研究課題/領域番号 |
06044141
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
崎山 文夫 大阪大学, 蛋白質研究所, 教授 (40029947)
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研究分担者 |
李 紹良 大阪大学, 蛋白質研究所, 助手 (40252720)
佐藤 衛 大阪大学, 蛋白質研究所, 助手 (60170784)
乗岡 茂巳 大阪大学, 蛋白質研究所, 助教授 (70198638)
CLARKE Adrie メルボルン大学, 植物学部, 教授
LI Shao-liang Institute for Protein Research, Osaka University Assistant Professor
エイドリアン E.クラー メルボルン大学, 植物学部, 教授
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
2,900千円 (直接経費: 2,900千円)
1995年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
1994年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
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キーワード | ニンホンナシ / 自家不和合性 / リボヌクレアーゼ / 立体構造 / 一次構造 / S-RNase / Nicotiana alata / 非S-RNase |
研究概要 |
ニホンナシS-RNaseの構造解析:S_2-RNaseは従来のゲル濾過とイオン交換クロマトグラフィーを組み合わせた方法では、高収量で精製するのが不可能であった。そこで花柱抽出物を直換CM-celluloseカラムでイオン交換クロマトグラフィーを行なうことで、S_2-RNaseを他のS-RNaseと同程度の収量で精製することに成功した。精製したS_2-RNaseを還元S-カルボキシメチル化後、リジルエンドペプチダーゼで消化し、逆相クロマトグラフィーによりペプチドに分離した。各ペプチドのアミノ酸配列分析を行ない、そのアミノ酸配列をもとにオリゴヌクレオチドを合成し、PCR法を用いてS_2-RNaseをコードするCDNAのクローニングに成功した。その塩基配列からS_2-RNaseの全一次構造が推測できた。S_3-RNaseの一次構造は、精製標品を還元S-カルボキシメチル化後、リジルエンドペプチダーゼ、V8プロテアーゼ、Asp-Nの3種類のプロテアーゼでそれぞれ消化し、逆相クロマトグラフィーで分離した。各ペプチドのアミノ酸配列分析の結果、全一次構造の約98%の配列が決定した。S_4-RNaseはすでに前年度に全一次構造を決定した。S_5-RNaseは、精製標品を還元S-カルボキシメチル化後、リジルエンドペプチダーゼ、V8プロテアーゼ、Asp-Nの3種類のプロテアーゼでそれぞれ消化し、逆相クロマトグラフィーで分離した。各ペプチドのアミノ酸配列分析の結果、全一次構造の約98%の配列が決定した。 以上の結果、S_2-RNaseの全一次構造(遺伝子からの推定)、S_3-RNaseの部分一次構造(98%)、S_4-RNaseの全一次構造、S_5-RNaseの部分一次構造(98%)が決定された。これらの一次構造を、すでに決定されているナス科植物のS-RNaseの一次構造、ニホンナシと同じバラ科であるリンゴ由来のS-RNase、およびコウジ菌由来のRNaseT_2の一次構造と比較した。ニホンナシ由来のS-RNaseはすべてRNaseT_2の2つの触媒部位ヒスチジン近傍に存在するアミノ酸配列と同じ配列を含んでおり、ナス科同様、ニホンナシのS-RNaseもRNaseT_2型酵素であることが判明した。ナス科には、アミノ酸配列がS-RNase間で著しく保存されている領域(conserved領域)が5ケ所存在し、アミノ酸配列がS-RNase間で殆んど保存されていない領域(hypervariable領域)が5ケ所存在している。一方、ニホンナシのS-RNaseを含めたバラ科のS-RNaseには、7ケ所のconserred領域と2ケ所のhypervariable領域が存在していた。ナス科の5ケ所のconserred領域は、すべてのバラ科でもconserred領域になっており、これらはS-RNase固有の立体構造形成に重要な役割を果していると考えられる。バラ科の残りの2ケ所のconserred領域は、ナス科ではhypervariable領域になっている。このことは、この2ケ所のconserred領域がバラ科特異的な構造モチーフと言える。バラ科の2ケ所のhypervariable領域は、ナス科でもhypervariable領域になっている。特に残基番号43番から62番までのhypervariable領域は最も大きく、最もアミノ酸置換に富む領域で、恐らく花粉側のS遺伝子産物に認識されているS遺伝子型特異的構造モチーフであると考えられる。 タバコS_1-RNaseのX線結晶構造解析:ハンギングドロップ蒸気拡散法により約150種の結晶化条件をスクリーニングした結果、沈殿剤としてPEG-6000を用い、pH6.0、蛋白質濃度12mg/mlの条件下でX線結晶構造解析に適した結晶を得ることに成功した。初期的なX線実験の結果、得られた結晶は単斜晶系に属し、空間群P_<21>、a=80.3Å、b=77.9Å、c=68.3Å、B=90.0Åと決定され、原子レベルでの構造解析が期待できることが判明した。回折強度測定は、イメージング・プレートを用いた高速回折計で行い、native結晶に関して2.7Å分解能までの回折強度データを収集した。現在、重原子同型置換法による構造解析を行なうために、種々の重原子誘導体結晶をソ-キング法で調整し、回折強度データを収集して良好な重原子誘導体結晶の探索に努めている。 以上述べたニホンナシS-RNaseの一次構造解析とタバコS_1-RNaseの立体構造解析をさらに推し進めれば、タバコS_1-RNaseの立体構造を基盤として、ホンナシS-RNaseの共通構造、科特異的構造、S遺伝子特異的構造が明らかになると考えられる。
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