研究課題/領域番号 |
06044079
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
伊藤 広 (伊東 広) 東京工業大学, 生命理工学部, 客員助教授 (10183005)
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研究分担者 |
水野 憲一 東京工業大学, 生命理工学部, 寄附講座教員 (90212232)
小笹 徹 テキサス大学, 医学部, 助教授
中島 泰子 イリノイ大学, 医学部, 教授
KAZIRO Yoshito TOKYO INSTITUTE OF TECHNOLOGY
NAKAJIMA Shigehiro UNIVERSITY OF ILLINOIS AT CHICAGO
KAWANO Takeharu TOKYO INSTITUTE OF TECHNOLOGY
SATOH Takaya TOKYO INSTITUTE OF TECHNOLOGY
佐藤 孝哉 東京工業大学, 生命理工学部, 寄附講座教員 (20251655)
上代 淑人 東京工業大学, 生命理工学部, 客員教授 (90012690)
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研究期間 (年度) |
1994 – 1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
10,500千円 (直接経費: 10,500千円)
1996年度: 3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
1995年度: 3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
1994年度: 3,700千円 (直接経費: 3,700千円)
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キーワード | Gタンパク質 / イオンチャンネル / 神経細胞 |
研究概要 |
αβγの3種類のサブユニットよりなるヘテロ3量体GTP結合タンパク質(Gタンパク質)は、細胞外のシグナルを認識する受容体から細胞内2次伝達物質を生成する酵素、イオンチャンネルなどのエフェクター分子に情報を伝えるトランスデューサーとして働いている。一方、K^+チャネルは細胞内のK^+イオン濃度を調節することにより、膜電位の維持において重要な働きをしている。内向き整流K^+チャンネルは、過分極下において顕著な内向き整流を示す特徴を持つことにその名を由来するが、生理的条件下においては膜電位が静止膜電位(E_K)よりも僅かに脱分極した際に細胞内のK^+イオンを細胞外に放出して興奮を抑制していると考えられている。現在までに内向き整流K^+チャネルには数種類のサブファミリーの存在が報告されており、そのファミリーの一つであるGタンパク質共役内向き整流K^+チャネル(GIRK:G protein-coupled inward rectify K^+ channel)に関しては、心拍の低下や神経細胞の興奮の抑制を引き起こすことが電気生理学的にも明らかにされている。 本研究では、GIRKのGタンパク質による活性制御機構を明らかにするために、GIRKのヘテロ複合体形成、およびGIRKとGタンパク質の各サブユニットとの相互作用を免疫沈降法を用いて解析した。ラット脳よりGIRK1、GIRK2、GIRK4のcDNAをPCR等によりクローニングした後、GIRK1のN末端にHAエピトープ、GIRK2のN末端にMycエピトープ、Gタンパク質γ_2サブユニットのN末端にFLAGエピトープを付加したDNAを作成し、哺乳動物細胞発現ベクターにサブクローニングした。これらをヒト胎児腎由来293細胞に共発現させ、抗HA抗体、抗Myc抗体、抗GIRK4抗体、抗FLAG抗体を用いて免疫沈降を行ない、それぞれのタンパク質間の相互作用を解析した。GIRK1、GIRK2、GIRK4のいずれか2種を共発現させ、一方に対する抗体で免疫沈降したところ、一緒に共発現させたGIRKの共沈が観察された。また、GIRK1、GIRK2、GIRK4のいずれかとβ_1γ_2を共発現させて抗FLAG抗体でγ_2を免疫沈降したところ、いずれの場合もβ_1とともにGIRK1、GIRK2、GIRK4の共沈がみられた。これらの結果から、GIRK1、GIRK2、GIRK4は細胞内でヘテロ複合体を形成できること、β_1γ_2はGIRK1、GIRK2、GIRK4のそれぞれと相互作用することが判明した。 次に68番目のアミノ酸のシステインがセリンに置換されていて脂質修飾されないため、膜移行できない変異体γ_2とβ_1、GIRK1又はGIRK2を共発現させて、γ_2の免疫沈降を行ったところ、β_1は共沈してきたが、GIRK1、GIRK2の共沈はみられなかった。また、βサブユニットのC-末端の1アミノ酸(β_1ΔC1)、2アミノ酸(β_1ΔC2)、6アミノ酸(β_1ΔC6)を欠失した変異体、C末端にヒスチジンを6個(β_1His_6)付加した変異体のうちβ_1ΔC2、β_1ΔC6はγ_2と結合できないが、他の変異体は野性型β_1と同様にγ_2と結合することを既に我々は明らかにしている。これらの変異体β_1をγ_2、GIRK1又はGIRK2と共発現させて、抗FLAG抗体でγ_2の免疫沈降を行ったところ、β_1ΔC2、β_1ΔC6を発現させた場合には、GIRK1およびGIRK2の共沈はみられなかったが、他の変異体β_1の場合では、GIRK1およびGIRK2の共沈が観察された。次に、GIRK2とβ_1を共発現させ、逆にGIRK2を免疫沈降したところ、野性型および変異体いずれも共沈がみられ、β_1単独でもGIRK2との相互作用が可能であることが明らかとなった。以上の結果から、GIRKとβγとの相互作用にはβサブユニットが必要であり、かつβγサブユニットが細胞膜に存在することが必要であることが示唆された。β_1γ_2はMAPキナーゼファミリーのJNKとERKを活性化させるが、上記のC末端の変異により、それぞれ異なる阻害を受けるという実験結果が得られている。これらのことから、β_1γ_2がGIRKと複合体を形成する際には、MAPキナーゼを活性化させるシグナル伝達に関与する部位とは異なる部位を使用している可能性が示唆された。
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