研究課題/領域番号 |
06044124
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
稲葉 カヨ 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (00115792)
|
研究分担者 |
WITMERーPACK マージット デ ロックフェラー大学, 細胞生理免疫学部門, 上級研究員
STEINMAN Ral ロックフェラー大学, 細胞生理免疫学部門, 教授
WITMER-PACK Margit d. Senior Research Associate, Laboratory of Cellular Physiology and Immunology, The
WITMERーPACK マージット.デ ロックフェラー大学, 細胞生理免疫学部門, 上級研究員
|
研究期間 (年度) |
1994 – 1995
|
研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
|
配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 6,500千円)
1995年度: 3,100千円 (直接経費: 3,100千円)
1994年度: 3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
|
キーワード | 樹状細胞 / 抗原提示 / 細胞分化 / 機能的成熟 / T細胞活性化 / 単クローン抗体 |
研究概要 |
樹状細胞は骨髄幹細胞由来の非リンパ系白血球細胞で、強力なT細胞活性化能をもち、免疫応答の誘導において抗原提示細胞として働くことが知られている。これまでの申請者らの研究において、in vitroにおいてマウス骨髄細胞をGM-CSF存在下で培養することにより、樹状細胞はマクロファージや顆粒球と同じ前駆細胞より分化増殖してくることが明らかになっているだけでなく、その分化成熟程度により異なる機能活性を発揮することも報告してきた。また、分布域により異なる表現型を呈する生体内の樹状細胞は、それぞれの分化成熟程度を反映しており、所属リンパ系器官への移動によりより強いT細胞活性化能を獲得することも示した。2年間にわたる本研究は、これらの結果を踏まえ、樹状細胞の細胞機能特性を明らかにする目的で行ったものであり、本年度は昨年度得た結果と合わせ以下のものを公表した。 1)樹状細胞特異抗体として知られていたNLDC-145が認識する分子は205KDaのタンパク(DEC-205)であり、胸腺上皮細胞や肺マクロファージにも強度に発現されており、必ずしも樹状細胞にのみ発現が限定されるものではないが、細胞機能の成熟の過程で発現量を増すことが示された。本共同研究による遺伝子クローニングの結果、10個の異なるドメインをもつC型レクチンであることが明らかにされた。また、抗体を用いた実験から、この分子が抗原提示に寄与することが判明し、その構造特性から生体内糖タンパク分子の提示に関することが推測される。 2)加齡に伴う免疫応答能の低下における抗原提示細胞の関与を検討するため、加齡促進モデルマウス(SAM)を用いて樹状細胞のT細胞活性化能を検討した結果、老齢マウスにおいて有意の低下が認められた。そこで、T細胞活性化に必要とされる共刺激分子の発現を調べたところ、細胞表面に発現されるMHCクラスII分子やCD54 (ICAM-1)の発現低下が認められた。しかし、CD80 (B7-1),CD86 (B7-2)では明かな差異は検出されなかった。 3)HIV感染においてCD4陽性T細胞が選択的に減少することが知られているが、HIVの複製にはT細胞が活性化状態にあることが必要である。このため、強力なT細胞活性化能をもつ樹状細胞の関与が考慮されてきた。そこで、HIV-1の複製のために必要とされるプロモーターに結合する転写因子の発現を検討したところ、樹状細胞には多量のNF-kBが検出されたが、Sp1は認められず、静止期T細胞においては逆で、Sp1の発現は認められたが、活性型NF-kBは欠如していることが示された。ところが、両細胞を混合しウイルスを添加して培養すると、多核体が形成されて、その中に両複製因子が存在することになり、その結果ウイルスの複製が開始されることが示された。 現在進行中であり、公表には至ったいないが、抗原提示に必要と考えられる細胞内小器官の分離精製を樹状細胞を用いて進めており、細胞内において多量のMHCクラスII分子とDEC-205が共存する分画が得られている。この分画の小器官は細胞内消化酵素を認識するLAMP-1陰性であることから、エンドゾームとは異なると考えられる。この研究は、現在更に分化段階の異なる樹状細胞を用いて更に詳細に検討を加えている。 共同研究としての相手方研究分担者からは、異系ラットを用いた下肢移植実験においてサイクロスポリン投与により、末梢リンパ器官内にMHCクラスII強陽性の供与者由来樹状細胞が多数認められ、これらの細胞は下肢骨髄に由来するものであることが明らかにされており、末梢リンパ組織におけるキメリズムの成立が移植下肢の生着に必須であることが報告されている。また、インフルエンザウイルス特異的CD8陽性細胞障害性T細胞(CTL)の誘導において、樹状細胞は感染性を消失したウイルスを用いても直接CTLを活性化する機能を持つことが報告されており、これまで考えられていた経路とは異なる抗原のプロセッシングを行う可能性が示唆されている。
|