研究課題/領域番号 |
06044152
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
小熊 惠二 岡山大学, 医学部, 教授 (00002262)
小熊 恵二 岡山大学, 医学部, 教授
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研究分担者 |
JANET Holden ジェームスクック大学, 獣医学部, 研究員
ROBERT Hirst ジェームスクック大学, 獣医学部, 助教授
横田 憲治 岡山大学, 医学部, 助手 (00243460)
井上 薫 岡山大学, 医学部, 助手 (40260103)
HIRST Robert James Cook University, Department of Veterinary Medicine, Associate professor
HOLDEN Janet James Cook University, Department of Veterinary Medicine, Researcher
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研究期間 (年度) |
1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
1994年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
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キーワード | ボツリヌス毒素 / ボツリヌス中毒 / ワクチン / 血清療法 / ELISA / 毒素遺伝子 |
研究概要 |
1994年末、小熊、井上、横田の3名がタウンズビルのジェームスクック大学に行き、以下のことを行った(小熊は当研究費以外の費用で参加)。 1.近くの牧場より土壌を採取し、これよりボツリヌスC型、D型菌の分離に成功した。 2.これらの菌の生化学性状および毒素型を決定し、C型、D型菌であることを確認した。また、これらの菌が持つ毒素遺伝子が、既に作製してある毒素遺伝子のプライマーを用いたPCRで増幅されるかを検討した。調べたC、D型菌各10株においては、私達が基準株として用いているC-StockolmおよびD-1873と同一のバンドを示したことから、類似の毒素遺伝子を持っていることが示唆された。 3.C型毒素産生株を、cellophane-thbe法という特殊な方法により大量培養し、カラムクロマトグラフィーを用いて精製した。 4.精製毒素と6種類のモノクローナル抗体とを反応させ、抗原性を解析した。この毒素は6種類中4種類のモノクローナル抗体とは、C-Stockholmと類似の反応を示したが、他の2種類の抗体とは多少異なった反応を示した。その他、中和試験の結果から、この毒素はC-Stockholm株の毒素とは多少異なるが、毒素のC端側の抗原性は同一であり、ここを認識するモノクローナル抗体と反応し、中和されるとの結論を得た。 5.牛の血清中の抗体価を、この精製毒素とC-Stockholmを抗原としてELISAで測定したところ、両者でそれほどの差がないことを確かめた。 以上のことより、オーストラリアの牧場の土壌は、ボツリヌスC型、D型の芽胞により広く汚染されていること、産生されるC型毒素の抗原性は、多少C-Stockholm毒素とは異なるが、C端側は同一であり、中和抗体として作用することが明らかとなった。従って、安全な効率の良いワクチンを開発する方法として、我々が既に得ている、C-Stockholm株の毒素遺伝子の3′端側の断片を、特殊なベクターを介して大腸菌に挿入し、大腸菌に毒素のC端側のペプチドを産生させ、これを精製しワクチンとして用いれば良い、との結論を得た。今回は時間が無くて出来なかったが、C型と同様にD型の場合も、そのC端側のペプチドがワクチンとして利用可能であると推察される。我々は既にD型毒素の遺伝子もクローン化しているので、この遺伝子の3′端側を利用し、同様の方法でペプチドを得、D型のワクチンとして利用する予定である。オーストラリアでは、牛はC型、あるいはD型の毒素で中毒死しているので、この両者のペプチド(ワクチン)を混合し接種する必要がある。我々はC型およびD型毒素のC端側をコードしている遺伝子を組み込んだ大腸菌もオーストラリアに持ってきたので、これらを増殖させストックした。今後、これらの遺伝子を切り出し、ペプチドを効率よく産生・放出する発現系に入れ直し、ワクチンを開発することとなった。 C型、D型のワクチンを混合し接種する上記の方法とは別に、C型、D型毒素間で(および他の型の毒素も含め)、共通の抗原性を示し、かつ、中和抗原として作用する部分があれば、それはワクチンとして利用可能である。このような考えのもと、毒素のN端側に存在し、各型の毒素で共通な「HFxxH」というZn^<++>-結合モチーフを持ち、かつ、毒素の活性部分と考えられる所に注目した。このZn^<++>-結合モチーフを含む15個のアミノ酸を人工合成し、これにヘモシアニンを結合させた。次いでこれと等量のFreundの完全アジュバントを混ぜた後、ラットの後肢足蹠を免疫した。免疫ラットより腸骨リンパ節を摘出し、これとマウスの骨髄腫細胞をポリエチレングリコールを用いて融合させ、モノクローナル抗体の産生を試みた。合成ペプチドと反応する抗体は70個程得られ、その内、C型、D型を含め各型の毒素と反応する抗体が2個得られた。しかし残念ながら、この2個ともいずれの型の毒素も中和しなかった。従って、この人工合成したペプチドはワクチンとしては利用できないが、各型の毒素と反応するモノクローナル抗体が得られたので、これはボツリヌス中毒の診断用として利用することとなった。
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