研究分担者 |
THOLEUCE Jea フランス国立研究所, グルノーブル極低温研究所, 研究員
HACU Piere フランス国立研究所, グルノーブル極低温研究所, 研究員
SCHWEIZER Ja グルノーブル原子核研究所, 磁気中性子部門, 部長
西村 克彦 富山大学, 工学部, 助教授 (70218189)
桑井 智彦 富山大学, 理学部, 助手 (10251878)
石川 義和 富山大学, 理学部, 教授 (20143836)
THOLENCE Jean louis Center de Recherche de Tris Basses Temperatures, CNRS-Grenoble, France Research
HAEN Pierre Center de Recherche de Tris Basses Temperatures, CNRS-Grenoble, France Research
THOLENCE Jea フランス国立科学研究所, グルノーブル極低温研究所, 研究員
HAEN Pcirre フランス国立科学研究所, グルノーブル極低温研究所, 研究員
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研究概要 |
Ce,Smなどの希土類元素化合物は,近藤相互作用と磁気相互作用の競合に基づいた極めて変化に富んだ諸物性量の低温挙動を示す。富山グループでは新らたに今迄には余り報告のなされていないCe化合物CeNi_2Sn_2およびCePd_2Sn_2の試料を作成し,その電気抵抗,帯磁率,熱電能,比熱などの諸測定を行なった。電気抵抗のmK領域の極低温測定には富山大学に設置したグルノ-ブル型の希釈冷凍機を用いた。帯磁率のmK領域の極低温測定はグルノ-ブルグループの測定装置を用いた。これらの測定の結果,CeNi_2Sn_2は1.7Kの低いネ-ル温度を持つ近藤型反強磁性物質であること,CePd_2Sn_2は0.5Kの低いネ-ル温度を持つRKKY物質であることが判明した。近藤型反強磁性物質の熱電能の低温挙動はプラス符号のピークとマイナス符号のピークが存在しており特徴的であるが,その由来は必ずしも明らかではなかった。この物理的な由来が今回の研究で明瞭に根拠付けられた。また両試料の固溶体試料を作成し,その濃度により近藤相互作用,磁気相互作用更に結晶場がどのように変化するかを明らかにすることができた。 富山大学に設置したグルノ-ブル型の希釈冷凍機は今迄の1K以上の測定に比らべて,極めて神経を使う繊細な測定であることが明瞭であるが,グルノ-ブルグループの適切な注告と援助を受けて,ノイズ対策,微小な熱流入対策を入念に行なったところ,50mKの低温にまで電気抵抗の精度よい測定が可能となった。これは今後の諸試料の測定の展望の上で大変喜ろこばしいことであり,富山大学の将来にとって大いに喜ばしいことである。 本年度のうち特筆すべきこと柄は平成8年3月13日-15日,富山厚生年金会館において,「希土類化合物の磁気,電気,熱的性質」と云う題目の日仏セミナーを行なったことである。参加人数は富山大学の低温・磁性関係の研究者6名,富山県立大学関係者2名(富山勢合計8名),フランス・グルノ-ブルの低温・磁性関係の研究者8名,フランス・パリの関係者2名(フランス勢合計10名),国内の諸大学におけるこの分野における先端的研究者13名,総数31名であった。参加者全員が各々の研究について20分-45分の口頭発表を行ない,活発な質疑討論があった。このセミナーは専門的に極めて価値の高いものであり,富山とグルノ-ブルの今迄の協力関係を総括する成果となるものであった。このセミナーの発表論文集の議事録はこの分野の世界中の研究者にとって価値の高いものであるので,これを日本物理学会誌,Journal OF PHYSICAL SOCIETYの補遺号として出版することに決まっており,現在原稿の整理,レフェリーとの論文に関する意見交換などが進行しているところである。 セミナーの参加者の中心的な関心テーマの一つは,重い電子系に属するCeなどの化合物の磁気モーメント発生の機構であった。重い電子系ではCeの4f電子が伝導電子と混成結合し,重い電子系を形成し,磁気モーメントは低温でも発生しないと思われていたが,最近の中性子実験の結果,非常に小さな磁気能率を持つ反強磁性体状態が併存していることが判明した。強磁場による磁性発生のメタ磁性と併せて,近藤相互作用と磁気相互作用の競合の視点が新らしい領域に迄拡張されつゝ適用されており,目ざましい進歩であると考える。 中心的なテーマの二つ目は少数伝導電子系の多釈な磁気構造の研究である。Ceのカルコゲナイド,プニクタイトなどがこの系に属している。その磁気構造は極めて多釈,複雑であり,今後新らしい新展が起りそうな分野である。この他にも多数の興味ある発表が行なわれ,富山とグルノ-ブルの協力を総括するにふさわしい日仏セミナーであったと考える。 なお、セミナー参加のためのフランス研究者の旅費,滞在費,および会議費,議事録出版費には,本科学研究費の他に、委任経瑾金などの援助を受けたことを付記する。
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