研究分担者 |
GABRIELES G. ハーバード大学, 物理, 教授
KIENLE P ミュンヘン工科大学, 物理, 教授
EADES J. 欧州原子核研究機構, 上級研究員
鳥居 寛之 東京大学, 大学院・理学系研究科・日本学術振興会, 特別
山崎 敏光 東京大学, 名誉教授 (80011500)
岩崎 雅彦 東京工業大学, 理学部, 助教授 (60183745)
田村 裕和 東北大学, 理学部, 助教授 (10192642)
石川 隆 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (60176162)
山崎 泰規 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (30114903)
森田 紀夫 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助教授 (30134654)
伊藤 泰男 (伊東 泰男) 東京大学, 原子力研究総合センター, 助教授 (40011150)
KIENLE P. ミュンヘン工科大学, 物理, 教授
GABRIELS G. ハーバード大学, 物理, 教授
EGIDY T.von ミュンヘン工科大学, 物理, 教授
KARTAVTSEV O ボゴリューボフ理論物理研究所, 研究員
菅井 勲 東京大学, 原子核研究所, 助手 (80150291)
応田 治彦 東京大学, 原子核研究所, 助手 (60221818)
GILLITZER A. ミュンヘン工科大, 助手
WIDMANN E. CERN研究所, 研究員
早野 龍五 東大, 理, 助教授 (30126148)
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配分額 *注記 |
30,000千円 (直接経費: 30,000千円)
1996年度: 10,000千円 (直接経費: 10,000千円)
1995年度: 10,000千円 (直接経費: 10,000千円)
1994年度: 10,000千円 (直接経費: 10,000千円)
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研究概要 |
本研究は、1)CERN研究所(スイス)の低速反陽子蓄積リング(LEAR)において、反陽子ヘリウム原子の精密レーザー分光を行うこと、2)GSI研究所(ドイツ)のフラグメントセパレーター(FRS)を用いてパイ中間子原子の深い束縛状態を探索すること、の2つを目的として行われたものである。1)については、反陽子ヘリウム4原子及び反陽子ヘリウム3原子のレーザー共鳴を多数発見し、反陽子ヘリウム原子の構造や崩壊について多くの知見を得ることに成功した。また、2)については、鉛208を標的とした(d,3He)反応を用い、パイ中間子原子の2p及びIs状態の観測に世界で初めて成功した。 (1)平成5年にCERN研究所のLEARにおいて行った実験で、我々は「反陽子ヘリウム原子」と呼ばれる反陽子を含んだ特異な3体原子(反陽子+電子+ヘリウム原子核)のレーザー共鳴(597nm)の観測に成功した。本研究は、更に多くのレーザー共鳴線を探索するとともに分光精度を高め、反陽子ヘリウム原子の構造を解き明かすることを目的として行った。 平成6年度には、二本目の共鳴線(470nm)を発見した。この時点では共鳴波長の実験値と理論予測値との一致は1000ppm程度であったため、共鳴の探索に長時間を要したが、平成7年初頭には理論研究が進み、50ppm程度で両者が一致するようになり、その後の共鳴線の探索を容易になった。すなわち、レーザーを理論予測値に設定して探索を開始すると、初期値の近傍で共鳴が発見できるようになったのである。これにより、平成8年と9年には反陽子ヘリウム4原子の共鳴を次々と発見して、この原子の構造を確定したのに加え、反陽子ヘリウム3原子についても共鳴を発見した。また、レーザーの高分解能化を行った結果、反陽子ヘリウム原子の超微細構造も明らかにされた。 (2)これと平行して、我々は「パイ中間子原子の深い束縛状態」の分光についても準備を進めてきた。ここで言う深い束縛状態とは、パイ中間子原子が鉛などの重い原子核を回るIsや2pなどの軌道に束縛された状態を呼ぶ。これらの状態は、パイ中間子の波動関数と原子核との重なりが大きく、パイ中間子はたちまち原子核に吸収されるため、準安定ではありえず、仮に分光測定を行ったとしてもピークとして観測することは不可能と考えられてきた。通常、パイ中間子原子分光は、パイ中間子を標的中に静止させてパイ中間子の高い励起状態を作り、これが脱励起するときに放出されるX線のエネルギーを測定する手法で行われる。しかし、脱励起が進み、パイ中間子が深い束縛状態に近づくと、X線を放出よりも原子核による吸収のほうが強く起きるため、仮に深い束縛状態が準安定であったとしてもX線は観測されない。そこで、我々はX線分光に代わる全く新しい分光手法として、(n.p)や(d,3He)などの原子核反応によってパイ中間子を深い束縛軌道に直接発生させる手法(パイ中間子移行反応)をGIS研究所に提案し、平成8年春に実験を実施した。 その後、鉛208を標的とした(d.3He)反応において、パイ中間子が鉛原子核を周回する2p軌道に束縛された状態を平成9年にGSIで行った実験で世界で初めて観測した。すなわち、反応のQ値スペクトルの中に、2p状態生成を示す際立ったピークが認められた。観測されたピークの強度、位置、巾などは、理論予測とほぼ一致しているが、詳細は現在解析中である。
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