研究課題/領域番号 |
06042006
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | がん調査 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大野 良之 名古屋大学, 医学部, 教授 (10160590)
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研究分担者 |
DILLON Drupa インドネシア大学, 医学部栄養学, 栄養士
PRIHARTONO J インドネシア大学, 医学部地域医療学, 講師
RAMLI Muchli インドネシア大学, 医学部中央病院, 腫瘍外科医師
TJAHJADI Gun インドネシア大学, 医学部解剖病理, 乳腺病理主任
CORNAIN Sant インドネシア大学, 医学部免疫研, 主任
渡辺 進 癌研究会付属病院, 外科, 外科医長
坂元 吾偉 癌研究会癌研究所, 病理部, 病理部部長 (80085620)
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研究期間 (年度) |
1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
4,100千円 (直接経費: 4,100千円)
1994年度: 4,100千円 (直接経費: 4,100千円)
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キーワード | インドネシア / 乳がん / 症例対照研究 / リスク要因 |
研究概要 |
本研究の主な目的はインドネシアにおける女性乳がんの発生要因を、分析疫学研究の一手法である症例対照研究を用いて解明することにある。 平成元年度から3年度にかけて、われわれは症例300例と対照600例の直接問診による症例対照研究を実施した。その結果は昨年度に報告したが、牛乳、脂肪の多い肉類、ココナッツミルクを用いた料理など、脂肪に富む食品の頻回摂取が乳がんリスクと関連している傾向があることに注目された。そこで、栄養素レベルでさらに詳細に乳がん発生と食餌要因との関連を検討するため、平成4年度より栄養問診を中心として症例対照研究を新たに開始し、今年度も引き続きデータの収集を実施した。 この研究の症例は、インドネシア大学医学部中央病院の腫瘍外科にて新たに診断され、病理組織学的に確定診断された女性乳がん例である。対照は、症例と同性(女性)・同年齢(±3歳)・同入院/来院時期(±3ヵ月)で、社会階層も対応させた同病院の入院/外来患者である(悪性腫瘍罹患者は除外)対照は症例1例に対し2例を設定した。収集する疫学情報は、社会・人口学的要因、体格要因、月経・生殖関連要因、授乳歴、経口避妊薬使用歴、喫煙・飲酒要因、がん家族歴、胸部外傷歴、放射線被爆歴など、以前の症例対照研究でも検討した項目の他、約70種類の食材料の週あたりの摂取頻度および摂取量(結婚前及び結婚後)を含む。情報収集は栄養士が対象者を直接面接することにより実施し、各食材料の摂取頻度と摂取量から各対象者の一日あたりの各栄養素摂取量を算出する。平成7年1月までに、約150例の症例および約300例の対照について問診が終了した。これまでのところ、結婚前では灰分、リン、鉄の平均摂取量が症例に有意に多く、炭水化物の摂取量は症例の方が対照よりも有意に少なくなっている。結婚後については、レチノールとビタミンCが症例で対照よりも有意に多いという分析結果である。ただし平均摂取量の比較のみでは分析として不十分であり、結論を導くことは不可能であるため、情報収集が終了した時点でオッズ比の算出などさらに詳細な検討を実施する予定である。 本年度は上記の症例対照研究の継続に加え、本課題に関連して平成2年度から3年度にかけて日本で実施した乳がん症例対照研究の最終分析を実施し、さらにインドネシアにおける症例対照研究(平成元年度〜3年度実施分)の結果と一部を比較した。この研究の症例は、癌研究会(研究分担者:坂元・渡辺が所属)付属病院の乳腺外来にて新たに診断され、病理組織学的に確定診断された300例である。対照は、同外来を受診した非がん患者で、症例と同性(女性)・同年齢(可能な限り症例に近い者とした)とし、症例1例に対して3例(計900例)を設定した。収集する疫学情報は、社会・人口学的要因、体格要因、月経・生殖関連要因、授乳歴、喫煙、飲酒要因、がん家族歴、既往歴などである。 その結果、閉経前の乳がんでは規則的な月経がリスク上昇要因であり(オッズ比2.50)、出産回数の多さはリスク低下と関連していること(3回以上の場合の出産経験なしに対するオッズ比0.24)、閉経後の乳がんについては現在喫煙(オッズ比1.63)、高体重(70Kg以上の50Kg未満に対するオッズ比4.82)、高齢初産(30-34歳および35歳以上の24歳以下に対するオッズ比2.85,3.54)がリスク上昇要因であること-が明らかとなった。インドネシアにおける症例対照研究の結果との比較では、(1)高い初婚年齢が閉経前、閉経後ともに乳がんのリスク上昇要因となること、(2)現在喫煙が閉経後乳がんのリスクを高める傾向にあること、(3)高体重が閉経後乳がんと関連する傾向がみられること、などの点で両国での結果の間に共通性が認められた。一方で、(1)初潮年齢は日本では乳がんリスクと関連しないのに対し、インドネシアでは初潮年齢が遅いほど閉経後乳がんのリスクが上昇している、(2)出産回数の多さは日本では主に閉経後乳がんのリスクを低下させるが、インドネシアでは主として閉経後乳がんに対して防御的効果を示す、などが両研究の間の結果の相違として明らかになった。これらの所見は両国の乳がん発生関連要因の共通性および相違を示唆するものとして、興味深い所見と考えられた。
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