研究課題/領域番号 |
06044153
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
土屋 友房 岡山大学, 薬学部, 教授 (80012673)
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研究分担者 |
MALONEY Pete Johns Hopkins大学, 医学部, 教授
島本 整 岡山大学, 遺伝子実験施設, 助手 (90187443)
黒田 正幸 岡山大学, 遺伝子実験施設, 助手 (00253005)
津田 正明 岡山大学, 薬学部, 助教授 (80132736)
PETER C. Mal ジョンズ ホプキンズ大学, 医学部, 教授
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研究期間 (年度) |
1994 – 1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
8,800千円 (直接経費: 8,800千円)
1996年度: 2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
1995年度: 2,900千円 (直接経費: 2,900千円)
1994年度: 3,100千円 (直接経費: 3,100千円)
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キーワード | 能動輸送 / エネルギー共役 / シンポーター / アンチポーター / 機能部位 |
研究概要 |
イオンと共役する細胞膜能動輸送系について、主として生理学面・生化学面・遺伝子面からの解析を行った。 まず、大腸菌、ネズミチフス菌、エンテロバクター・エロゲネスのメリビオース輸送系、シトロバクターのH^+/ラクトースシンポーター、腸炎ビブリオのNa^+/グルコースシンポーターについて解析を進めた。メリビオース輸送系については、カチオン共役に関与する部位の他に、輸送制御に関与する部位、温度感受性に関与する部位の解析を行った。腸炎ビブリオの細胞膜には、フォスフォトランスフェラーゼ系の他にNa^+の電気化学的ポテンシャルを駆動力とするグルコース輸送系、すなわちNa^+/グルコースシンポーターが存在することを見いだした。この系の性質を詳細に解析すると共に、遺伝子のクローニングと構造解析を行った。そしてこの輸送系が、ヒトのグルコース輸送系(SGLT1およびSGLT2)などと一次構造上でかなり類似していることが明らかになった。腸炎ビブリオの栄養輸送タンパク質とヒトの栄養輸送タンパク質の間に、アミノ酸配列の類似性があることが示された最初の例である。この構造類似性と特異的阻害剤であるフロリジンの作用などから、いくつかの機能部位が推定された。一方、シトロバクターのH^+/ラクトースシンポーターについても、性質の解析を行うと共に遺伝子のクローニングと構造解析を行った。その結果、やはり他の輸送タンパク質との間に構造の類似性があることがわかった。その類似性からカチオン共役部位や基質認識部位に関する知見が得られた。さらに、エンテロバクター・クロアケのメリビオース輸送タンパク質の遺伝子クローニングと構造解析から、その特徴、エネルギー共役機構に関する知見が得られた。 大腸菌の糖リン酸・リン酸アンチポート系について、遺伝子操作により効率的な大量発現をつくり、さらに簡便な精製系を確立した。そして再構成系を用いてこのアンチポーターの生化学的性質を解析した。その結果、この輸送系におけるエネルギー共役機構がほぼ明らかになった。 また、大腸菌と腸炎ビブリオのNa^+/H^+アンチポーター(NhaA系)についても、性質を詳しく解析した。特に、変異株と部位特的変異体の解析からアミロライド結合部位、pHセンサー部位、機能に必須なアミノ酸残基などが同定され、輸送機構、エネルギー共役機構にかんする理解が大いに深まった。また、遺伝子融合法を用いて膜内配向性(トポロジー)を明らかにし、各機能部位がどのあたりに位置するのかを明らかにした。さらに、他の生物のNa^+/H^+アンチポーターとの比較から、機能部位に関する知見が得られた。そして、細胞生理における意義に関する新たな知見も得られた。一方、腸炎ビブリオの新たなNa^+/H^+アンチポーター(NhaB系とNhaD系)と緑膿菌のNa^+/H^+アンチポーターについて、その性質を詳しく解析すると共に、遺伝子のクローニングとシーケンシングを行った。NhaD系と緑膿菌のアンチポーターはこれまでに微生物界で知られたいものとは全く異なる新しいタイプのものであることがわかった。 さらに、大腸菌のセリン輸送系(Na^+セリンシンポート系)の遺伝子欠損変異株の構築と遺伝子クローニングに成功し、シーケンスを決定することができた。そして一次構造と機能、輸送機構との関係を解析した。この系におけるエネルギー共役様式を明らかにした。また、遺伝子の全構造が明らかにされているインフルエンザ菌にもこれと良く似た遺伝子があることがわかった。解析の結果、確かにインフルエンザ菌にもNa+/セリンシンポーターがあることがわかり、その生化学的性質を明らかにした。 Johns Hopkins大学との共同研究により、これまで苦労していた問題点を克服することができ、研究の遂行上大いに有益であった。
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