研究課題/領域番号 |
06044157
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
藤田 敏三 広島大学, 理学部, 教授 (20004369)
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研究分担者 |
MARKUS Brade フランス国立サクレ原子核研究所, 研究員
A.HAMID Moud フランス国立サクレ原子核研究所, 主任研究員
中村 文彦 広島大学, 理学部, 助手 (40231477)
鈴木 孝至 広島大学, 理学部, 講師 (00192617)
前野 悦輝 広島大学, 理学部, 助教授 (80181600)
MOUDDEN A.hamid LaboratoireLeon Brillouin, CE-Saclay, France
BRADEN Markus LaboratoireLeon Brillouin, CE-Saclay, France
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研究期間 (年度) |
1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
4,700千円 (直接経費: 4,700千円)
1994年度: 4,700千円 (直接経費: 4,700千円)
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キーワード | 高温超伝導 / 構造相転移 / 中性子散乱 / 音響フォノン / 弾性率 / ソフトフォノン / 単分域化試料 |
研究概要 |
[目的]I.高温超伝導体La_<2-X>Sr_XCuO_4(LSCO)における高温正方晶(THT)-中間温度斜方晶(OMT)相転移は、CuO_6八面体が(110)方向または(110)方向に傾くことによって起きる。それぞれは、独立な2つの秩序変数であり、THT相ブリルアンゾーン境界X点における2つの星の対称性を持つTOフォノンに対応している。本研究では、(i)中性子散乱実験によりTHT-OMT構造相転移に関する新しい知見の取得、および(ii)この構造相転移と高温超伝導状態との関係の解明を目指す。 II.x=0.125付近のLSCOでは、OMT相において超伝導と競合するCuO_2面内の格子不安定性が存在する。この原因として、L(Ba)CO系で存在するOMT-低温正方晶(TLT)構造相転移を考えることができる。このOMT-TLT相転移機構はまだ明らかにされていないが、我々はブリルアンゾーン境界Z点のソフト化で説明できる可能性があると考えている。この正否を中性子散乱実験により確かめる。 [結果]I-1構造相転移に関する新しい知見 1.中性子実験は、我々が育成した単結晶LSCO(x=0.14)に対して行った。 2.これまで得ていた超音波による弾性率の測定結果との対応をみるため(ξξ0)方向の音響フォノン分散を測定した。この結果、THT相ブリルアンゾーン境界Γ点近傍のLAおよびTA(Z)フォノンの分散は、それぞれに対応する弾性率C_<66>+(C_<11>+C_<12>)/2およびC_<44>と一致することを確認した。 3.更に、X点近傍でソフトモードX^+_4の(ξξ0)方向の分散を測定した。この結果から、室温ですでに、X^+_4モードはソフト化してることを確認した。これは他のグループによりこれまで報告されている結果と矛盾しない。 4.いろいろな温度で、超格子反射(1/2 1/2 4)のエネルギースキャンを行い、ソフトモード周波数の温度依存性を得た。更に、このピーク強度の温度依存性より、秩序変数の温度依存性を得た。この結果から秩序変数の臨界指数を求めたところ、β=0.34を得た。この値は、3次元XYモデルから予言される理論計算値0.33と極めて近い。THT-OMT構造相転移は2つの独立な秩序変数を持つので、本来XYモデルで記述されると考えられる。 しかし、本研究で用いた試料より質の劣る試料を用いて行われてきた中性子実験、超音波実験、熱膨張率測定などからは、平均場近似で理解できる臨界指数しか得られていない。本研究において得たβ=0.34が正しいなら、伝導に関しては2次元的な性質が強いLSCOだが、構造相転移に関しては3次元的な相関が重要であるという新しい知見を得たことになる。 ただし、この測定においては、OMT相における双晶境界が影響する可能性がある。この点をクリア-して我々の結果を確認するため、モノドメイン化した試料で中性子実験を行う計画が進行中である。 I-2構造相転移と高温超伝導状態との関連 THT-OMT構造相転移で、2つの秩序変数に対応するフォノンモードの中、1つのみがクエンチする。もう一方はソフトフォノンのままOMT相に存在している。ソフトフォノンが超伝導転移温度を高くしている一因とも考えられるので、このソフトフォノンと高温超伝導状態との関連は、興味深い。本年度も、このソフトモードの検出を試みたが観測できなかった。現在、単分域化試料を用いた実験計画を進めている。 II ブリルアンゾーン境界Z点のフォノン異常 この知見を得るため、波数(008)でエネルギースキャンを行った。しかし、本年度の研究からはZ点のフォノン異常の証拠を得ることはできなかった。この理由は、LSCOにおける超伝導と競合する構造不安定性は、実際に構造相転移が起きているわけではなく、その揺らぎの効果であるため、Z点でのフォノン異常が極めて観測しづらいからと考えられる。そこで、実際にOMT-TLT相転移を示すNdをドープしたLSCOの単結晶を育成し、この課題についてもサクレー研究所との共同研究のかたちで追求していく予定である。 実際、平成7年度も引き続き次の具体的な課題に関して研究協力を行うことをサクレーグループとの間で了解を取っている。(1)La-214系の低温相転移に関する研究(2)(La,Sr)_2CuO_4のZ点フォノンのソフト化と構造相転移(3)新超伝導体Sr_2RuO_4の構造解析
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