研究課題/領域番号 |
06042020
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | がん調査 |
研究機関 | 国立がんセンター |
研究代表者 |
津金 昌一郎 国立がんセンター研究所, 支所臨床疫学研究部, 部長 (40179982)
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研究分担者 |
BRENTANI Ric サンパウロ大学, 医学部, 教授
HAMADA Gerso サンパウロ大学, 公衆衛生学部疫学教室, 助教授
LAURENTI Ruy サンパウロ大学, 公衆衛生学部疫学教室, 教授
若林 敬二 国立がんセンター研究所, 生化学部, 部長 (60158582)
KOWALSKI Lui A. C. Camargo病院, 部長
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
10,900千円 (直接経費: 10,900千円)
1995年度: 5,500千円 (直接経費: 5,500千円)
1994年度: 5,400千円 (直接経費: 5,400千円)
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キーワード | 日系移民 / ブラジル / 発がん要因 / 食生活 / 生体指標 / 断面調査 / 症例対照研究 / 胃癌 / コホート研究 |
研究概要 |
1.断面調査 1989年に実施したサンパウロ在住日系人の無作為抽出標本調査の参加者251名について、1995年の7-8月に食品摂取頻度調査の再調査と3日間食事記録調査を実施し、191名(76%)についてデータを収集した。 調査できなかった60名の内訳は、死亡:14、日本出稼ぎで不在:13、住所不明:29、参加拒否:4であった。現在、3日間食事記録調査の栄養計算を行いつつある。 また、ペル-・リマ在住日系人の無作為抽出標本111名に対して、食品摂取頻度調査、血液の収集を行った。サンパウロ在住者と比較予定である。 大腸癌患者5例について種々の臓器から組織を採取すると同時に、嗜好や食生活について聞き取りを行った。ヘテロサイクリック・アミンのアダクトを検索する。 2.症例対照研究 リオ・デ・ジャネイロで実施した肺癌の症例対象研究について成果を刊行した。 ブラジル・サンパウロにおいて、日系人胃癌患者101例、日系人対照202例、非日系人胃癌248例、非日系人対照248例について、肺癌の症例対照研究と同様に、生活環境要因に関する面接質問調査と血液採取を実施したデータの解析を行った。 採取した血液は、血漿を用いてペプシノーゲンI、IIの測定とヘリコバクター・ピロリ抗体の測定、また、リンパ球よりDNAを抽出して遺伝子多型のマーカーとしてのチトクロームP450 (Cyp) IIE1のタイピングを現在実施中である。 以下に、生活環境要因についての成績を記す。解析は、カイ自乗検定により症例対照間の分布の差異を検定すると同時に、条件付きロジスチック回帰分析によりオッズ比を計算し示した。 症例と対照の性別内訳は、日系人の62%、非日系人の72%が、男性であり、日系人の男性割合がやや低かった。喫煙・飲酒習慣との関連について、日系人では喫煙・飲酒共に症例対照間の分布に差は認められなかったが、非日系人では生涯喫煙指数が50箱*年以上において有意なリスクの上昇(オッズ比:1.8)を認めた。 また、食事要因についての関連を検討したところ、油を用いた揚げ物や炒め物を殆ど毎日摂取することが、日系人と非日系人の双方において有意なリスクとなった。また、日系人では牛肉を殆ど毎日摂取することが胃癌リスクに有意に関連していたが、非日系人ではまったく関連していなかった。胃癌に対して抑制的に働くことが知られている果物・野菜の摂取については、非日系人においてリスクを低下させていたが、日系人においては果物でその傾向があるものの関連は認められなかった。 このように日系人と非日系人では、リスク要因の違いが認められた。牛肉摂取は、日系人において強いリスク要因になっていたが、非日系人では関連は全く示されていない。対照の牛肉摂取頻度を比べると日系人は、非日系人より牛肉摂取の習慣が少なく、非日系人並の頻回摂取がリスクを上げるが、非日系人では既に飽和レベルに達しているとの解釈も出来る。一方、果物・野菜の摂取は、日系人においては対照の摂取レベルが高く、リスクの抑制を検出できなかったが、非日系人の摂取レベルにおいては、果物・野菜の頻回摂取が抑制的に働いていると示唆される。 環境要因の暴露レベルが、胃癌の発症リスクを規定する重要な要因であることが示唆されると共に、遺伝的感受性との相互作用が存在する可能性が示された。
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