研究課題/領域番号 |
06044071
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
井川 洋二 東京医科歯科大学, 医学系研究科, 教授 (40085618)
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研究分担者 |
ロングモア グレゴリー ワシントン大学, 医学部, 助教授
山村 康子 東京医科歯科大学, 医学系研究所, 助手 (50146809)
LONGMORE Gregory D. Washington University School of Medicine
グレゴリー ロングモア ワシントン大学, 医学部, 助教授
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
7,200千円 (直接経費: 7,200千円)
1995年度: 3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
1994年度: 3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
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キーワード | エリスロポエチン / 赤芽球前駆細胞 / 赤白血病 / JAKキナーゼ / STAT転写因子 / シグナル伝達 / エリスロポエチン受容体 / サイトカインレセプター |
研究概要 |
赤芽球系細胞で活性化されるJAKキナーゼの解析 エリスロポエチン(EPO)受容体を発現させた骨髄細胞系およびB前駆細胞系由来のトランスフェクタントを用いた実験より、EPO受容体を介するEPO増殖シグナル伝達において、JAKキナーゼファミリーメンバー(JAK1、JAK2、JAK3、Tyk2)の一つ、JAK2が活性化されることが明らかにされている。しかしながら、赤芽球系細胞で発現する内在性EPO受容体の下流でJAK2が本来機能するかは不明である。そこで、フレンド赤白血病ウイルスを感染させたDBA/2マウスの脾腫より赤芽球前駆細胞を採取し、ウエスタンブロッティング法を用いてJAKキナーゼファミリーのチロシンリン酸化を解析した。赤芽球前駆細胞では、EPO受容体とJAK1が会合し、EPO刺激がなくてもJAK1が構成的にチロシンリン酸化を受け活性化されていることを見出した。 また、既存の赤白血病細胞株、T3Cl-2-O細胞を用いて同様の実験の行い、JAK1およびJAK2がEPO受容体と会合し、両JAKとも構成的にチロシンリン酸化を受け活性化されていることを明らかにした。 2.T細胞由来のトランスフェクタントで活性化されるJAKキナーゼ 我々は先に、EPO依存性に増殖するT細胞由来の細胞株(C/ERas4)を樹立している。同細胞株を用いて、EPO受容体下流で活性化されるJAKキナーゼを検索したところ、JAK3がEPO受容体と会合し、EPO刺激に伴いチロシンリン酸化を受けることを見出した。JAK3は、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、およびIL-15の5つのサイトカインの受容体間で機能的サブユニットとして共有されるIL-2受容体y鎖(yc)と会合することが知られており、サイトカイン刺激に伴いチロシンリン酸化を受ける。上記C/ERas4細胞はIL-2依存性T細胞株CTLL-2由来で、IL-2依存性を保持している。IL-2刺激に伴うJAKのチロシンリン酸化を検索したところ、CTLL-2細胞を用いて最近明らかにされたように、JAK1、およびJAK3がチロシンリン酸化を受けていた。さらに、IL-2で細胞を刺激した場合には、EPO受容体と会合するJAK3もチロシンリン酸化を受けていた。EPO、およびIL-2に依存性を示すC/ERas4細胞においては、EPO受容体とIL-2受容体間でJAKキナーゼのチロシンリン酸化レベルでのクロストークがあるものと考えられる。 3.EPO増殖シグナル伝達におけるSTAT5転写因子の活性化 現時点では、STATファミリーに属するSTAT1からSTAT6までの6つのSTAT転写因子が見出されており、各々のサイトカイン増殖シグナル伝達において特異的なSTATが活性化されることが知られている。EPO増殖シグナル伝達においては、EPO受容体を発現させたトランスフェクタントを用いた実験より、JAK2の下流でSTAT5が活用化されることが報告されている。我々は、マウス脾腫より採取した赤芽球前駆細胞、および赤白血病細胞株T3Cl-2-O細胞において活性化されるSTATをウエスタンブロッティング解析により検索した。STAT1からSTAT5までの5つのSTATを解析し、STAT5のみが構成的にチロシンリン酸化を受け活性化されていることを明らかにした。さらに、上述EPO依存性T細胞トランスフェクタントでもEPO刺激に伴いSTAT5のみがチロシンリン酸化を受けることを見出した。これらの結果より、EPO増殖シグナル伝達へのSTAT5の特異的な関与が示唆された。 4.赤芽球系分化におけるEPO受容体の役割 5-フルオロウラシルを静注したBALB/cマウスの脾臓より多能性blast細胞を採取し、EPOの結合なしに恒常的に発生化されている変異EPO受容体、EPOR (R129C)をレトロウイルスベクターを用いて導入、発現させた。IL-3、Stem Cell Factor、およびEPO存在下でメチルセルロース培養を行い、形成されるコロニーを解析した。EPOR (R129C)を発現するblast細胞からは、EPO非存在下でも赤芽球系コロニーが分化した。しかし一方、EPOR (R129C)の発現により多能性blast細胞から赤芽球系コロニーが分化する頻度に影響は見られなかった。従って、EPO受容体を介して細胞へ伝達されるEPOシグナルは、赤芽球前駆細胞から赤芽球への形成には関与するが、多能性blast細胞から赤芽球系への分化には関与しない可能性が示唆された。
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