研究課題/領域番号 |
06044101
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
前多 敬一郎 名古屋大学, 農学部, 助教授 (30181580)
|
研究分担者 |
BUCHOLTZ Dav ミシガン大学, 生理学, 研究員
FOSTER Dougl ミシガン大学, 産婦人科, 教授
田中 知己 東京農工大学, 農学部, 助手 (20272643)
束村 博子 名古屋大学, 農学部, 助手 (00212051)
TSUKAHARA Shinji JSPS Fellow
KARSCH Fred ミシガン大学, 生理学, 教授
FOSTER Doug ミシガン大学, 産婦人科, 教授
武内 ゆかり 東京大学, 農学部, 助手 (10240730)
森 裕司 東京大学, 農学部, 助教授 (40157871)
GHAZZI Mahmu ミシガン大学, 産婦人科, 博士研究員
蛭薙 観順 名古屋大学, 農学部, 助手 (00126898)
|
研究期間 (年度) |
1994 – 1996
|
研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
|
配分額 *注記 |
7,000千円 (直接経費: 7,000千円)
1996年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
1995年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
1994年度: 3,200千円 (直接経費: 3,200千円)
|
キーワード | 黄体形成ホルモン / 黄体形成ホルモン放出ホルモン / ブドウ糖 / LHRH pulse generator / 下垂体 / 視床下部 / 延髄最後野 / 最後野 / 多ニューロン発火活動 |
研究概要 |
(平成6年度) 平成6年9月に、研究代表者前多敬一郎および研究分担者の森裕司および束村博子がミシガン大学を訪問し、アメリカ側研究分担者のDouglas Foster教授、およびFred Karsch教授およびミシガン大学で実際にヒツジを用いて実験を行っている大学院生Dave BucholtzおよびLon Thrun(平成7年2〜3月にかけて来日)の両名を交えて、4日間におよぶミーティングを行い、向こう3年間の研究計画について話し合った。このミーティングで得られた合意のもと、平成7年2月20日より同年3月17日にかけて、3名の研究者が来日し、共同実験を行った。 代謝系による生殖系の調節に関する研究 Fosterらのグループでは、エネルギーの過不足が血糖値の変化として生体によって感知され、その結果、生殖系が制御されるとの仮説を導き出している。グルコースの拮抗剤である2DGの末梢投与、および脳室内への投与により性腺系の指標である血中LH濃度はただちに抑制される。このことは血糖値のセンサーが末梢あるいは脳内に存在し、生殖系へその情報を伝えていることを示している。 名古屋大学においてこの実験に用いるラットのモデルを確立するため、平成7年1月より、ラットを用いて、2DGの末梢および脳内投与を開始した。この実験には研究分担者であるBucholtzが平成7年2月20日より同2月25日まで参加し、2DGの末梢および脳室内投与により、血中LH濃度が顕著に抑制されることが明らかとなった。このとき、血糖値に対する生殖系の感受性に明瞭な性差が存在すること、脳内において血糖値をモニターする部位として、最後野付近が生殖系にとっても重要なことが示唆された。 (平成7年度) 平成7年8〜9月に、研究代表者前多敬一郎および研究分担者の束村博子、ならびに研究協力者の長谷祥治と村橋久美子がミシガン大学を訪問し、アメリカ側研究分担者のミシガン大学産婦人科のDouglas Foster教授、および同大学研究員Dave Bucholtzとともに、ヒツジを用いた共同実験を実施した。また、平成8年2月23日より同年3月11日にかけて、Douglas Foster及び研究協力者のChris Medinaが来日し、ラットを用いた共同実験を実施した。 生体エネルギーレベルによる生殖機能調節を司る脳内メカニズム ミシガン大学でのヒツジを用
… もっと見る
