研究分担者 |
ダリスタ ジェーン ボストン大学, 法学部, 講師
リーブマン ランス コロンビア大学, 法学部, 教授
ブルーム マーシャル ペンシルバニア大学, ウォートンスクール, 教授
立岩 壽一 東京農業大学, 農学部, 助教授 (10192634)
秋山 義則 滋賀大学, 経済学部, 助教授 (70212454)
渋谷 浩 小樽商科大学, 商学部, 助教授 (00250530)
北條 裕雄 (財)日本証券経済研究所, 主任研究員
首藤 恵 中央大学, 経済学部, 教授 (10206568)
渋谷 博史 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (00226193)
井村 進哉 中央大学, 経済学部, 教授 (50176509)
D'ARISTA Jane W Boston University, Lecturer
LIEBMAN Lance Columbia University, Professor
BLUME Marshall E University of Pennsylvania, Professor
AKIYAMA Yoshinori Shiga University, Associate Professor
ダリスタ ジェーン.W. ボストン大学, 法学部, 教授
ブルーム マーシャル・E ペンシルバニア大学, ウォートンスクール, 教授
中浜 隆 小樽商科大学, 商学部, 助教授 (10217812)
リーブーマン ランス コロンビア大学, ロースクール, 教授
ブルーム マーシャル.E ペンシルバニア大学, ウォートルスクール, 教授
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配分額 *注記 |
15,600千円 (直接経費: 15,600千円)
1996年度: 4,900千円 (直接経費: 4,900千円)
1995年度: 5,500千円 (直接経費: 5,500千円)
1994年度: 5,200千円 (直接経費: 5,200千円)
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研究概要 |
1 研究経過 1980年代以降における日米の金融・資本市場の自由化、証券化、および国際化等の変貌過程とそれに対応する金融危機管理、資本形成促進および福祉国家機能を含む財政金融政策、規制政策を多面的に検討した平成6年度の研究成果、および民間・公的両部門による福祉国家活動をより多面的に研究した平成7年度の研究成果に立脚して、本年度は日米の福祉国家システムの比較研究を本格化した。 2 研究成果 上記の研究経過に即して、平成8年8月30日、アメリカ合衆国ワシントンDCで共同研究会と国際コンファレンス「日米における政府の役割の進展-社会福祉、公的信用活動、および金融規制-(Evolving Roles of Government in Japan and the United States : Social Welfare,Public Credit Activities,and Financial Regulations)」を開催した。共同研究会と国際コンファレンスでは、福祉国家の概念を従来の年金、医療等狭義の社会福祉を中心とするシステムから、住宅、コミュニティ開発、農業、金融危機管理システム、国際金融をも含むシステムに拡大し、福祉国家を現代の金融・資本市場の変貌過程全体のなかに位置づけることによって、広義の福祉国家に対する市場メカニズムの作用を多面的、総合的に検討した。本年度の研究成果は、この共同研究会と国際コンファレンスにおける発表論文、討議を土台にして、小樽商科大学経済研究所ディスカッションペ-パ-シリーズを中心に公表されている。また、その後のフォローアップ研究会で得られた研究成果も含め、渋谷博史・井村進哉・中浜隆(編)『日本の福祉国家システム』日本経済評論社、を1997年に刊行する予定である。 3 以上の研究経過、研究成果を通じて得られた知見は以下のように要約できる。 (1)本研究は、福祉国家を年金、医療等の狭義の社会保障の領域にとどめることなく、本来市場メカニズムに全て委ねることが困難であると考えられてきた住宅、コミュニティ開発、農業、その他の社会資本形成領域、さらには預金保険制度等の金融危機管理システムについても、広い意味での公的部門による所得・資源の再分配が認められ、広義の福祉国家システムを構成すること。 (2)低成長、財政赤字が拡大する1980年代以降においては、現行制度(コスト負担者とそれらの負担区分、およびサービス水準)を前提する限り、まず公的部門の特別会計によって経理され、コスト負担者と受益者との関係が比較的明確になる年金、医療の領域では、システム全体の膨張が抑制されるようになり、他方、住宅、コミュニティ開発、農業、金融危機管理システム(預金保険制度)を含む広義の福祉国家の領域では、補助金支出、直接貸付などの政府の直接介入から金融的保証、プログラムの実施主体の中央政府から地方政府、さらには民間非営利機関へのシフト、政府機関の民営化等が進展したが、間接化した公的部門の急激な肥大化、経済・金融環境の悪化を契機とする間接的介入形態の直接的介入形態への逆流と突然で巨額の財政負担の出現がみられ、現時点において財政負担の軽減・民間機関との競合回避圧力と公的部門の役割拡大ニーズとのせめぎ合いが続いているという現状認識が得られた。(3)従って福祉国家を巡る展望を考える上で重要な点は、直接介入から間接的介入(保証あるいは政府機関の民営化)への重点シフトは規制緩和、自由化をともなって進展させるが、これが同時に政府の市場に対する本源的な役割を改めて注目させ、法的秩序の維持の権力、市場ルールの明確化、情報の透明性をいっそう要求することになり、本源的な役割の明確化、責任の所在をも厳しく追求することになり、自己責任のルールと寛大な福祉国家の論理の葛藤が激しくなることになる。
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