研究課題/領域番号 |
06041133
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | (財)国際東アジア研究センター |
研究代表者 |
勝原 健 (財)国際東アジア研究センター, 副所長兼研究部長 (30224471)
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研究分担者 |
兪 和 茨城大学, 人文学部, 助教授 (30250096)
二渡 了 九州大学, 工学部・環境システム工学研究センター, 助手 (60173506)
井村 秀文 九州大学, 工学部・環境システム工学研究センター, 教授 (20203333)
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研究期間 (年度) |
1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,900千円)
1994年度: 3,900千円 (直接経費: 3,900千円)
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キーワード | 中央行政主導型環境対策 / 排煙脱硫 / 排煙脱硝 / 石炭燃焼 / エネルギー効率 / クリーン技術 / 排汚費(環境汚染費) / 「三同時の原則」 |
研究概要 |
東アジアの工業化と環境問題:環境との共生を求めて 1 韓国 1980年に環境庁がスタートし、90年に省に格上げされ法令の整備など環境対策に注力してきたため、大気汚染は改善されてきたが、今でもしばしば環境基準を満たさない汚染都市の代表にソウルや蔚山があげられる。その大気汚染物質は、SOx、NOxが主であり、汚染の要因は、(1)ソウルの場合は、人口の集中と自動車の増加、(2)蔚山の場合は、過度の産業の集積である。NOxの大部分は自動車(4割がディーゼル車)から発生することは、日本と同じであるが、SOxについては、その発生源をみると、5割が産業施設、家庭と発電がそれぞれ23%と17%を占めるなど煉炭による家庭暖房(オンドル)の多さが特徴的である。このように情況に対して、韓国は、日本の官民協調型に対比される中央行政主導型環境対策をとりつつある。重油脱硫による低硫黄重油の供給拡大、1993年からの都市を中心とする産業へのLNG使用の義務付け、家庭用オンドルの熱源の転換、環境基準値の見直しや総量規制の導入などがこれである。しかし、日本が1970年代に相次いで導入した製鉄所などへの排煙脱硫や排煙脱硝は、韓国にとっては、これからの課題である。この韓国の環境対策のパターンは、日本型の環境対策(いわば、日本モデル)によく似た動きであり、その意味で、日本モデルが、かなり有用であるといえる。 2 中国 中国の大気汚染の主因は、都市に於ける工場用及び家庭暖房用の石炭燃焼であり、SOxと煤塵が主たる汚染物質である。地域別には、沿海部の北方地区と華東地域及び内陸部の四川省の大気汚染が顕著である。この原因としては、エネルギーの3/4を石炭に依存していること、(2)石炭の硫黄分が高いこと、(3)全般的にエネルギー効率が悪い旧式設備が多いこと、(4)クリーン技術の普及度が低いこと、(5)冬期の暖房用炭の需要が多いことなどが挙げられる。これに対して、中国では、四大基本法などの法制度も整備されており、PPP原則による環境対策を目的とした排汚費(環境汚染費)徴収制度があり、さらに工場新設に当たっては、生産設備と環境対策を同時に設計・施行・稼働させるという「三同時の原則」が実行されている。これらのシステムは、他国にとっても大いに参考になるが、汚染対策の実効は上がっていない。 その原因は、(1)経済成長が急速すぎること、(2)成長のため重化学工業化対策をとらざるをえないこと、(3)省エネルギー技術やクリーン技術(燃料転換、製法転換、汚染物の減量化、リサイクル排煙脱硫等)が遅れていること、(4)やるべき課題があまりに多いことなどである。 日本とくに、北九州の環境対策では、各種の方法による“エネルギー原単位切り下げ"及び“SOx排出原単位切り下げ"(とくにLNGへの転換及び低硫黄石炭・重油の使用及び排煙脱硫装置の設置)の2つがきわめて有効に作用した。これからの中国に必要とされる環境対策を考えてみると、第1に、省エネルギー技術、第2に、クリーン技術といわれる低公害型生産技術(洗炭、低公害化ブリケットの開発、流動床炉による炉内脱硫、燃料の転換、製造プロセス転換、再資源化など生産技術そのものを低公害にした方法)の採用が必要である。とくに、老朽設備のリプレースやリノベーションを考えている企業の場合には、メリットが大きい。しかし、第3にやはり、端末処理といわれる排煙脱硫装置も不可欠である。しかし、これはコスト的に割高なので、企業に任せておけば一般にはなかなかここまでは投資しにくい。したがって、例えば、割安な発電用の簡易脱硫措置を開発し購入し易くするとか、或いは何らかの有効な政策インセンティブ(例:補助金やTax creditなど)を導入し、汚染物質除去装置を導入し易くするなどの政策をとることも必要であろう。
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