研究課題/領域番号 |
06044072
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
土田 信夫 東京医科歯科大学, 歯学部, 教授 (60089951)
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研究分担者 |
斉藤 祐一 東京医科歯科大学, 歯学部, 助教授 (20013930)
MUNIRAJAN A. Madurai Kamaraji大学, 生物科学部, 特別研究員
SHANMUGAM G. Madurai Kamaraji大学, 生物科学部, 教授
A.K Muniraja Madurai Kamaraji大学, 生物科学部, 特別研究員
G Shanmugam Madurai Kamaraji大学, 生物科学部, 教授
石井 裕子 東京医科歯科大学, 歯学部, 教務職員 (00251546)
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
3,100千円 (直接経費: 3,100千円)
1995年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
1994年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
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キーワード | 口腔癌 / 扁平上皮癌 / p53遺伝子 / ras遺伝子 / HPV / PCR / SSCP / p53 / 癌抑制遺伝子 / ras / タバコ |
研究概要 |
研究目的 口腔扁平上皮癌は全世界で6番目に多発する癌で、本邦においてもこの程度であるが、インド・東南アジアの地域によっては第一位を占め、その発症頻度は本邦・ヨーロッパと際だって異なる。ヒト癌は正常細胞に複数の癌遺伝子または癌抑制遺伝子あるいはそれら両者の変異が蓄積し、悪性度を増し癌化すると考えられている。口腔癌においてもras癌遺伝子変異についてもインドにおける頻度は高いが本邦では低いことから、本邦とインドにおける発症要因の相違が考えられる。本研究においては、インドの口腔扁平上皮癌発症における癌抑制遺伝子及び癌遺伝子変異の内容について解析し、本邦の口腔扁平上皮癌におけるこれらの遺伝子変異の内容と比較検討することにより、口腔癌発症の要因を分子レベルで解き明かす事を目的とした。 方法及び結果 1.口腔扁平上皮癌(OSCC)におけるp53遺伝子変異の検出。インド・マドライ市立病院に来院した患者のOSCCについて、エキソン5-8をそれぞれのプライマーを用いて増幅後、SSCP法によって変異の有無を検出した。結果:11症例(21%)に変異を検出し、それぞれ直接/サンガーDNA塩基配列決定法に従い、変異の内容を決定した。10例は点変異で一例を除きトランジッションタイプであった。2.変異p53の機能解析。同定された点変異のうちこれまで報告のないコドン149(TCC-CCC),205(TAT-GAT),および274(GTT-GCT)の変異をもつp53cDNAをin vitro mutagenesis法で作成し、CMVベクターで発現させ、HSP70、とCONTK (TKプロモーターにp53結合配列を挿入したもの)のプロモタ-に対する転写制御能をしらべた。結果:205変異は変異型の、149は前者に対しては変異型、後者にたいしては野生型の性質を示した。274変異については検討中である。3.ras遺伝子変異の検出。H-ras、K-ras、N-rasのコドン12、13を含む領域(E1)、コドン61、63を含む領域(E2)をそれぞれPCR-SSCP法によって変異の有無を検出した。結果:H-rasのEI断片に8例が、E2断片に6例がN-rasのE1に1例の異常を認めた。従ってrasの変異率は28%であった。変異の内容をオリゴヌクレオチドプローブ/ドットハイブリタイゼーション法で解析したところH-rasのEIの3例はGGC-AGCへの変異(グリシンからセリンへの変化)のE2の6例がCAG-CTG(グルタミンからロイシンへ変化)であった。4.HPVの検出。HPV16、18型を検出できるプライマーを用いてHPVDNAの検出を試みたができなかった。しかし同じインド南部で集めたヒト子宮頸癌の検体からは60-70%の率で検出できた。従ってこのタイプのHPVが口腔扁平上皮癌の発症に関与しないか、別のタイプのHPVが関与する可能性が示された。 考察 p53とras遺伝子の変異率については(1)エキソン5-8以外のp53変異の可能性(2)ras変異が今回の用いた方法で充分か否か等が今後の問題点として残されているが、我々の本邦の口腔扁平上皮癌における遺伝子変異の結果とインドに於ける本研究の結果を比較したところ、p53の変異率はインドで低いがrasの変異率は高いことが判明した。なおrasの変異率の結果は既報とほぼ一致する。同一サンプルでのrasとp53の解析はなされていなかったが、解析の結果から、これら2つの遺伝子変異が癌の発症に独立に作用している可能性が示唆された。またHPVの有無に関しても本邦、欧米での結果と異なり検出されず、これらの点で両国における発癌要因に違いがある可能性が示唆された。なおp53遺伝子変異のスペクトルは変異が咬みタバコに含まれるアルキン化剤により生じたとの考え方と矛盾しない。またH-rasのコドン12のセリンへの変異が3例見出された事も今後発癌の素因を考えるうえで重要と考える。以上インドにおける口腔癌の癌遺伝子、癌抑制遺伝子変異に関しての研究を行い、一部今後の問題として解決すべきところもあるが、これまでにあまり解析がなされていないインド南部の癌に関して詳細な解析を行い両国における遺伝子変異の相違を明らかにし、ほぼ当初の目的を達し充分な成果が得られたものと考える。
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