研究課題/領域番号 |
06044114
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山岡 仁史 京都大学, 工学研究科, 教授 (80026004)
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研究分担者 |
LODGE Timoth ミネソタ大学, 化学科, 教授
TIRRELL Matt ミネソタ大学, 化学工学ー材料科学科, 教授
松岡 秀樹 京都大学, 工学研究科, 助手 (40165783)
澤本 光男 京都大学, 工学研究科, 教授 (90150325)
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
7,200千円 (直接経費: 7,200千円)
1995年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
1994年度: 3,700千円 (直接経費: 3,700千円)
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キーワード | 両親媒性高分子 / ブロックポリマー / リビングカチオン重合 / 高分子ミセル / 界面活性 / 小角中性子散乱 / 小角X線散乱 |
研究概要 |
本研究は、一分子に親水性と疎水性の部位を併せ持つ「両親媒性高分子」を対象として、その溶液中および表面・界面における親水性鎖と疎水性鎖の挙動を観測することにより、親水性および疎水性相互作用に影響を与える諸因子について定量的な評価を行い、分子鎖形態と発現する機能との関係を解明することを目的とした。 過去2年間の研究によって得られた成果を、研究計画の順に以下に記載する。 1.両親媒性ポリマーの合成 試料として用いた両親は媒性高分子は、親水性基部分と疎水性基部分とが共有結合でブロック状に連結したポリマーであり、ここでは、最近研究分担者の一人により開発されたリビングカチオン重合法によって合成した。まず、2-アセトキシビニルエーテル(AcOVE)の単独重合を行ったのち、2-フェノキシエチルビニルエーテル(PhOVE)を添加し前駆体ブロックポリマーを得た。つぎに、AcOVE部分をアルカリ加水分解することにより親水性の2-ヒドロキシエチルビニルエーテル(HOVE)に変換し、目的の両親媒性ポリマーを合成した。小角中性子散乱(SANS)測定のための試料として、PhOVEのフェニル基部分を重水素化したブロックポリマーの合成も行った。また、親水性鎖が同じHOVE単位で、疎水性鎖がn-ブチルビニルエーテル(NBVE)から構成される両親媒性ポリマーとその部分重水素化物を合成した。さらに、ビニルエーテル鎖とスチレン誘導体鎖から成る両親媒性4本鎖ブロックポリマーの精密合成も実施した。 2.光およびX線散乱測定 これらのポリマーが水溶液中においてミセルを形成することは、疎水性の強い色素が可溶化することから確認された。これらのミセルの大きさは、動的光散乱(DLS)測定により評価した。また、米国側の装置を用いた強制レイリー散乱測定によって、このミセル系の拡散係数を決定した。両親媒性4本鎖ブロックポリマーに関するDLS測定からは、極性のエタノール中では一分子として溶解しているが、無極性のクロロホルム中ではミセルを形成するという興味深い結果が得られた。ポリマー水溶液に関する小角X線散乱(SAXS)測定の結果からは、ポリマー濃度が増加してもミセル形状の変化はなく、ミセル数だけが増大することが明らかとなった。さらに、HOVE単位ととNBVE単位の組成比が(1:1)のブロックポリマーの場合には、有機溶媒中で逆ミセルを形成することがSAXS測定により確かめられた。 3.中性子散乱測定 部分重水素化ポリマーを用い、D_2O/H_2O混合溶媒系におけるコントラスト・バリエーション法によってSANS測定を行った結果、D_2Oが100%の溶媒系からH_2Oの分率が増加するにつれて散乱強度は減少し、極小値を示したのち増加に転じる傾向が認められ、この極小値前後で散乱曲線の形が変化することから、ミセル全体は均一ではなく内部に散乱長密度の異なる部分が存在することが確かめられた。これらのSAXSおよびSANS測定による実験事実をもとに、種々の高分子ミセルのモデルについて理論散乱曲線と実測曲線との比較を行うことにより、これらの両親媒性ブロックポリマーはコア・シェル二重構造をもつミセルを形成することが明かとなった。さらに、それらの大きさと形状は疎水性鎖の長さに依存して、短い疎水性鎖においては球状ミセルを形成するが、長い疎水性鎖の場合には回転楕円体状となることが確かめられた。 4.表面・界面に関する測定 合成した両親媒性ブロックポリマーが界面活性作用を有することは、系の表面張力がポリマー濃度の増加とともに低下することから確認された。これらのポリマーを光学用セルの表面に吸着させ、系中に導入したシリカコロイドとの界面近傍における相互作用をエバネッセント波光散乱法を用いて観測することにより、ポリマー界面がシリカ粒子に影響を及ぼす強さと距離について検討した。 5.総合評価 以上の実験結果を系統的に検討することにより、両親媒性高分子における親水性鎖および疎水性鎖の挙動と相互作用に関する極めて有用な情報が蓄積され、高い機能性をもつ新しい両親媒性高分子を分子設計するための基本的な知見が得られた。
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