いた実験ならびに名古屋大学でのラットを用いた実験から、グルコースの拮抗剤である2DGの末梢投与、および脳室内への投与により性腺系の指標である血中LH濃度はただちに抑制されることが明らかとなった。このことは血糖値のセンサーが末梢あるいは脳内に存在し、生殖系へその情報を伝え、LH分泌抑制を介して、性腺機能を抑制していることを示しており、2DGによる薬理学的血糖利用阻害が、低栄養条件下における性腺機能抑制のモデルとなる可能性を示唆している。 本年度は、この可能性をヒツジで証明するため、2DG投与による血糖利用低下時にみられるLH分泌抑制が、脳内CRHを介する経路により制御されていることを示すために実験を行った。その結果、2DGによるLH分泌抑制は、性成熟以後の個体にはみられず、単胃動物と反芻動物の血糖感知機構には、明瞭な差があることが示唆された。現在は、ミシガン大学においてインシュリン投与による血糖低下をモデルに用いるべく実験を進めている。 名古屋大学では、2DGによるLH分泌抑制に、視床下部室傍核におけるnoradrenalineの放出が関与していることを明らかにし、絶食モデルとの相似性を示した。さらに、平成8年2〜3月における名古屋大学での共同実験では、2DG投与モデルにおけるCRHの関与、室傍核におけるnoradrenaline各種受容体の関与、さらには迷走神経の関与について検討し、現在データを解析中である。 最後野に存在するとされるブドウ糖感受性細胞の同定 延髄最後野にあると仮定されているブドウ糖感受性細胞を直接的に同定するため、最後野組織の細胞培養系を構築し、細胞内カルシウムの変化を指標として、ブドウ糖利用阻害に反応する細胞を同定しようとしている。現在までに細胞培養系を構築し、2回実験を行ったが、いまだ陽性細胞は発見されていない。 (平成8年度) 平成8年11月16日より28日に、研究代表者前多敬一郎および研究分担者の束村博子と田中知己ならびに研究協力者の塚原伸治がミシガン大学を訪問し、アメリカ側研究分担者のミシガン大学産婦人科のDouglas Foster教授、および同大学研究員Dave Bucholtzとともに、ヒツジを用いた共同実験を実施した。この共同実験では、LH分泌調節機構におけるinsulinの役割を調べるため、insulinの分泌阻害剤であるdiazoxideをヒツジに投与し、急性の糖尿病モデルを作出した。その結果、LH分泌は顕著に抑制され、低血糖時に起こるLH分泌抑制は、単に血糖値にのみ依存しているのでなく、インシュリンによる血糖利用性に関する情報が重要な役割をもつという仮説が検証された。 また、平成9年2月2日より同年2月10日にかけて、研究代表者前多敬一郎および研究分担者の田中知己がラットを用いた共同実験を実施した。この共同実験では、インシュリンによって誘起される低血糖が、どのような神経経路によりLH分泌を抑制されるのかを、c-fosの発現を指標に検討した。このため、インシュリン投与群、グルコース代償投与群、対照群について計16頭のヒツジの脳を還流固定した。現在田中が切片作成、免疫染色を行っている。 (本共同研究により得られた実績) 本共同研究により得られた実験結果を、平成7年11月アメリカで開催された北米神経科学会議においてミシガン大学と連名で発表した。さらに、平成8年11月の北米神経科学会議においても、連名の論文を発表している。 また、Endocrinology誌には、すでに2編のラットの実験結果もとにした共同論文を発表した。また、別の1編の論文は、ヒツジにおける結果に基づいたものであり、Endocrinology誌に投稿するため準備中である。Douglas Fosterが代表者として招かれ、講演をしたPennington Lectureのproceedingとして、本の1章を分担執筆した。さらに、平成9年6月の米国内分泌学会シンポジウムにおいて、本共同研究の結果をFosterが発表する予定である。 両グループ間では、これら共同実験のみならず、インターネットを用いて頻繁にアイデアや進行中の実験に関する情報を交換し、仮説や研究計画を構築してきた。ネットワーク上の議論で生まれたアイデアにしたがって、訪問時の共同研究、および日常の各研究グループでの実験を計画している。将来は、本研究のような形のコミュニケーションが主体となって、国際共同研究が進展していくものと考えている。 隠す
|