録から考え、北部では数は多くないだろうと考えられる。一方南部では、3個体のアオハブが採集できたが、いずれもシロクチアオハブで、人里に近いところは主に本種が分布し、山地ではタイワンアオハブが多いと考えられた。しかし、採集数はやはり少ないし、実際に咬症とどう関わっているのか確認するためには、2種をきちんと分けた咬症の記録が必要なので、防城港市の衛生局に協力してもらって、今後アオハブ咬症においては、咬んだ蛇を殺して標本として保存し、病院での咬症記録と対照できるようにしてもらうことになった。これも将来機会を見て再訪し、調査させてもらう予定である。アオハブは咬症数が多く、軽い場合が大多数ではあるが、まれに致死例が記録されており、抗血清が作られていないので、きちんとした対応策を考える必要がある。 北海市のウミヘビ咬症にも現在抗血清はなく、日本蛇族学術研究所がウサギを免役して試作した抗血清が使用されているが、毒を集めるのが大きな問題だった。北海市では料理に使ったウミヘビの頭部が大量に捨てられているので、これを集めて外側から毒腺を圧迫し、直接毒牙から採毒した毒を、1、2度遠心器にかけてきれいにしたものをテストしたら、十分免疫に使えることが分かった。将来地元で血清を製造する場合、冷凍した頭部を大量に集めることで比較的安価に作ることができよう。なお、北海市で漁民に採集されているウミヘビは、トゲウミヘビが圧倒的に多く、マダラウミヘビがそれに次ぐ。 今回の調査では、採集や目撃されたヘビの数は決して多いとはいえなかったが、それでも多くの新しい分布記録を作った。また、ベトナムに近い龍州県では、弱毒種であるオオガシラヘビ属の明らかに新種であるヘビが見つかった。現在3個体が標本として広西医大に保管されており、追加個体を得るのが困難なので、これらに基づいて新種記載を行う予定である。 繁殖や食性については、咬症と関連して特に新しい事実は見つかっていない。 コブラの毒は東南アジアのものに比べ弱く、死亡率が低い反面、皮下の壊死が起こりやすく、しかも早い段階で起こるので、抗血清が効きにくいことが分かった。
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