研究課題/領域番号 |
06044031
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東京大学 (1995) 筑波大学 (1994) |
研究代表者 |
高山 一 東京大学, 物性研究所, 教授 (40091475)
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研究分担者 |
ORBACH R. カリフォルニア大学リバーサイド校, 教授
CLARK W.G. カルフォルニア大学ロスアンジェルス校, 教授
CAMPBELL I. パリ南大学, 教授
OCIO M. サクレー原子核研究所, 凝縮系物理部門, 磁性研究室長
川村 光 京都工芸繊維大学, 工芸学部, 教授 (30153018)
伊藤 厚子 お茶の水女子大学, 理学部, 教授 (20017180)
都 福仁 大阪大学, 理学部, 教授 (10000837)
鈴木 増雄 東京大学, 理学系研究科, 教授 (80013473)
ORBACK R. カルフォルニア大学, リバーサイド校, 教授(学長)
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
10,700千円 (直接経費: 10,700千円)
1995年度: 5,500千円 (直接経費: 5,500千円)
1994年度: 5,200千円 (直接経費: 5,200千円)
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キーワード | コンプレックス系 / 競合系 / スピングラス / セラミック超伝導体 / 重い電子系 / スピン密度波 / エイジング現象 / 準安定状態 / コンプレックスな系 / ウラン族化合物 / Aging現象 / ゲージグラス / 逐次反強磁性転移 / 緩和時間分布 / シミュレーション |
研究概要 |
本研究は、スピングラスを典型例とするような、要素間の相互作用が互いに競合している系(コンプレックス系)に固有な、新しいタイプの相転移とダイナミックスを明らかにすることにあり、ほぼ当初計画に沿って研究活動を展開した。本年度は、高山・鈴木が個別にアメリカグループを訪問し共同研究推進のための研究打ち合せ、討論を行った。また、研究分担者Ocioを招へい、大阪大学で都と共同実験を行うとともに、高山らと研究打ち合せ、討論を行った。さらに、前年度の筑波大学における第1回研究集会に引き続いて、今年度はサクレー原子核研究所(フランス)で第2回研究集会を開催した。同集会には日米仏グループの多数の研究分担者・協力者が参加し、「競合系の物理」に関して活発な研究討論を行った。本研究で得られた主な結果は以下の通りである。 1.スピングラス(SG)の転移とダイナミックス 1)数値シミュレーションによる解析:高山は、SGの常磁性相のうち特にグリフィス相と呼ばれる温度領域におけるスピンダイナミックスが二つの緩和過程、2次相転移に一般的な臨界緩和とSGに固有なクラスター緩和、からなることを示した。一方、Campbellは、イジングSGの転移温度近傍のスピン自己相関関数q(t)を解析し、臨界指数ηが非普遍的である(相互作用の分布の仕方による)こと、q(t)が引き延ばされた指数関数でよく記述される等の結果を得た。また、川村は自ら提起している、ベクトルSGにおける有限温度相転移としてカイラル自由度のランダムな凍結描像を検証する精密な解析を行った。 2)SG相転移の実験による解析:伊藤は、磁化測定で共通にカスプが観測されるSG物質でも、メスバウワ-効果とμSRの実験からSGとクラスターグラスとを区別できることを示した。また、反強磁性状態とSG状態の共存する混合相へのリエントラント転移点で非線形磁化率の発散的振舞いを観測した。 3)磁場中SG相のエイジング現象:Ocioは、定常磁場をある時間t_w待ってからその値を変えた後の状態変化を微小交流磁場に対する応答の虚部を追うことにより、熱残留磁化の緩和過程は、t_w依存性を含めてある普遍的なスケール則で記述されることを見いだした。Orbachは、多数の準安定状態の位相空間における分布の様子を規定する重なり関数P(q)を、磁場中冷却磁化とゼロ磁場冷却後の磁場誘起磁化の時間発展を詳細に解析することにより直接評価する方法を提起した。さらに、伊藤は、磁化-磁場曲線の磁場掃引速度依存性を広い磁場範囲で調べ、SGに固有なダイナミックスを観測した。 2.粒状(セラミック)銅酸化物超伝導体の位相のダイナミックス:Ocioは、La_<1.8>Sr_<0.2>CuO_4の粒状試料に関する1/fノイズの測定から、外部磁場で誘起されるゲージの競合の他に、d波超伝導体間のπ接合の存在から帰結される競合効果があることを示した。川村は、ベクトルSGと同様なカイラリティー転移の描像をセラミック超伝導体の相転移に展開した。 3.重い電子系:都は、Ce(Ru_<0.85>Rh_<0.15>)_2Si_2に関して中性子散乱等の実験から、局在スピン系から重い電子系へのクロスオーバー(近藤温度=22K)、重い電子状態におけるスピン密度波(SDW)状態への相転移(T_N=5.5K)、および、後者の転移に伴うインバー的振舞いをする磁気体積効果を詳しく検証した。 4.SDWのダイナミックス:Clarkは、(TMTSF)_2PF_6にパルス電場をかけ、パルス終端側でSDWが不純物にピン止めされる過程をNMRで観測し、その過程が、高温領域では準粒子がSDWギャップを越える熱活性化過程、低温領域では量子力学的トンネル過程であることを示唆する実験結果を得た。 5.相転移理論:鈴木は、一般の相転移を論ずるための数理物理的方法(指数関数演算子の高次分解法など)を提起、発展させた。これを量子スピン系を中心としたコンプレックス系の協力現象に適用し、多くの成果を得た。 以上のように、本研究は多くの成果が得られ、日仏のグループによる共同実験も共著論文にまとめられている。次年度以降、ほぼ同じ研究者の構成による共同研究「コンプレックス系におけるエイジング現象」で、本研究を発展的に継承していく予定である。
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