研究課題/領域番号 |
06044122
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大東 肇 京都大学, 農学部, 教授 (80026583)
大東 繁 京都大学, 農学部, 教授
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研究分担者 |
バランサード ガイ マルセーユ大学, 薬学部, 教授
フィリップソン デーヴィ ロンドン大学, 薬学部, 教授
ハファレ マイケル コロラド大学, 人類学部, 准教授
川中 正憲 国立予防衛生研究所, 寄生動物部, 室長 (50109964)
西田 利貞 京都大学, 理学部, 教授 (40011647)
小清水 弘一 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (90026518)
HUFFMAN Michael Colorado University, Associate Professor
BALANSARD Guy University of Marseille, Professor
PHILLIPSON David London University, Professor
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研究期間 (年度) |
1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
3,200千円 (直接経費: 3,200千円)
1994年度: 3,200千円 (直接経費: 3,200千円)
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キーワード | チンパンジー / 薬用植物 / 住血吸虫 / マラリア / 赤痢アメーバー / トリコモナス / レシュマニア / 抗寄生虫活性 |
研究概要 |
最近、野生霊長類が植物を巧みに食べ分け、非栄養的に摂取する植物には薬として利用されている種が少なくないことが次々と報告されている。彼らがどのような疾病にどのような植物を利用しているかを特定することは、残念ながらながら、不可能である。しかしながら、詳細な観察結果より、多くの場合、寄生虫や細菌による感染症のコントロールを目的としていると指摘されている。本研究代表者らはこれまで、薬用的利用の最も状況証拠に富んだキク科Vernonia amygdalinaを取り上げ、種々の生理活性成分を明らかにし、その一部が確かに、ある種の寄生虫に対し生育抑制や産卵抑制効果を持つことを示してきた。この国際学術(共同)研究では、V.amygdalinaのみならず、他の野生霊長類の薬用的利用植物に注目し、それらの抗寄生虫能を探り、さらに各種活性物質の化学的究明と、生理学的評価を行うことを主目的とする。本課題研究の成果は、野生霊長類の採食行動生態を生理化学的視点より解析することにも繋がるものと考えられる。 西田、Huffmanらは、タンザニア・マハレにおける長年の調査記録に基づいて、同地のチンパンジーが薬として利用していると推察される植物を新たに10種リストアップした。薬用的利用植物を選ぶ際の彼らの基準は、1)採食頻度が極めて少ない、2)頻度は高くとも、噛まずに飲み込まれるなど採食様式に特徴がある、などを基本とし、これら情報にさらに3)現地住民に薬用的利用伝承がある、を重ね合わせることにある。両氏により指摘された植物粗抽出物につき次いで、各種抗寄生虫活性を検討した。その結果、Erythrina abyssinica,Combretum molle,Ximenia americanaに抗マラリア活性が、E.abyssinicaには抗赤痢アメーバー活性が認められた(フィリップソン、大東担当)。バランサード、川中らはC.molleならびにAspilia mossambicensisに抗トリコモナス活性を見い出した。さらに川中は、抗住血吸虫活性について詳細に検討し、E.abyssinica,C.molle,A.mossambicensis,Lippia plicataに顕著な活性を認めた。以上のように、野生霊長類の薬用的利用植物が抗寄生虫物質を開発する上で貴重な資源となることが示唆された。なかでも、E.abyssinicaおよびC.molleの抗寄生虫活性は巾広く、しかも強力であることから、活性物質の究明へと研究が進展している。 大東、小清水は一方、これまでのV.amygdalinaの抗寄生虫活性成分の研究を続行し、新たに、新規ステロイドを数種単離・構造決定した。これらの抗寄生虫活性は、すでに指摘してきた通り、関連配糖体よりはるかに強く、野生チンパンジーが病気として度々遭遇する寄生虫病への対症薬としての本植物の価値が示された。 なお、本補助金により、大東はロンドン大学に赴き、フィリップソン博士と共同で抗マラリア、抗赤痢アメーバー活性を、また川中はマルセ-ユ大学でバランサード博士の下で抗トリコモナス、抗レシュマニア活性につき検討した。川中は、本年10月にイズミール(トルコ)で開催された国際寄生虫学会に参加し、本課題に関する成果の一部を発表すると共に、将来の展開に向けて、新しい抗寄生虫活性測定法の情報を得てきた。一方、マルセ-ユ大学からは、バランサード博士に代わって、同博士の下で本研究課題に関する具体的な実験を行っているエリアス博士を招へいし、川中博士と共同で抗住血吸虫活性を検定し、見るべき成果を上げてきた。
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