研究課題/領域番号 |
06042005
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | がん調査 |
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
渡辺 英伸 新潟大学, 医学部, 教授 (70037381)
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研究分担者 |
ROA Ivan テムコ病院ラ, フロンテラ大学, 部長教授
SERRA Ivan チリ大学, 医学部, 教授
CALVO Alfons ソテロ, デル・リオ病院, 部長
菅沼 雅美 埼玉県立がんセンター研究所, 血清ウイルス, 主任 (20196695)
田島 和雄 愛知県がんセンター, 疫学部, 部長 (30150212)
山本 正治 新潟大学, 医学部, 教授 (40018693)
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研究期間 (年度) |
1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 6,500千円)
1994年度: 6,500千円 (直接経費: 6,500千円)
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キーワード | 胆嚢 / がん / 日本・チリ / p53蛋白 / 癌原物質 / 病理学 / 疫学 / 生化学 / Biochemistry |
研究概要 |
病理学的研究:昨年、チリの胆嚢癌と日本の胆嚢癌は病理学的点で多くの差を示すことを報告した。さらに、p53変異産物の過剰発現頻度も日本人(新潟県人)胆嚢癌で70%、チリ人胆嚢癌で46%(テムコ市)と49%(サンチャゴ市)で、日本人に有意に高いことを報告した。 本年は、ホルマリン固定・パラフィン包理の胆嚢癌を用いて、両国間で胆嚢癌の遺伝子変異に差があるかどうかをPCR-SSCP法で検討することとした。 チリ人胆嚢癌48症例のパラフィンブロックはサンチャゴ市Sotero del Rio病院のProf.Calvoから1994年10月18日に送られてきた。これを、目下、分析中である。 日本人の胆嚢癌については、まずK-ras遺伝子変異の分析を行った。17例(Table)のapc遺伝子変異の分析を中村祐輔教授に行っていただいた。免疫染色によるp53蛋白過剰発現は(Table中の++,+++に相当)はほぼp53遺伝子変異に相当すると考えられている。したがって、昨年度以上の胆嚢各種病変をp53免疫染色で、検討し、p53変異有無を検討した(Table). apc遺伝子変異は粘膜内癌(PT.1a)8例、漿膜下層以上の浸潤癌(PT2)8例にみられなかった。腺腫1例もapc変異を示さなかった。K-ras変異は今回は、(Codon 12のみ検討)、粘膜内癌の10.5%、粘膜下以浸潤癌の9.5%にのみ認められた。しかし、腺腫内癌、腺腫、その他非腫瘍性病変には認められなかった。 疫学・生化学的研究:チリ胆嚢癌発生の危険因子を探るため、1:2の患者-対照研究を行った。患者と性・年齢をマッチさせた対照(胆石がある者とない者)を各々1名ずつ割り当て、1:2のマッチングを行った。対象は90例、コントロールは180例であった。教育年数は対照者で有意に長く、家族内発生が高く、ラ-ドや油脂類(オリーブ油)の摂取は緑色(Odds比2.40)・赤色(Odds比3.17)の唐辛子の摂取が患者で有意に高かった。 まとめ:日本人の各種胆嚢病変について、apc,K-ras,p53異常を分析した本年度の結果から、以下のような興味ある所見が得られた。(1)胆嚢癌発生にapc変異は関与しない。(2)胆嚢癌発生には、2つの経過がある。第1の経過、de novo(ab initio)癌は60-70%がp53変異で発生する。この発生経過ではK-ras変異が10%にみられるが、低率であることから癌発生に大きな意味を持っているとは考えがたい。第2の経過、腺腫由来癌はapcやK-ras変異を欠くばかりでなく、p53蛋白過剰発現もない。腺腫と腺腫由来癌は胃幽門線型形質を示し、大腸の腺腫や腺腫由来癌とは異なる。胆嚢の腺腫由来癌がどのような遺伝子変異によるのかは今後の課題。 チリ人胆嚢癌の遺伝子分析を次に行ない、日本人のものと比較する予定である。これらデータを疫学・生化学分野へ応用して行きたい。
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