研究課題/領域番号 |
06044121
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
三上 文三 京都大学, 食糧科学研究所, 助教授 (40135611)
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研究分担者 |
SACCHETTINI ジェイムズ シイ Albert Einstein College of Medicine, Assistant
HEHRE Edwaed Albert Einstein College of Medicine, Professor
SACCHETTINI James c. Albert Einstein College Medicine, Assistant Professor
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研究期間 (年度) |
1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
2,900千円 (直接経費: 2,900千円)
1994年度: 2,900千円 (直接経費: 2,900千円)
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キーワード | β-アミラーゼ / X線結晶構造解析 / 酵素基質複合体 / 酵素反応機構 / フレキシブルループ |
研究概要 |
アミラーゼについては古くから多くの研究がなされているにもかかわらず、触媒反応が原子レベルで解明された例はほとんどない。申請者らはダイズβ-アミラーゼについてα-シクロデキストリンとの複合体のX線結晶構造解析を2.0Å分解能で完成した。本研究ではさらに、β-アミラーゼの触媒機構を明らかにするため、ダイズβ-アミラーゼと本酵素の基質アナログであるマルトース、マルタール、およびグルコースとの複合体の結晶を種々の条件で調整し、そのX線結晶構造解析を行った。 ダイズグロブリン抽出後の脱脂ダイズより既報の方法によりβ-アミラーゼの主要アイソザイムであるアイソザイム2を600mgを精製し、その結晶化を行った。得られた三方晶の結晶にマルトース、マルタール(Hehre教授合成)、およびグルコースをそれぞれ低濃度と高濃度で浸析し、これらの基質アナログとの複合体結晶を調製した。得られた基質アナログ複合体結晶のX線回折データは米国アルバ-トアインシュタイン医科大学設置のシーメンス2次元検出器により2.0Å以上の分解能まで収集し、測定されたデータは初期モデルとしてα-シクロデキストリン複合体のタンパク部分を用いてリファインメントとコンピュータグラフィクスによるモデル修正を繰り返し、それぞれの複合体の最終構造を得た。マルトース複合体の構造解析の結果から、低濃度、高濃度のマルトース存在下、いずれの場合もサブサイト1から4に2分子のマルトースが連続的に結合しているのが認められた。2分子のマルトースは本酵素による逆反応により、一部マルトテトラオースを形成している。従って、本酵素の生成物であるマルトースを反応させることにより、本酵素の基質である、マルトテトラオースとの結合状態を直接観察することができた。その結果、本酵素の触媒部位であるサブサイト2と3の間には、触媒残基であるGlu186とGlu380が配置され、それぞれ切断部位のグルコシド結合のOおよびサブサイト2に結合している生成物型のマルトースのβ-アノマーのO1と水素結合を形成していることが明らかになった。この結果に基づきGlu186の側鎖によるグルコシド結合への攻撃とその反対側に位置するGlu380の側鎖によって活性化された水分子のC1炭素への攻撃によって進行する本酵素の立体化学的触媒機構を明らかにすることができた。一方、本酵素の水和反応の基質であるマルタールとの複合体の解析結果から、水和反応の生成物である2-デオキシマルトースがマルトースと同じ部位に2分子が結合していることが示され、加水分解反応と水和反応とが同一部位で生じることが判明した。さらに、グルコース複合体の解析結果から、低濃度グルコース存在下では1分子のグルコースがサブサイト1に、高濃度グルコース存在下では3分子のグルコースがサブサイト1、3、4に結合しているが明らかになった。グルコースがサブサイト2へは結合できないことはサブサイト2への結合が基質の構造変化を伴うことを示唆している。マルトース、マルタール、およびグルコースの複合体では活性部位の近くに存在するGly96からIle103のフレキシブルループ部分は活性部位の近くに存在する「閉じた構造」をとるが、α-シクロデキストリン複合体やアポ型の酵素では活性部位から離れた「開いた構造」をとっていることが判明した。両構造では最大約11Åのポリペプチド主鎖の移動がある。「閉じた構造」ではループ上のAsp101の側鎖はサブサイト2のグルコース残基のO2と水素結合を形成し、基質の反応遷移状態を安定化する。一方、生成物のマルトースが酵素から遊離するためには「閉じた構造」をとる必要があり、このループの開閉が酵素反応と同期しているものと推定された。以上の結果は硫安溶液中での酵素反応の解析を行った結果からも支持された。
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