研究分担者 |
中谷 功 科学技術庁, 金属材料研究所・機能特性研究部・第3研究室, 室長
DAWSON F.P. University of Toronto Dept. of Electrical, Associate
LAVERS J.D. University of Toronto Dept. of Electrical, Professor
DAWSON Franc 金沢大学, 工学部, 助教授
LAVERS J.Dou Dept. of Electrical Eng. Univ. of Toronto, Professor
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研究概要 |
磁性流体はヒステリシスを持たないため,損失を著しく減少できる他,交流の大電流による励磁磁界においても発熱を少なくできる。一方,磁性流体の磁化特性は広範囲な線形特性を有するため,大電流においても波形歪みおよび過渡応答等,良好な特性を有するものと考えられる。これらの特性はパワデバイスの分野から見ても興味ある特徴といえる。 本研究では磁性流体の上記の特徴を踏まえて,液状である磁性流体の高周波までの磁性流体の交流磁気特性,複素透磁率特性の周波数依存性を明らかにする。さらにこれらの結果を踏まえて磁性流体の磁束制御特性およびインダクタンス制御特性の動作解析および実験両面から特性解明を行った結果を述べる。 以上の結果を基に,高周波パワエレクトロニクスの分野で応用できる磁性流体応用デバイスの開発と効果的利用法について下記のように明らかにした。 1.磁性流体の高周波磁気測定 本研究により水ベース磁性流体,ケロシンベース磁性流体および金属系磁性流体に対する10kHz〜1.8GHzまでの磁性流体の複素透磁率および損失係数の測定法を確立した。この測定法を確立することにより,磁性流体の高周波磁気特性についての現象解明と磁性流体の高周波領域での応用に新たな展開の可能性を見出した。 2.低周波領域での磁性流体の透磁率計測用プローブの作製 磁性流体は液体状で低透磁率であるため10kHz以下において十分な精度で透磁率計測を行うためには種々の問題を有していた。本研究ではC型フェライト磁心を直接磁性流体に挿入することにより高確度で計測可能であることを明らかにした。 3.10kHz〜1.8GHzまでの磁性流体の複素透磁率および損失係数の周波数特性の特性解明 上記の磁性流体の高周波磁気計測手法の確立により,主な磁性流体の複素透磁率および損失係数を明らかにした。これらの結果より,磁気緩和現象による各磁性流体の磁気特性の差異及び磁性粉末との相違を明らかにすると共に高周波領域における応用上重要な基礎特性を明らかにできた。 4.磁性流体の複素誘電率の周波数特性 各磁性流体の複素誘電率の周波数特性および導電率を測定した結果より,高周波帯域での磁性流体のインピーダンスの基礎的現象について明らかにした。さらに各磁性流体の誘電緩和について基礎的現象を明確とした。以上の結果は磁性流体の高周波帯域での応用上重要な知見となると考えられる。 5.磁性流体のインダクタンス制御特性の解明および実測との対応 本研究では永久磁石を用いた直交磁界による磁性流体のインダクタンス制御特性をランジェバン関数を用いて動作解析し,実測結果と一致したことを明らかにした。以上の解析結果より超微粒子の粒子パラメータと磁性流体の磁化特性及び磁束制御特性およびインダクタンス制御特性との関係を明確にした。 6.インダクタンス制御性能の周波数依存性 ランジユバン関数を用いた磁性流体の磁束制御及びインダクタンス制御特性を基にインダクタンス制御性能の解析結果と実測結果を明らかにした。以上の解析手法は磁性流体可変インダクタの設計に寄与できるものと考える。 7.外部励磁型と内部励磁型可変インダクタの性能比較 励磁コイルを磁性流体の外部に設置する外部励磁型可変インダクタと励磁コイルを磁性流体内部に挿入する内部励磁型可変インダクタとを考案試作し,双方の可変インダクタとしての基礎特性およびインダクタンス性能(制御感度,制御効率,制御量)を明らかにした。以上の結果,内部励磁型インダクタが可変インダクタとして優れていることを明らかにした。 8.磁性流体可変インダクタの高周波用dc-acコンバータへの応用 磁性流体可変インダクタはヒステリシスと渦電流損失が小さいため,高周波用dc-acコンバータとしての応用が考えられる。さらに,プラズマ工学分野に用いる共振型コンバータ用の高周波可変インダクタとしての基礎的検討を行った。
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