研究課題/領域番号 |
06044034
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
五十嵐 一衛 千葉大学, 薬学部, 教授 (60089597)
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研究分担者 |
柏木 敬子 千葉大学, 薬学部, 助手 (80169424)
STEFANIA Bio ボローニア大学, 理学部, 助教授
NELLO Bagni ボローニア大学, 理学部, 教授
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
5,100千円 (直接経費: 5,100千円)
1995年度: 2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
1994年度: 2,700千円 (直接経費: 2,700千円)
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キーワード | ポリアミン / スペルミジン / スペルミン / 蛋白質合成 / 輸送 / 細胞増殖 / 細胞分化 |
研究概要 |
1.大腸菌のスペルミジン優先輸送系は基質結合蛋白質(PotD)、ATP結合部位を有する膜表在性蛋白質(PotA)、及び2種の膜チャンネルを形成する蛋白質(PotB及びPotC)より成り立っている。このうちのPotAとPotD蛋白質を均一に精製し、酵素学的性質を検討すると同時に、site-directed mutagenesisによりアミノ酸置換蛋白質を作製しその性質を検討した。その結果、PotA蛋白質はN末端側にATPaseの活性中心が、C末端側に膜蛋白質と相互作用する部位が存在することが明らかとなった。また、PotD蛋白質中のスペルミジンと相互作用するアミノ酸として、4分子の酸性アミノ酸(E36、D168、E171、D257)、3分子のトリプトファン(W34、W229、W255)、及び3分子のチロシン(Y37、Y85、Y293)を同定した。 2.正常の動物細胞のポリアミン量は厳密に調節されており、ポリアミンが過剰に蓄積することはほとんどない。しかし、筆者らが作製したポリアミン生合成律速酵素であるオルニチン脱炭酸酵素(ODC)過剰産生株では、培地中にポリアミンを添加すると細胞内にポリアミンの過剰蓄積が起こり、細胞増殖が阻害された。ODC量の調節因子としてアンチザイムが報告されているが、アンチザイムはポリアミン輸送系も調節しており、ODCが過剰産生されるとアンチザイムがODCと結合し、ポリアミン輸送系のアンチザイムによる負の調節が解除されるのではないかという作業仮説をたて、アンチザイムcDNAをtransfectしてみたところ、ポリアミンの蓄積が阻害され、細胞増殖の回復が認められた。過剰ポリアミンはタンパク質合成、特にミトコンドリアのタンパク質合成を阻害し、ATPを枯渇させ細胞死を引き起こした。 3.大腸菌におけるポリアミン過剰蓄積の影響を次に検討した。ポリアミンの過剰蓄積は筆者らがクローニングしたポリアミン分解系律速酵素であるアセチルスペルミジントランスフェラーゼ(SAT)の欠損株をスペルミジンを含む培地で培養することにより可能となった。ポリアミンの過剰蓄積は対数期の細胞増殖にはあまり影響を与えなかったが、静止期の細胞死を引き起こした。細胞死は静止期のcell viabilityに関与しているribosomal modulation factor (RMF)の合成量の低下と相関していた。RMFは静止期に入ると合成される蛋白質で70Sリボソームのダイマー形成(100S)を引き起こし、リボソームを休眠状態にすると考えられている。ポリアミンの細胞増殖促進作用は細胞増殖に関与する特定蛋白質合成の翻訳レベルでの促進と相関しているが、過剰ポリアミンはRMF合成を翻訳レベルで阻害した。 4.ポリアミン生合成阻害剤は、がん細胞のポリアミン量を低下させ抗がん効果を示す。しかし、ポリアミン量の低下は細胞死を引き起こさず、投与停止と同時にがん細胞が増殖するrebound効果が認められた。ポリアミンが細胞内に過剰に蓄積すると細胞死が起こることが上述の研究で明らかとなったので、筆者らはポリアミン分解酵素であるスペルミジン/スペルミンN^1-アセチルトランスフェラーゼ(SSAT)の基質とならず、細胞内に蓄積するポリアミン誘導体としてビスエチル体に着目した。ポリアミンの効果はペンタアミン>テトラアミン>トリアミンの順であったので、テトラアミンである1,15-ビスエチルアミノ-4,8,12-トリアザペンタデカン(BE3333)を合成し、抗がん効果を検討した。すなわち、ヒト大腸がん(SW620)または肺がん(Lu65)をヌードマウスに移植し、BE3333を30mg/kg静脈内投与、または50mg/kg腹腔内投与を5日間行ったところ、BE3333の投与期間中は強い抗増殖効果を示した。その後徐々にがん細胞の増殖は回復したが、強いrebound効果は認められなかった。がん細胞の増殖の回復とがん細胞中のBE3333量の低下は相関していた。
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