研究課題/領域番号 |
06044103
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小澤 高将 名古屋大学, 医学部, 教授 (80022771)
小沢 高将 (1995) 名古屋大学, 医学部, 教授
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研究分担者 |
NAGLEY Phill モナッシュ大学, 医学部, 教授
LINNANE W.An モナッシュ大学, 理学部, 教授
早川 美佳 名古屋大学, 医学部, 講師 (10238090)
田中 雅嗣 名古屋大学, 医学部, 助教授 (60155166)
LINNANE Anthony w. Center for Molecular Biology and Medicine, Monash University professor
PHILLIP Nagl モナッシュ大学, 医学部, 教授
ANTHONY Linn モナッシュ大学, 理学部, 教授
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
4,900千円 (直接経費: 4,900千円)
1995年度: 2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
1994年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
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キーワード | ミトコンドリアDNA / 電子伝達系酸素欠損 / ミトコンドリア脳筋症 / 遺伝子変異 / 活性酸素種 / 欠失 / 加齡現象 / 退行性病変 / 電子伝達系酵素欠損 / 活性酸素ラジカル / 加齢現象 / 慢性疲労症候群 |
研究概要 |
本研究の基本となる概念は、ミトコンドリアDNA (mtDNA)の体細胞における変異の蓄積が加齡過程と退行性疾患において重要な役割を演じていることである。ミトコンドリアは種々の細胞活動のために必要なエネルギーの大部分を供給している。ミトコンドリアは細胞内における活性酸素種の主な発生源である。mtDNAは呼吸鎖の近傍に存在するため、呼吸の副産物として呼吸鎖から漏出する活性酸素種に常に曝露されている。mtDNAへの酸化的損傷は、特に神経細胞あるいは筋肉細胞などの分裂終了細胞においては主な変異原性因子である。初期の体細胞変異(欠失・点変異)は、ミトコンドリア呼吸鎖からの活性酸素種の漏出を増加させ、mtDNAへの酸化的損傷を増大させ、変異の蓄積をもたらす。生体エネルギー的な機能の低下の機構を明らかにするために、酸化的損傷の蓄積とmtDNA変異を研究した。1.加齡に伴う骨格筋mtDNAの欠失の蓄積:Hayakawaはオーストラリアの剖検および整形外科手術において得られた骨格筋試料からDNAを抽出し、180種のプライマー対を用いて、欠失mtDNAの網羅的解析を行った。その結果、加齡に伴って検出される欠失mtDNAの種類が有意に増加することを見いだした。2.生体エネルギー疾患と酸化還元療法:LinnaneらはラットにAZTを投与し骨格筋と心筋異常を誘発した。骨格筋の収縮機能の低下は、心筋の亜ミトコンドリア粒子のエネルギー産生機能の低下を反映していた。Coenzyme Q_<10>とその類似化合物をAZTと同時に投与すると、骨格筋収縮能と心筋亜ミトコンドリア粒子の膜ポテンシャルを改善した。老齢ラットの心筋から調製した亜ミトコンドリア粒子は若年ラットから調製した標品よりも膜ポテンシャルを維持する機能が低下していることが明らかになった(Biochim Biophys Acta ;1271 : 191-194,1995)。3.ミトコンドリア変異細胞株の確立: Nagleyらはethidium bromideとMnによる処理をNamalwa細胞に加え、mtDNAが枯渇した細胞株(ρ^d細胞)を確立し、mtDNAの枯渇によってATP合成が障害される疾患の細胞モデルを提供した(Hum Mol Genet4: 903-914,1995)。4.ミトコンドリア脳筋症におけるmtDNA点変異の蓄積:ミトコンドリア脳筋症患者の骨格筋のmtDNAをクローン化し、クローン間の塩基配列の多様性を検討した。その結果、患者の骨格筋では、60クローン中10個のクローンに点変異が検出された。アミノ酸置換を伴う変異が1個のクローンに観察されたのみならず、終止コドンを生じる変異が2個のクローンにおいて検出された。コントロールの骨格筋では塩基置換は分析した60クローンには検出されなかった。正常胎盤では60クローン中2個のクローンに変異が観察された。ミトコンドリア脳筋症における変異の頻度によれば、それぞれのmtDNA分子は2-3個の有害な変異を有すると推定された。5.ミトコンドリア心筋症における欠失mtDNAの蓄積:180組のプライマーを用いてmtDNA欠失を網羅的に検出する系により、mit-変異とsyn-変異を伴ったミトコンドリア心筋症の19歳の患者で欠失mtDNAが高齢者において検出される量に匹敵する量に達していることを明らかにした。 (BBRC202: 102-110,1995)。6.生殖腺細胞変異と体細胞変異の複合:7歳で心臓移植を受けた患者において3種の生殖腺細胞変異に加えて、212種の欠失mtDNAを体細胞変異として検出し、表現型とmtDNA遺伝子型の間の関連を明確にした(BBRC207: 613-620,1995)。以上の共同研究により、母系遺伝された生殖腺細胞点変異が引き金となり、ミトコンドリアで発生する活性酸素によってミトコンドリアDNAの断片化とともに点変異の蓄積がもたらされることが明らかになった。また、酸化還元療法によりミトコンドリア機能が維持される可能性が示され、ヒト疾患の有用な細胞モデルが得られた。
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