研究課題/領域番号 |
06044111
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
政池 明 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (40022587)
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研究分担者 |
ROBERSON R. デューク大学, 教授
BOWMAN D. ロスアラモス国立研究所, 中間子施設, 主任研究員
高橋 義朗 京都大学, 大学院・理学研究科, 講師 (40226907)
清水 裕彦 理化学研究所, 研究員 (50249900)
延與 秀人 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (30213606)
薮崎 努 (藪崎 努) 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60026127)
今井 憲一 京都大学, 理学部, 教授 (70025493)
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
8,000千円 (直接経費: 8,000千円)
1995年度: 4,100千円 (直接経費: 4,100千円)
1994年度: 3,900千円 (直接経費: 3,900千円)
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キーワード | 偏極中性子 / パリティの破れ / 時間反転 / ランタン偏極 / 常温陽子偏極 / ホルミウム / 光ポンピング / パリティ / 時間反転不変性 / 対称性 / 中性子 / 共鳴反応 / 増幅効果 / 動的偏極法 / ランタンアルミネート |
研究概要 |
偏極低エネルギー中性子が特定の原子核によって共鳴吸収される時に空間反転の破れの増幅効果が最大100万倍となることがドブナ及び京大-高エネルギー物理学研究所グループによって見出されたため、本研究ではその増幅メカニズムを調べ、更にこの増巾効果を用いた時間反転の破れを測定するための基礎実験を行なった。 まず米国ロスアラモス国立研究所に日米共同で時間反転対称性測定実験のための偏極^3He装置を建設した。中性子透過法と核磁気共鳴法の2種類の測定法を併用することによって精度よく偏極度を求めることに成功し、実際の時間反転対称性の検出実験を行なった際の系統誤差の大きさを目標とする実験精度以内に収める目処をたてた。また偏極率向上に向けての課題も明らかとなった。 新しく建設したγ線カウンターと中性子カウンターを用いて、Pd,Sb,I,Cs Xeなど多数の原子核におけるパリティの破れを探索した。これはこれまでデータが不足していた質量数が100程度の領域の原子核におけるパリティの破れを系統的に調査し、パリティの破れの増幅機構の解明にとどまらず、直接核内の弱い相互作用の大きさを決定しようという狙いで行なわれた。その結果、10個の新しい共鳴におけるパリティの破れを発見した。また、Th核において発見されたすべてのパリティの破れが同じ符号を持つことが確認され、Th核に特有の原子核構造によるものと推測された。これは原子核構造の研究にパリティの破れをプローブとした新しい手法を切り開くこととなった。 さらにXeの3.2eV共鳴においてパリティの破れが発見され、時間反転対称性の実験に向けて新しい可能性を開くこととなった。Xeは多くの同位体を持つが、この共鳴が属すると思われる^<131>Xeは^3Heと同様に光ポンピングによって低磁場で偏極させることができる。これによって中性子のスピンコントロールが格段に容易となる。La偏極による方法とともに今後の研究の発展が期待される。 一方、高エネルギー物理学研究所においては偏極中性子を原子核にあてたときのガンマ線の左右非対称度の測定を行ない、弱い相互作用のマトリックス・エレメント(W)を決定した。特にLa核を標記とした時のp波共鳴からのガンマ線遷移の非対称度よりWの値が、 1.6meV<W<7.9meV となることが明らかとなった。更にそれに基づいて時間反転の破れの測定のsensitivityを求めた。 時間反転の研究のためには入射中性子のみならず、標的核も偏極させることが不可欠である。まず京都大学においてはNd^<3+>をドープしたLaAlO_3結晶中のLa核を温度1.5K、磁場20KG中で70GHzのマイクロ波を用いて約20%動的に偏極させた。更に高磁場低温にすることにより高エネルギー物理学研究所、ロスアラモス国立研究所における時間反転の破れの研究を行なうことが可能となる。LaGaO_3、La_2O_2Sなどの偏極の可能性も検討している。 ペンタセンをドープしたナフタリンを液体窒素に浸してレーザービームを照射してtriplet中間状態に励起させ、マイクロ波によって動的に偏極させる新しい陽子偏極法を開発した。これによって陽子を20〜30%偏極することに成功した。またこの結晶をフィルターとして用い、低エネルギー中性子ビームをあてる試みを行なった。このときの中性子の透過度の測定から透過中性子の偏極度とフィルター中の陽子の偏極度を求めることが出来た。その結果、この方法が低エネルギー中性子の偏極フィルターとして、また中性子偏極アナライザーとして有効な方法であることが確認された。現在その偏極のメカニズムを解明するとともに更に偏極度を向上させる実験を行なっている。またpーターフェニール単結晶中の陽子の偏極もほぼ完成した。 偏極中性子と整列した原子核との反応の際の5ベクトル相関を測定して時間反転の破れを探索するためにホルミウム中での低エネルギー中性子の減偏極を測定した。その結果20eV以上の中性子では減偏極があまり大きくならないことを見出し、時間反転の破れの探索が可能であることを示した。これら一連の実験によって中性子共鳴吸収反応における時間反転の不変性の測定のための基礎的研究はほぼ実現されたと考えられる。
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