研究課題/領域番号 |
06044132
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
松本 継男 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 教授 (40107355)
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研究分担者 |
MAEDA Susumu カリフォルニア大学, デービス校・昆虫学部, 準教授
VLAK Just M. ワーゲニンゲン農業大学, ウイルス学部, 教授
GRANADOS Rob コーネル大学, ボイストンプソン研究所・植物保護部, 部長
橋本 義文 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 講師 (60211471)
清水 進 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 教授 (20187454)
CROOK Norman 英国国際園芸研究所, 主任研究員
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
6,200千円 (直接経費: 6,200千円)
1995年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1994年度: 3,200千円 (直接経費: 3,200千円)
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キーワード | バキュロウイルス / 殺虫性タンパク質 / 耐虫性作物 / 組換えウイルス / トランスジェニック作物 |
研究概要 |
バキュロウイルスの一種、イラクサキンウワバ顆粒病ウイルス(TnGV)の顆粒体に存在するウイルス構成たんぱく質エンハンシンは、これまで多くの顆粒病ウイルスで同定されており、機能として、他のバキュロウイルスと共にその宿主昆虫に摂食させた場合、そのウイルスの感染力を増進する作用がある。本研究では、TnGV顆粒体とバキュロウイルス(AcNPVおよびSeNPV)の封入体をシロイチモジヨトウを用いて生物検定しTnGV顆粒体中のエンハンシンたんぱく質による感染増進作用と、エンハンシン遺伝子を植物(タバコおよびイネ)へ導入し、耐虫性が付与されるか否かを調査した。さらに、エンハンシン遺伝子を持つバキュロウイルス組換え体を感染させた昆虫培養細胞で発現したエンハンシンに感染増進作用があるか否かについても調査した。 シロイチモジヨトウは常法により人工飼料育した。バキュロウイルスとして、ウワバの一種Autographa californicaの核多角体病ウイルス(AcNPV)とシロイチモジヨトウ(Spodoptera exigua) NPV、およびTnGVを用いた。生物検定は、3齡シロイチモジヨトウを用い、AcNPVまたはSeNPV多角体を単独またはTnGV顆粒体と共に、人工飼料に定量的に添加したものを24時間添食し、その後ウイルスフリーの人工飼料で飼育して行った。また、形質転換植物を用いた生物検定の場合には、凍結乾燥粉末のタバコの葉またはイネのカルスおよび生葉を用いた。検定後の解析は、死亡率からプロビット法によりMedian lethal dose (LD_<50>)(封入体/幼虫)を算出し、エンハンシン作用の検定区と対照区で得られた値の差をEnhancement indexとして表した。エンハンシンタバコは16系統を、エンハンシンイネは20系統を用いた。植物個体やバキュロウイルス組換え体でエンハンシン遺伝子が導入・発現していることを確認するために、PCR法、リボプローブによるノザン解析、および抗エンハンシンウサギ抗体によるウエスタン解析を行った。 シロイチモジヨトウ3齡幼虫を用いた生物検定の結果、LD_<50>は、AcNPVでは1.05×10^5、SeNPV T1株、SeNPVではそれぞれ4.04×10^3、1.92×10^2の値が得られた。これより、今回用いた3種のNPVのシロイチモジヨト
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ウに対する殺虫性は、SeNPVが最も高く次いでSeNPV T1株、AcNPVの順であった。さらに、TnGVによる感染増進効果をEnhancement indexにより評価すると、AcNPVについては1.49、SeNPV T1株、SeNPVについてはそれぞれ0.85,0.36という値が得られ、AcNPVでは約30倍感染が増進されるのに対し、SeNPV T1株では約7倍、SeNPVでは約2倍しか増進されなかった。また、AcNPV、SeNV T1株、SeNPVおよびTnGVの封入体を摂食させたシロイチモジヨトウ幼虫の胃腔膜をSDS-PAGEにより分析したところTnGVの封入体を摂食させた幼虫の胃腔膜の破壊が認められ、これがNPVの感染増進に関与を示唆していた。 さらに、エンハンシン遺伝子を持つバキュロウイルス組換え体を感染させた昆虫培養細胞で発現したエンハンシンの感染増進効果を調査したところAcNPVにおいては約14倍、SeNPVにおいては約2倍感染が増進された。 エンハンシン遺伝子を導入したタバコにおいてはエンハンシン遺伝子が導入・発現していることをPCR法、ノザン解析、およびウエスタン解析により確認し、エンハンシンを発現している個体(エンハンシンタバコの葉の凍結乾燥粉末を用い生物検定を行った結果、AcNPVにおいては約3〜10倍、SeNPVにおいては約2倍感染が増進した。さらに、エンハンシンタコの凍結乾燥粉末を混合した人工飼料を摂食し続けた幼虫は成長が阻害され異常な蛹化をおこすものが見られた。 同様の実験をエンハンシン遺伝子を導入したイネ(エンハンシンイネ)のカルスを用いて行った場合AcNPVの感染は約2〜5倍増進された。また、エンハンシンイネの生葉を用いて行った検定ではAcNPVの感染は約10倍増進された。さらにカルスの凍結乾燥粉末を混合した人工飼料を摂食し続けた場合、幼虫の成長はタバコを用いた場合とは異なりほとんど抑制されなかったが、蛹化異常が見られた。 以上の結果よりエンハンシン遺伝子を導入した組換えウイルスおよび形質転換植物(タバコとイネ)はTnGVと同様にNPVの感染を増進することが確認された。従って、今後エンハンシン遺伝子やその類似遺伝子を様々な植物体へ導入していくことで(1)昆虫ウイルスを自然界へ大量に散布することなく、自然界における殺虫性物質の希釈を回避し、(2)目的昆虫のみに対して選択毒性を与え、(3)他の微生物農薬との組合せによりさらに効率のよい害虫防除を確立してゆけるものと期待された。 隠す
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