研究分担者 |
PAPANIKOLAOU ディー アテネ大学, 地質学部, 教授
DOLOGLOU E. アテネ大学, 物理学部, 講師
ALEXOPOULOS ケイ アテナ大学, 物理学部, 名誉教授
LAZARIDOU M. アテネ大学, 物理学部, 研究員
VAROTSOS P. アテナ大学, 物理学部, 教授
酒井 英男 富山大学, 理学部, 助教授 (30134993)
上嶋 誠 東京大学, 地震研究所, 助手 (70242154)
歌田 久司 東京大学, 地震研究所, 助教授 (70134632)
上田 誠也 東海大学, 海洋学部, 教授 (60011459)
長尾 年恭 金沢大学, 自然科学研究科, 助手 (20183890)
石渡 明 金沢大学, 理学部, 助教授 (90184572)
古本 宗充 金沢大学, 理学部, 助教授 (80109264)
パパニコラウ D. アテネ大学, 地質学部, 助教授
アレクソプーロス K. アテネ大学, 物理学部, 名誉教授
ドログロウ E. アテネ大学, 物理学部, 講師
ラザリドウ M. アテネ大学, 物理学部, 研究員
バロッチョス P. アテネ大学, 物理学部, 教授
木下 正高 東海大学, 海洋学部, 講師 (50225009)
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研究概要 |
本研究課題の初年度(平成6年度)経験と成果を踏まえてギリシャにおいて約1カ月間にわたる観測機器を用いた野外調査を中心に研究を行なった. 本研究課題は,ギリシャにおいて一定の成果を上げている地震予知方法(VAN法と呼ばれる)の原理を究明し普遍化するとともに,日本への効率的な適用の方法を探ることを目的にしている. このVAN法は地電流(自然電位)の連続観測記録に現れる特異な変化(地震前兆電気信号,Seismic Electric Signal : SESと呼ぶ)を判別し,地震予知に役立てると言うものである.これまでにギリシャ周辺で発生した幾つかの被害地震を予知し,警告を出し,実際的に地震防災にも成果を挙げてきた. 原理は以上のようであるが,実際的にはSESは多数の雑信号の中に隠され,その判別は容易でなく,経験と注意深い分析を必要とされ,誰でもできるというものではない.さらに,どの場所で観測してもSESが検出されると言うものではない.多数の観測点の中からわずかに数観測点だけがSESを検出できる条件を備えているらしいことがギリシャ側研究者の長年の努力と経験から判明している程度である. このような状況であるから,ギリシャにおける自然電位観測点(VAN観測点)がどのような物理的,地球科学的条件を備えているかを解明することが,日本への効率的適用を考えるだけでなく,その物理学的原理を究明するためにも不可欠な研究課題である.このことについて,ギリシャ側研究者もこれまでに多大な努力を払ってきているが未だに解明されていない.この課題を,日本・ギリシャ共同で解明する意義がここにある. 現在,ギリシャにおいて地震予知情報を提供しているいわゆる感度のある敏感な観測点は、基本的に3地点である.ギリシャ北西部のイオアンニナ近傍,北部のアシロス近傍,それに最近有効な情報を提供しだした中部のヴォロス近傍である.これらは数十箇所での長年の観測経験から判明したものである.これらの中でイオアンニナは最もよく活躍している観測点である. 良い観測点の条件を明らかにするには,良くなかった観測点の立地条件と比較する必要がある.このような観測点の代表例としては長年にわたる観測点の歴史をもっているピルゴス近傍の観測点である.この観測点は現在も維持されているが,全く役に立たない分けではないけれども常にSES情報を提供する分けではないといういわゆる感度の良くない観測点である. 前年度は,これらの事実を踏まえて,イオアンニナ観測点とピルゴス観測点周辺の地球物理学的調査を行なった.これら2地域の比較だけでは立地条件の違いを明らかにできないことは論理的に当然のことである. 本年度は,事例を増やすべく,アシロス観測点周辺の地球物理学的調査,イオアンニナ観測点周辺での観測項目の追加,それにできるだけ多くのVAN観測点の地形・地質学的視点からの比較を行なった.このため,調査項目としては、重力,地磁気,電磁気,地質,地球化学など多項目にわたった. 現地調査期間は1カ月弱であったが、前年度の経験と現地研究者の協力によって効率的な調査を行なうことができた.本研究では、多数の精密観測器材の運搬,通関作業,機器の調整,地形図の便宜供与,重量のある消耗品類の現地調達など,通常の野外調査とは別の問題を抱えており,現地研究者の協力がここでも不可欠であった. 現地調査により,はじめて詳しく地下構造などが推定できるようになった地域は,イオアンニナ,ピルゴス,アシロスの3地域だけであり、論理的にもこれだけの事例からSESに対して敏感な観測点であるべき条件を明らかにすることは困難である.したがって,少なくとももう数地域のVAN観測点周辺(その多くは敏感でない)の詳細な調査を必要とする. しかしながら,この2年間の調査からも,それ以前に想定していた考えを改めなければならない事実が浮び上がってきている.その一つは,敏感な観測点は地質学的に特殊な場所,たとえば活断層とか貫入岩体の存在といった,ではないかという仮説があったが、そうでないことが明らかになった.それよりも,観測点周辺の地下水条件が重要な役割を果たしているのではないかという,新たな作業仮説が生まれた.これらの手がかりをもとにより科学的根拠を明らかにし、日本への効率的な適用法を考察するためにも,より一層の現地調査が必要である.
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