研究課題/領域番号 |
06044010
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
西 信三 北海道大学, 医学部, 教授 (20001894)
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研究分担者 |
エリオット アルバート マックギル大学, 医学部, 教授
ムンロ ネヴィル ラドウィッグ癌研究所, 教授
森永 伴法 雪印乳業(株), 生物科学研究所, 主査
島 知子 兵庫医科大学, 助教授 (10172868)
古山 順一 兵庫医科大学, 教授 (30068431)
渡辺 雅彦 北海道大学, 医学部, 助教授 (70210945)
小山 芳一 北海道大学, 医学部, 助手 (90186841)
酒井 正春 北海道大学, 医学部, 助教授 (50162269)
玉置 大器 カルガリー大学, 医学部, 教授
ELLIOT Alpert McGill University, Prof.
中野 芳朗 三菱化成生命科学研究所, 主任研究員
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
8,500千円 (直接経費: 8,500千円)
1995年度: 4,100千円 (直接経費: 4,100千円)
1994年度: 4,400千円 (直接経費: 4,400千円)
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キーワード | ATBF1 / α-フェトプロテイン遺伝子 / 転写因子 / ホメオドメイン / Zn-フィンガー構造 / 選択的スブライシング / 神経細胞分化 / 細胞増殖 / Zn- フィンガー / α-フェトプロテイン / 選択的スプライシング / 神経分化 |
研究概要 |
ATBF1 (AT-Motif Binding Factor 1)はヒトα-フェトプロテイン(AFP)遺伝子の転写制御領域に結合する蛋白質としてその遺伝子がクローン化された.この蛋白質は3000近いアミノ酸からなり、DNA結合ドメインと考えられるホメオドメインを4個、Zn-フィンガー構造を22個も持つ巨大な転写因子である.この遺伝子は発現が神経系の発生段階に特異的であること、選択的スプライシングによって二種類の蛋白質が組織特異的に発現されていることなどが明らかになった.この巨大な分子の中にはDNA結合ドメインのほかにも転写活性化ドメインと思われる酸性ドメイン、プロリンに富む領域、グルタミンに富む領域、ATPaseの構造や蛋白質リン酸化の構造など機能的なドメイン構造と思われる構造が含まれており、それぞれ専門を異にする多くの研究者が共同研究を行うことによって初めて全体の機能、生理的意義が明らかになると考えられる.そこで、本研究はこの蛋白質および、関連蛋白質、それらの遺伝子の構造と機能を生化学、分子生物学、遺伝学などを専門とする研究者の共同研究によって明かにすることを目的とする.2年間、それぞれの研究者間の連絡を密にして国際共同研究を行った結果、以下の研究成果が得られた. 1、マウスのATBF1のクローニング:マウスATBF1はヒトATBF1と95%の相同性を持ち、4つのホメオドインは100%保存されている. 2、2つのアイソフォーム:ATBF1は選択的スプライシングによって生ずる2つの形、ATBF1-A(404kd)、ATBF1-B(306kd)が存在する.ATBF1-Aはエクソン1から転写され、エクソン4につながり、ATBF1-Bはエクソン2から転写される.従ってそれぞれ異なったプロモーターを持ち、後で述べる組織特異的な発現を支配しているものと思われる.エクソン1の5′上流の転写制御領域を持つレポーター遺伝子を使った解析から、エクソン1の上流には神経系に特異的なプロモーター領域が存在し、ここには転写因子AP2が結合する. 3、ATBF1の発現:組織、細胞によって2つのアイソフォームが特異的に発現されている.特にATBF1-Aは胎児期のマウス脳に特異的に大量に発現し出生後減少する.胚性腫瘍細胞,P19を使った実験から神経分化の誘導によって発現することや、in situハイブリダイゼーションによる詳しい解析からATBF1の発現は胎生15日をピークとして中脳下丘、間脳視床に限定されることから、脳幹形成や分化に関与している可能性が示唆される.神経系以外の細胞でも分化の過程で2つのATBF1の発現が変化し、細胞分化、増殖との関係が示唆されるが細胞によってそれぞれの発現パターンは異なる. 4、染色体マッピング:ヒトATBF1は16q22.3-23.1に、マウスは8E1に位置することが明らかとなった. 5、AFP遺伝子の抑制:ATBF1はAFP遺伝子の発現に対し、負に働くことを見いだした.欠失変異をもった遺伝子を使った実験から転写抑制作用はATBF1のN一端からプロリンにとむ領域、および第4ホメオドメインの2カ所に局在することが解った. 6、その他:(1)抗体を用いた実験から、多くの他の転写因子に見られるように2量体で作用する可能性が示唆された.(2)培養細胞から検出されるATBF1は予想される分子量よりやや小さく、プロセッシングを受ける可能性も考えられる.(3)ATBF1を強発現させた細胞が非常に得られにくい、また得られた細胞も継代出来ないことなどから細胞増殖に負に働くことを示唆する結果が得られている.(4)コード領域にしばしば疾患と関係すると考えられているCAA繰り返し配列が存在し、この構造は多形を示す.しかし、現在までのところ疾患との関係は明らかではない. 2年間にのべ12名をカナダの研究室に派遣し、カナダから4度招聘して共同研究を行い、情報の交換を行った.これらの交流によって極めて複雑で多機能を持つと考えられる重要な蛋白質の構造、機能等についての多くの知見が得られた.
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