研究課題/領域番号 |
06044108
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
梶本 興亜 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (30029483)
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研究分担者 |
藤村 陽 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (00222266)
原 公彦 京都大学, 大学院・理学研究科, 講師 (80025436)
MCCOMBIE J Nottingham大学, 化学, 講師
SIMONS J.P. Oxford大学, 化学, 教授
MCCOMBIE J. Nottingham大学, 化学, 講師
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
8,200千円 (直接経費: 8,200千円)
1995年度: 4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
1994年度: 4,200千円 (直接経費: 4,200千円)
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キーワード | 回転コヒーレンス / ビアントラセン / 内部回転 / 電荷移動反応 / クラスター / 超音波ジェット / 電子移動反応 / 超音速ジェット |
研究概要 |
クラスターの研究は、分子間力や化学反応の分野に大きなインパクトを与えており、最近では、かなりの大きな中性分子クラスターやクラスターイオンが研究の対象となってきた。しかし、クラスターを構成する分子数が大きくなるほど、その構造を知ることが困難になり、このことが定量化の障害となっている。大きな分子の構造に関しては、従来の高分解能分光は無力であり、新しい分光法である回転コヒーレンス分光法が回転定数の測定に適している。現在わが国では回転コヒーレンス法による構造決定に取り組んでいる研究グループは我々のみであり、イギリスにおいてはSimonsらが着手しようとしている。Simonsらは、分子内電荷移動反応を起こす化合物・タンパク質関連化合物の回転異性体の構造を研究対象としており、我々は周囲に分子を配したクラスターの構造に興味がある。二つの研究グループが協力し、クラスター分子の構造を決定し、これに基づいて、クラスターの化学反応の研究をさらに定量的なものへと脱皮させることを目指した。 平成7年度は以下の二点を中心に研究を実施し成果を挙げた。 (1)ポンプープローブ法による回転コヒーレンス測定 ここでの目的は、ビアントラセンの溶媒和クラスターにおける溶媒分子の付着位置と個数に応じてビアントラセンの分子内電荷移動反応の起こり易さがどのように変わるかを調べることにある。当初我々は、光励起された分子の時間分解蛍光を偏光選別して時間相関単一光子計数法で測定する方法によって回転コヒーレンスを観測することを試みた。この方法では回転コヒーレンスシグナルの強度と位置は電子励起状態の回転準位構造を反映する。すなわち電子励起状態が対称コマ分子に近く、また慣性主軸と遷移双極子モーメントが平行なほど強いシグナルが得られる。ところが本研究で対象としているビアントラセンは大きなクラスターでは対称コマ分子からのハズレが大きくなる上に光励起後に振動エネルギー再分配や電荷移動反応を起こして慣性主軸の方向が変わるような構造変化を起こしている可能性が高いことが明らかとなった。このためビアントラセン単体が強い回転コヒーレンスシグナルを与えるのと対照的に、これらのクラスターはコヒーレンスシグナルを全く与えない。そこで時間相関単一光子計数法にかわってポンプープローブ法による回転コヒーレンス測定に着手した。この方法では電子基底状態の回転準位構造もシグナルに反映されるので、ビアントラセンの溶媒和クラスターの構造決定が可能となる。この方法ではピコ秒パルスレーザー光の増幅システムを必要とするが、全シグナル強度に対して数%のディップとして観測されるコヒーレンスシグナルを得るためには、レーザー強度は非常に安定していることが要求される。この条件を満たすためにかなりの時間を要し、最終的に何とか要求を満たすkHzの増幅システムを用いて実験を行えるようになった。まず単体について良いシグナルを得ることができた。続いて水クアスターについても回転コヒーレンスシグナルを得ることに成功した。時間相関単一光子計数法によってコヒーレンスシグナルが観測されなかった水クラスターのコヒーレンスシグナルがポンプープローブ法で観測されたのは、励起状態での電荷移動反応によって構造が大きく変化するためであることを理論的に示唆された。共同研究のため、梶本が英国に赴き、Dr.Langfordが来日して研究を行った。 (2)クラスターの励起状態ダイナミックスの追跡 回転コヒーレンスから得られる情報と、励起状態での内部回転・エネルギー移動等の現象とを結び付けて、コヒーレンス測定の応用範囲を広げる。クラスターの構造決定のまえに装置の性能確認をかねて、単体分子の基底・励起状態の内部回転構造を決定した。すなわち、極性溶媒が付着していなくても分子内電荷移動状態を生成する分子、4-(N,N-dimethylamino) ethylbenzoate (Oxford)、4-(N,N-dimethylamino)-3,5-dimethylbenzonitrile(京大)について、構造決定を行った。これらの分子の構造から内部回転と電子移動状態生成との相関の直接的な証拠が得られた。共同研究のため、Simons教授が来日し、李氏が渡英して研究を行った。
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