研究課題/領域番号 |
06044063
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
若林 久嗣 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (00011932)
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研究分担者 |
HOLT Richard オレゴン州立大学, 微生物学科, 助教授
CROSA Jorge オレゴン保健科学大学, 分子生物免疫学科, 教授
FRYER John オレゴン州立大学, 魚病研究センター, 所長
廣野 育夫 (廣野 育生) 東京水産大学, 資源育成学科, 助手 (00270926)
飯田 貴次 宮崎大学, 農学部, 助教授 (70159557)
青木 宙 東京水産大学, 資源育成学科, 教授 (00051805)
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研究期間 (年度) |
1994 – 1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
8,500千円 (直接経費: 8,500千円)
1996年度: 2,700千円 (直接経費: 2,700千円)
1995年度: 2,700千円 (直接経費: 2,700千円)
1994年度: 3,100千円 (直接経費: 3,100千円)
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キーワード | Cytophaga psychrophila / Aeromonas hydrophila / Vibrio anguillarum / Edwardsiella tarda / 魚類病原性 / プロテアーゼ / シデロフォア / 溶血素遺伝子 / 溶血素 / トランスポゾン / 鉄代謝 / Flavobacterium branchiophilum / Aeromonas salmonicida / スーパーオキシドジスムターゼ / Cytophage psychrophila / 線毛 |
研究概要 |
1.Cytopaga psychrophilaの培養上清をSDS-PAGEで分析して、カゼインとゼラチンの両方に活性をもつ114と152kDaのプロテアーゼを検出した。また、ゼラチンにのみ活性を示す32から86kDaのプロテアーゼが相当数あることが分かった。日本とアメリカの魚由来株30株をプロテアーゼによって型分けしたところ4つに類別され、宿主魚種および病原性の間にある程度の関係が認められた。 2.C.psychrophilaの増殖至適温度とプロテアーゼの産生至適温度の関係を調べたところ、供試6菌株の発育至適温度は19.6【+-】0.5℃4であったのに対し、プロテアーゼ産生至適温度は13.6【+-】1.9℃であった。また、至適温度におる各菌株のプロテアーゼ量を比較したところ、菌株によりかなりの差のあることが分かった。 3.Vibrio anguillarumからクローン化した溶血素遺伝子(VAH1)は751アミノ酸をコードしていた。大腸菌内で発現したVAH1が菌体外に分泌されることがわかった。VAH1のアミノ酸配列を既知の溶血素と比較したところVibrio cholerae El Tor溶血素、Vibrio vulnificus溶血素、Aeromonas hydrophila AHH1溶血素、Aeromonas salmonicida ASH4溶血素と相同性を示した。VAH1溶血素遺伝子はV.anguillarumの血清型に関係なく広く存在していた。 4.A.hydrophilaからクローン化した溶血素遺伝子AHH3について溶血活性に必須のアミノ酸を解析するために、PCR法によるランダム変異導入を行った。その結果、8カ所でアミノ酸置換(Gly11-Leu11,Asp170-Asn170,Trp250-Crs250,His291-Gln291,Gly290-Ala290,His355-Arg355,Trp393-Leu393,Asp470-Val470)が起きていて溶血活性が見られないクローンを得ることができた。このクローンが産生するタンパク質は、AHH3抗体と反応したことから、転写翻訳レベルで溶血素が産生されないのではなく、得られたクローンの変異はタンパク質置換により溶血活性がなくなっていることが明らかとなった。8カ所のアミノ酸に対して部位特異的変異導入を行ったところ、His355およびHis291が溶血活性に最も重要であることが明らかとなった。 5.Edwardsiella tradaの鉄キレート剤EDDHAに対する発育阻止濃度をHI培地を使用して測定したところ、病原性株2株は50μg/mlであったのに対し非病原株は1.56μg/mlであり、明らかな差が認められた。また、EDDHA12.5μg/ml添加培地での発育を調べることにより病原性株と非病原性株をある程度選別できることが分かった。 6.E.tardaの非病原性株は鉄キレート剤EDDHA(10μg/ml)含むHI培地では増殖できなかったが、病原性株の同培地培養上清(cross-feeding test)には増殖したことから、病原性株が鉄制限下で非病原性株にはないシデロフォアを産生している可能性が示唆された。トランスポゾンを利用し、病原性株より鉄獲得能の低下した変異株を作出したところ、この変異株のウナギに対する病原性は明らかに低下しており、E.tardaにとって鉄獲得能が重要な病原因子の一つでることが直接的に証明された。 7.E.tardaからクローン化した溶血素遺伝子は溶血素と溶血素の分泌・活性化に関与するタンパク質との2つの遺伝子(ETH1AとETHB)から構成されていた。溶血素をコードする遺伝子ETH1Aは1594アミノ酸をコードしており約165.3kDaタンパク質であり、溶血素の分泌・活性化に関与するタンパク質ETHBは559アミノ酸をコードしており約61.9kDaのタンパク質であった。これらの遺伝子の転写制御についてmRNAレベルで解析したところ、ETHBは細菌が利用できる鉄が存在する場合は殆ど発現せず、鉄が欠乏状態になると転写が活性化されることが明らかとなった。ETHAは常に発現しており、その溶血活性を調べたところ、溶血活性は見られなかった溶血素凝集活性が見られた。これらのことから、E.tardaの溶血素は常に発現しているが、鉄欠乏状態になりETHBが発現してこないと活性化されないと考えられた。このことは、E.tardaの溶血素が鉄欠乏状態になると溶血活性が強くなり、さらに溶血素が菌体外へ分泌されることと一致した。
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