研究課題/領域番号 |
06044123
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
前田 章夫 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (20012370)
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研究分担者 |
OTTOLENGHI M エルサレム ヘブリュー大学, 物理化学教室, 教授
LANYI Janos カリフォルニア大学, アーバイン校・生理学生物物理学教室, 教授
神取 秀樹 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (70202033)
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研究期間 (年度) |
1994 – 1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
6,700千円 (直接経費: 6,700千円)
1996年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
1995年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
1994年度: 2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
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キーワード | バクテリオロドプシン / 変異タンパク質 / フーリエ変換赤外分光法 / プロトンポンプ / クロライド / 水分子 / 光反応過程 / 水素結合 / 変異蛋白質 / FTIR / シッフ塩基 / レチナ-ル |
研究概要 |
研究代表者前田の属する京都グループは、米国側の共同研究者であるLanyiらとのアイデアを交換しながら、Lanyiらの作るバクテリオロドプシンの変異蛋白質を使い、光反応過程でのフーリエ変換赤外スペクトル(FTIR)を測定した。またイスラエルの共同研究者であるOttolenghiとも同様にアイデアの変換をしながら共同研究を行った。京都グループはさらにバクテリオロドプシンでつちかった手法およびアイデアを視覚のリセプターであるロドプシンに適用し、以下に示すような結果も得られた。 (1)M中間体の生成にともなって起こるプロトンの放出は、Glu204から行われることが明らかにされた。このGlu204とAsp85との間にあるArg82も含めた水分子の関与する水素結合の構造を、これらの変異蛋白質の赤外スペクトルから解析したところ、Arg82とGlu204との相互作用における水素結合の重要性が示唆された。それに対応したその間を結ぶ水分子の変化(3625cm^<-1>にO-H伸縮をもつ)を見い出した。 またバクテリオロドプシンがプロトンポンプを行った後、元の構造に戻る過程を解析するため、Glu204とLeu93の変異体を用いたダイナミクスの野生型との比較を行った。その結果、Leu93の変異蛋白質でのO中間体ではAsp85はプロトン化したままであることから、Asp85の脱プロトン化は13シス型からオールトランス型への異性化に依存することが分かった。Glu204の変異蛋白質ではAsp85はプロトン化したままでレチナ-ルに歪みがはいっている。その解消にはAsp85の脱プロトン化を要する。すなわち反応は、異性化、Asp85の脱プロトン化、歪の解消と進むことがわかった。 (2)レチナ-ルと細胞質の間にあるVal49、Asp96、Thr46などが作る構造体において、これまであまり注目されてこなかった水分子やペプチドのカルボニル基の役割が、変異蛋白質や重原子ラベル法を使った赤外吸収スペクトルから明らかになった。具体的にはVal49のカルボニル基に水分子が水素結合を形成し、Thr46へと続くBヘリックスの水素結合ネットワークがレチナ-ルと細胞質側をつなぐ遠距離の相互作用を行う部位である。 (3)Asp85をThrに変えた変異蛋白質では、プロトンポンプができないが、クロライドを運搬できる。その際クロライドが、野生型のAsp85のように水分子と水素結合を形成していることが赤外スペクトルから明らかになった。このときシッフ塩基の水素結合の強さは、野生型より弱くクロライドポンプであるハロロドプシンと同程度であり、このことは活性中心の構造がハロロドプシンに近いことを示唆する。 (4)ロドプシンの中間体のひとつ、メタIIがG蛋白質を活性化するときのコンプレックスの赤外スペクトルを測定することに成功した。その構造を、メタIIの赤外スペクトルと比較したところいくつかのペプチドのC=O、N-Hが変化していることが分かった。そのうちのひとつは、メタIIで生じたGly90のC=Oの変化が消失したことに相当する。膜内にあるカルボン酸には変化が認められないが、脱プロトン化したカルボン酸の1403cm^<-1>から、プロトン化したカルボン酸の1704cm^<-1>へのシフトが見られ、Glu134のプロトン化と推測される。 また脊椎動物のロドプシンとは異なってシッフ塩基の対イオンが同定されていない無脊椎動物のタコのロドプシンの赤外スペクトル解析から、タコのロドプシンでは活性中心で水分子やペプチドのカルボニル基が水素結合ネットワークを形成していることがわかった。また光情報伝達過程について以下の知見が得られた。バソ中間体の生成に際して、シッフ塩基は水分子を結合したまま異性化する。ルミ中間体になると、この水はタンパクとより強い水素結合を形成し、レチナ-ルのシッフ塩基の近くに歪みを入れる。アシッド・メタ中間体ではシッフ塩基の周りにある水、ペプチド結合の再配列が起こり、シッフ塩基の安定化を起こす。
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