研究課題/領域番号 |
06044036
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
清野 進 千葉大学, 医学部, 教授 (80236067)
|
研究分担者 |
BLONDEL Oliv フランス国立医科学研究所, 研究員
TOKUYAMA Yos シカゴ大学, 医学部, 研究員
STOFFEL Mark シカゴ大学, 医学部, 助教授
POLONSKY Ken シカゴ大学, 医学部, 教授
五ノ井 透 千葉大学, 真核微生物研究センター, 助手 (30134365)
稲垣 暢也 千葉大学, 医学部, 講師 (30241954)
黒見 坦 群馬大学, 医学部, 助教授 (30009633)
BLONDE Olivier Laboratoire de Cardiologie Cellulaire et Moleculairc Institut National de Scienc
|
研究期間 (年度) |
1994 – 1995
|
研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
|
配分額 *注記 |
14,700千円 (直接経費: 14,700千円)
1995年度: 7,300千円 (直接経費: 7,300千円)
1994年度: 7,400千円 (直接経費: 7,400千円)
|
キーワード | 遺伝子 / イオンチャネル / 糖尿病 / カルシウム / カリウム / スルホニール尿素剤 / インスリン / カルシウムチャネル遺伝子 / インスリン非依存性糖尿病 / イオンチャネルグルタミン酸受容体 |
研究概要 |
(目的) インスリン分泌は種々のイオンチャネルにより制御されている。中でも、電位依存性Ca^<2+>チャネル(VDCC)はβ細胞へのCa^<2+>流入の調節に、ATP感受性K^+チャネル(K_<ATP>チャネル)はβ細胞におけるグルコース代謝による膜電位の調節に重要な役割を演じている。従って、これらのチャネル遺伝子の構造異常や発現異常は、インスリン分泌障害をきたし、糖尿病を発症する可能性がある。そこで我々は、膵β細胞で発現するVDCCとK_<ATP>チャネルの分子的基盤を明らかにすると同時にそれの遺伝子構造を決定し、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)における役割を検討した。 (結果) <VDCC> 膵β細胞における電位依存性Ca^<2+>チャネルのα1サブユニットとβサブユニット(β1〜β3)の全長を単離し、発現系で機能解析を行ったところα1サブユニット単独ではチャネル活性が認められずβサブユニットと同時に発現した時のみ典型的なL型Ca^<2+>チャネル活性が認められ、βサブユニットが機能発現に重要であることが示された。次にα1サブユニット(CACN4)とβ(β3)サブユニットの遺伝子構造を決定した。α1サブユニット遺伝子は全長が約155kpbにおよび49のエクソンから構成されていた。一方、β3サブユニットは約8kbにおよび13のexonから構成されていた。CACN4遺伝子変異を検索したところ、89例のNIDDM患者(178 alleles)中1例(1 allele)にexon1におけるATGのinsertionよるmethionineのinsertionがN端に認められた。さらに別の1例ではexon42のGAAのdeletionによるGluのdeletionがC端領域に認められた。これらの変異は48例の正常者(96 alleles)には認められなかった。絶食状態では膵β細胞で発現する電位依存性Ca^<2+>チャネルα1サブユニット遺伝子の低下が認められた。 <K_<ATP>チャネル> 膵β細胞で発現する新たな内向き整流性K^+チャネル(BIR βcell inward rectificr)をクローニングした。BIRは390個のアミン酸から構成され、他の内向き整流性K^+チャネルと同様2回の膜貫通領域を有していた。組織発現を検討したところ、BIRは膵ランゲルハンス島及びグルコース反応性のインスリン分泌細胞株であるMIN6、HIT細胞で高レベルの発現が認められた。一方、スルホニール尿素剤の受容体であるSURも膵ラ氏島、MIN6、HIT細胞で高レベルの発現が認められた。BIRとSURが膵ラ氏島やβ細胞株で共発現することより、BIRとSURは機能共役する可能性が示唆された。そこで両者をCOS-1細胞に発現させ、機能解析を行った。電流-電圧曲線の解析によりこのチャネルは内向き整流性を示した。単一チャネルの解析を行ったところ、ATP濃度依存性にK^+チャネル活性が抑制された。スルホニール尿素剤であるグリベンクラミドによってチャネル活性は抑制されたが、diazoxideによりこのチャネルは活性化された。これらのK^+チャネルの特性はすべて膵β細胞で認められるATP感受性K^+チャネルの特性をみたすものである。一方、BIR単独あるいはSUR単独の発現ではATP感受性K^+チャネル活性は全く認められなかった。ヒトBIR遺伝子は第11染色体p15.1に位置し、SUR遺伝子と隣接することが証明された。日本人の正常者(74名)とNIDDM(103名)でBIR遺伝子の変異を検索したところ、2種類のBIR遺伝子の存在が確認された。即ちallele AではBIR遺伝子の23番目と337番目のコドンはそれぞれGlu,Ile (Glu^<23>,Ile^<337>)をコードし、allele BではそれぞれLys,Valをコード(Lys^<23>,Val^<337>)していた。 (結論) 膵β細胞で発現する電位依存性Ca^<2+>チャネル(VDCC)の遺伝子構造を決定した。さらに、グルコースによるインスリン分泌の調節の鍵となる因子である膵β細胞のATP感受性K^+チャネル(K_<ATP>チャネル)の分子構造を解明し、その特性を明らかにした。膵β細胞で発現するVDCCとK_<ATP>チャネルの分子的基盤や遺伝子構造を明らかにしたことは、NIDDMの成因の解明や新たな治療薬の開発に向けて極めて有力な情報を与えるものである。
|