研究課題/領域番号 |
06044107
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
木村 宏 滋賀医科大学, 分子神経神経生物学研究センター, 教授 (40079736)
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研究分担者 |
TINDARO Rend ローマ大学, 医学部(イタリア共和国), 教授
前田 敏博 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (50028388)
遠山 育夫 滋賀医科大学, 分子生物学研究センター, 助教授 (20207533)
RENDA Tindaro University of Rome Institute of Human Anatomy, Professor
RENDA Tindar ローマ大学, 医学部(イタリア共和国), 教授
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
4,700千円 (直接経費: 4,700千円)
1995年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
1994年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
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キーワード | デルトルフィン / PCR法 / 黒質線条体 / モノクローナル抗体 / ラット / 脳 / 生後発達 / 免疫組織化学 |
研究概要 |
デルトルフィン様物質を自家作成した特異抗体を用いて検出する免疫組織科学的方法を確立した。この方法で哺乳動物脳における局在を発生学的な面から検討した。その結果、出生直前から直後にかけて一過性に出現するデルトルフィン含有神経細胞とその軸策突起が成熟動物のそれらよりも極めて豊富に観察された。これらの陽性神経要素は、動物の成熟とともに消滅したので、神経系とくに脳の発達に何らかの役割を担っているものと推定された。この指定が神経系においてのみ成立するのか否かを調べるために、他の末梢臓器についても検索したところ、呼吸器系および消化器系にも同様な一過性のデルトルフィン様物質の発現が認められることが判明した。すなわち、呼吸器系では、気管支の粘膜層および肺胞壁に陽性細胞がラットの胎生14-16日にのみ出現することを見出した。消化器系では、十二指腸を含め小腸の粘膜上皮の内分泌性と思われる細胞にデルトルフィン様の物質がやはりラット胎生19-20日に一過性に出現することが見出された。一般に内在性活性ペピチドとくに神経ペプチドは「脳-腸-皮膚」という器官を軸とする組織に出現することが知られ、この点デルトルフィンも発生の初期に同様な局在様式を示すので、やはり何らかの重要な内因性活性物質として作用するものと推定された。 この他、発生解剖学的には中枢神経系に属する眼球の網膜について調べたところ、多くの神経ペプチドの存在が指摘されているアマクリン細胞の一部にデルトルフィン様物質の局在を証明することが出来た。各種の神経伝達あるいは修飾物質との共存関係を明らかにし、これも論文として報告した。さらに興味ある事実として、鼻粘膜にある鋤鼻器の嗅感覚細胞のほとんどがデルトルフィン陽性に染まり、副嗅球に極めて限局性に投射すること、その投射路の全経路を追跡観察できること、鋤鼻器の嗅感覚粘膜の外科的破壊により副嗅球に終末する陽性線維が完全に消失することを発見した。これまで、鋤鼻器の嗅感覚細胞から副嗅球への投射路の一部に分布する神経ペプチドの報告はあるものの、その全てに例外なく分布する物質の報告はなかったので、本研究の発見の意義は極めて大きい。感覚細胞は、発生学的にも神経細胞のプロトタイプとみなされており、神経細胞の分化および機能の理解にとって有用な情報が得られるものと期待される。 以上の成績は、ポリクローナル抗体を用いたものであるので、これらの結果から哺乳動物にみられる陽性反応が直ちにデルトルフィンであると断言することは出来ない。そこで、上記の研究と並行してモノクローナル抗体の作成に着手したところ、デルトルフィンのC末端を特異的に認識する抗体の作成に成功した。しかし、不思議なことに、この抗体を用いて免疫組織化学染色を行ったところ、ラット、マウス、モルモットで調べた限り、脳を含めたいずれの臓器組織でも陽性反応は検出できなかった。現在、別種のモノクローナル抗体の作成に取りかかっている。 一方、分子生物学的手法を用いて、哺乳動物脳にカエル皮膚に見られるようなデルトルフィンをコードするmRNAが存在するか否かについて検討を行った。すなわち、カエルの皮膚で報告されているmRNAの核酸配列の一部をプライマーとして逆転写酵素によりcDNAを作成し、このcDNAをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法により約50万倍に増幅し、その核酸配列をDNA配列解析器を用いて調べた。その結果、カエル皮膚のmRNAと約50%のホモロジーを持つ新しい核酸配列を発見した。次に、このcDNA配列をベクターに組み込み(遺伝子組み換え)、大腸菌でペプチドを発現・合成させる実験に着手した。現在の予備実験では、新規のペプチド配列をもつ可能性が示唆されており、今後さらなる究明を継続する予定である。
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