研究分担者 |
MOLDRUP P. Univ. of Aalborg, 土木工学科, 助教授
ROLSTON D.E. Univ. of California,Davis, 環境工学科, 教授
井藤 壮太郎 広島大学, 工学部, 教授 (90034404)
ROLSTON Dennis e University of California, Davis, Professor
寺西 靖治 広島大学, 工学部, 教授 (10032020)
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研究概要 |
本研究の目的は,トリクロロエチレン,トルエンなどの揮発性有機化合物,農薬,窒素化合物などの土壌内における挙動を解析し,物質移動モデルを構築して,その運命予測を行うことにある.本研究では主として次の5つの項目に焦点をあてた:1)農薬の土壌への吸着・脱離と微生物分解,2)揮発性有機化合物(Volatite Organic Chemical,VOC)の土壌内移動特性,3) VOCの土壌内拡散と微生物分解,4)土壌内における窒素の挙動,5)土壌内における物質移動のモデル化.得られた結果を以下に要約する. 1)農薬の土壌への吸着・脱離と微生物分解 2種類の農薬(Asulam,Simazine)と2種類の土壌(マサ土,ローム土)を用いて吸着・脱離過程および微生物分解を明らかにするためにbatch実験を行った.その結果,次のようなことが明らかとなった. (1)マサ土における吸着は瞬間可逆平衡型(Henry型)に最もよく従うが,ローム土においてはFreundich型の吸着等温線に最も適合する. (2)脱離過程についてはローム土において大きなヒステリスが認められた.脱離における農薬の回収率はマサ土において90%以上,ローム土では10〜20%であった. (3)農薬の微生物分解は土壌溶液中でもわずかに起こるが,土壌を含む溶液中での分解量の方が大きい.土壌表面(あるいは内部)での微生物分解を調べることが今後の課題である. さらに移流分散の条件によるBatch実験との比較から,ローム土のように吸着が強い土については,Henry型(線形)吸着を仮定して遅延係数を求めることはできないことが明らかとなった.遅延係数は物質の移動性を表す指標である.また本研究ではVan Genuchtenによる非平衡吸着モデルにより農薬の土壌内挙動を説明した. 2)揮発性有機化合物(Volatite Organic Chemical,VOC)の土壌内移動特性 VOCの土壌内移動特性を表す指標として遅延係数(R)に着目し,本研究で提案した土壌マイクロカラム法によりVOCのRを決定し,諸因子のRに与える影響について検討した.VOCとしてはトリクロロエチレン,テトラクロロエチレン,トルエン,土壌にはマサ土とYolo loamを用いた.得られた結果は次のとおりである.なお,ここでは土壌内に流れのある移流分散(動的)条件下での移動特性に着目し
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た. (1)土壌内間隙流速やマイクロカラム形状がRに与える影響は小さい. (2)土壌水分の減少とともRは急激に増大する.これは,乾燥状態ではVOCが土壌へ直接吸着するためである. (3)温度の影響は土壌水分量が低い範囲で大きくなる. (4)土壌特性はRに大きな影響を与える.水分量の影響は土壌表面の面積の小さい土壌で特に大きい. (5)次の項で述べる拡散(静的)条件におけるRは,移流分散条件の場合に比べ数倍大きくなることが認められた. 3)VOCの土壌内拡散と微生物分解 2)では移流分散の動的条件下でVOCの遅延について検討したが,流れのない拡散条件で拡散チャンバー法によりVOCの吸着・遅延および微生物分解について調べた.得られた結果は以下のとおりである. (1)VOC(トリクロロエチレン,トルエン)の吸着は土壌水分量に大きく依存する.土粒子を覆う水分子層が4層以上ではHenry則に従うが,それ以上の水分子層では,従わず,指数関数的に吸着が増大する. (2)土壌特性はVOCの吸着に大きな影響を与える.乾燥状態ではVOC吸着は土粒子の比表面積に依存し,湿潤状態では土壌の有機物量に依存する. (3)VOCの微生物分解は共存する他の化学物質に強く依存する.トリクロロエチレンの好気性分解はトルエンが存在する場合にのみ起こる.同時にトリクロロエチレンの濃度が高いときには阻害効果があることが認められた. 4)土壌内における窒素の挙動 土壌カラム(マサ土)を用いて急速浸透処理法の条件下における硝化過程について検討した.その結果,30℃では3〜5日で硝化が定常に達するのに対し,10℃では20日のTimelayがあること,10℃では窒素として1g/m^2・h以上の供給量ではアンモニアの蓄積が起こることなどが明らかになった.硝化速度係数は10℃,30℃ではそれぞれ1.0/hr,6.0〜9.0/hrであった. 5)土壌内における物質移動のモデル化 VOCの土壌内移動を記述する3次元解析解モデル,2),3)で与えられたRと土壌水分量との相関を表す指数型モデル(1パラメータ),土壌内浸透流のフロントを簡便に予測する3パラメータモデル,移流分散方程式に基づく簡便で精度の良い1次元モデル(MCSモデル)をさらに簡便化してプログラミングを容易にしたSemi-analytical Modelなどを開発・構築した.これらのモデルにより土壌内の汚染物質と水の挙動を記述することができる. 隠す
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