研究分担者 |
LEMPRECHT Ge 南アフリカオレンジ自由州立大学, 物理学科, 教授
MCFARLANE Wi 米国ニューカッスル大学, 化学科, 教授
SYKES A.Geof 米国ニューカッスル大学, 化学科, 教授
市村 彰男 大阪市立大学, 理学部, 助教授 (50047396)
永澤 明 埼玉大学, 理学部, 教授 (40108452)
馬越 啓介 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助手 (20213481)
SYKES Alfred Geoffrey The University, Newcastle-upon-Tyne, Prof.
LAMPRECHT Gert J. University of the Orange Free State, Prof.
LAMPRECHT Ge 南アフリカオレンジ自由州立大学, 物理学科, 教授
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研究概要 |
初年度で実際に研究を実施してみて当初の研究計画は対象が広すぎてすべてを取り上げることは不可能であることがわかった.そこで本年度は,イギリス側の共同研究者のSykes教授とも打ち合せ,レニウム錯体に対象を限定して研究を進めることとした.本年度の研究は,1.新しいレニウムクラスター錯体の開発,2.イギリスでの新規錯体を用いた反応速度論的研究の実施,3.速度論的研究成果をふまえて次の目標となる新しいクラスター錯体の開発,4.それらを用いた速度論的研究と研究全体の取りまとめ,の4つに大別される.以下それぞれについて要約する. (1)新規レニウム複核錯体の合成.研究代表者の研究室で実施した.オキソ架橋錯体に重点を置いたが,理由はオキソ架橋錯体が酸化還元に際しての架橋へのプロトン付加の効果が,複核錯体の反応性をみる重要なポイントであると考えたからである.非架橋の配位子として,tris (2-pyridylmethyl) amine (tpa)および類似の四座配位子を選び,オキソで二重に架橋した複核レニウム錯体を数種合成し,酸化数が(III,IV)および(IV,IV)の二つの酸化状態のものの単結晶X線構造解析を行い,酸化数の変化に伴う構造の違いをこの種の錯体としては初めて明かにした.Rc‐Re距離が後者の方がやや短くなるが,これは金属間結合の次数が前者で2.5,後者で3と考えられることと良く対応している.この他,オキソ単一架橋のRe(III)-O-Re(III)型錯体も合成したが,たまたま結晶構造解析でtpaが一方のReには4座配位,他方のReには非配位のピリジル基1ケを含む3座配位のユニークな構造の錯体が見つかった. (2)レニウム錯体の酸化還元反応に対応する速度論的研究.共同研究者の馬越が3ケ月間イギリスのSykes教授の研究室を訪ねて実施した.しかし,研究は副反応の存在により複数となり解析が困難であった.討論の末,類似のオキソ単核錯体の研究がまず必要であるとの考えに達し,主眼をアミン系配位子を含むジオキソRe(V)単核錯体の合成とその酸化還元反応の速度論的研究に移した.その結果,[ReO(OH)(ethylenediamine)_2]^+の構造解析に成功し,かつこの錯体および対応するNH_3錯体の酸化反応の速度論的研究を水溶液系で行い,本来の目的に対する基礎的で重要な情報得ることが出来た.しかし,この研究では,より適切な情報を得るには有機溶媒中での研究が欠かせないのに対し、有機溶媒に対する溶解度が得られなという限界がわかった. (3)速度論的研究を踏まえての新しい錯体の開発.イギリスのSykes教授のグループから,Saysell氏(本国際学術研究によらない費用で来日)が6週間,さらにMcFarlene教授が10日間,研究代表者の研究室を訪ねて実施した.主眼を,イギリスでの研究成果をアセトニトリル溶液系に拡張することにおいた.そして,[Re(O) _2(pyridine) _4]^+(既知)および[Re(O)_4(imidazole)_4]^+(新錯体,本研究で結晶構造解析を行った)のアセトニトリル溶液中での還元反応に対するプロトン付加について,溶液にpk_aの異なる様々の酸を加えるという手法を用い,主に電気化学的方法を駆使して,必要な情報を得ることが出来た.また,これと平行して昨年度から成果のあがっているRu複核錯体,[Ru_2 (μ-O) (μ-CH_3COO)_2 (2,2′-bipyridine)_2 (1-methylimidazole)_2]^<2+>,のプロトン関与酸化還元反応について,さらに詳細な機構をサイクリックボルタモグラムのパターンのsimulationにより解明した. (4)研究の取りまとめと速度論的研究への展望,本研究は,すぐ上で述べたRu錯体での成果をもとに,詳細な速度論の研究はより多彩な酸化還元挙動が期待できるRe錯体で展開するのが適切であるとの判断にたって,Re複核錯体を中心に進めてきた.しかし,Re錯体の酸化還元挙動が逆に複雑で,期待したような成果を得ることが出来なかった.このため一旦より構造の単純な単核錯体から見つめ直すということととなってしまい,2年間では当初の目的を達成することは出来なかった.しかし,この研究の過程で多くの新化合物の合成と構造決定に成功し,構造化学的な面からはRe錯体の化学に大きな寄与が出来た.以上のまとめとこれからの方針については,共同研究者の市村がSykes教授を訪問し,討論した.速度論の研究は現在,上のRu錯体に立ち帰り,共同研究者の永澤を中心として研究を進めており,順調に成果があがりつつある.
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