研究課題/領域番号 |
06044006
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
瀬尾 眞浩 北海道大学, 工学部, 教授 (20002016)
瀬尾 真浩 (1995) 北海道大学, 工学部, 教授
|
研究分担者 |
WARD Michael ミネソタ大学, 材料科学部門, 教授
SMYRL Willia ミネソタ大学, 材料科学部門, 教授
安住 和久 北海道大学, 工学部, 助教授 (60175875)
高橋 英明 北海道大学, 工学部, 教授 (70002201)
野田 和彦 北海道大学, 工学部, 助手 (60241361)
|
研究期間 (年度) |
1994 – 1995
|
研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
|
配分額 *注記 |
5,700千円 (直接経費: 5,700千円)
1995年度: 2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
1994年度: 2,900千円 (直接経費: 2,900千円)
|
キーワード | 薄膜 / 腐食表面 / 局部表面 / 表面微細構造 / 微視的評価 / その場評価 / 大気腐食 / 水溶液腐食 / 薄 膜 |
研究概要 |
昨年度の研究成果をふまえ、薄膜腐食表面の微視的その場評価法として最も有力であると考えられる、水晶微量天秤法(QCM),位相検出干渉レーザ顕微鏡(PDIM),共焦点レーザ走査顕微鏡(CLSM),走査電気化学顕微鏡(SECM)に焦点を絞り、さらに詳しくその有用性について検討を行った。以下に、各手法についての研究成果の概要を述べる。 1.QCM:薄膜材料に潮解性の高い塩が付着すると、大気中の水分が吸収され、薄膜材料表面が水膜層で覆われるため、薄膜の大気腐食が促進される。QCMの共振周波数変化から付着塩の質量と吸収された水の質量との関係を空気中の相対湿度の関数として求めることが可能である。日本側で、QCMの金電極上に、ある臨界質量以上のMgCl_2塩を付着させると、MgCl_2が潮解する臨界相対湿度30%のところで、QCMの共振周波数が急激に増加し、みかけ上質量が減少する現象が見いだされた。アメリカ側のインピーダンス解析装置を用いて、QCM振動モードの周波数解析を行った結果、臨界相対湿度30%のところで付着塩が水分を吸収して固相から液相へ変化する際に、振動エネルギー損失の減少することが判明した。このことは、QCMが薄膜材料の微小質量変化を計測する手法として有力であるばかりではなく、薄膜の相変化を敏感に検出するセンサーとして働きを有することが示唆された。なお、日本側で、電析鉄薄膜の水溶液腐食に関して、溶出鉄イオンの濃縮が共振周波数変化に及ぼす影響を調べるために、QCM振動モードの周波数解析を行ったが、鉄イオンの濃縮と腐食生成物の析出が同時に進行するため解析が複雑であり、まだ明確な結果を得るまでに至っていない。 2.PDIM/CLSM:昨年度に引き続き、SiとAlについて、また、炭素鋼についても、その有用性を検討した。アメリカ側のPDIM装置を用い、HF水溶液中で化学エッチッグにともなうp型Siの表面形態変化を調べた。比抵抗の大きいSiは,ほとんど化学エッチングされずSi表面はもとの平滑さ(表面の平均粗度1.3nm)を保持した。一方、比抵抗の小さいSiは容易に化学エッチングされ、表面形態が不均一になり、10秒間のエッチングで表面の平均粗度が11nmに増加した。このことから、Siの化学エッチングにともなう表面粗度の増加にSiの正孔濃度が大きく寄与することが判明した。Al電解研摩表面には、走査電子顕微鏡では観察されない光反射強度の違いに基ずく微小な斑点が不均一に分布していることが、PDIMにより観察された。微小斑点の実体は明らかではないが、電解研摩面のアノード酸化により形成されるアノード酸化物皮膜中の欠陥と密接な関係にあることが示唆された。また、水溶液腐食にともなう炭素鋼の表面粗度の増加をPDIMにより定量的に評価することが可能になった。さらに、可視光発光をすることで注目されているポーラスSi層の観察にCLSMを用い、ポーラス層の3次元形態を非破壊的に観察することに成功した。CLSMの特長である蛍光像の測定にも成功し、ポーラス層全体から可視光発光が起きていることを確認することができた。 3.SECM:アメリカ側のSECM装置を用いて、Ti表面アノード酸化物(TiO_2)皮膜の欠陥部を評価する試みを行った。Br^-イオンを含む硫酸水溶液中で、TiO_2皮膜で覆われたTiの電位をBr^-イオンが酸化される電位に保持すると、皮膜の欠陥部のみで、Br^-イオンの酸化が起こりBr_2が生成する。プローブ電極(炭素繊維)の電位をBr_2が還元される電位に保持し、プローブ電極をTi表面の真上に走査させながらプローブ電極に流れるカソード電流の分布図を作成することによりTi表面の皮膜欠陥部の位置を評価することが可能になった。しかし、TiO_2皮膜の欠陥部が皮膜の薄い部分であるのか、ドナー密度の高い部分であるのかについての評価は、SECMのみでは困難であり、アメリカ側では、光電流分布を同時に測定できる光電気化学顕微鏡(SPECM)の使用を提案した。さらに、日本側では、アメリカ側の協力を得て、SECM装置の試作を行った。現在、SECM装置の試作をほぼ完了し、鉄表面に形成される不働態皮膜の不均一性をSECMにより評価する試みを行っている。 以上、薄膜腐食表面の微視的その場評価に有力な各種の手法について、その有用性と特長を充分把握することができた。今後、各種手法を組み合わせた総合評価システムの構築をめざして、日米共同研究を続行することになった。
|