研究分担者 |
小沢 隆司 大阪府立大学, 農学部, 助手 (20152481)
関 達治 大阪大学, 生物工学国際交流センター, 教授 (50029245)
魚住 武司 東京大学, 農学部, 教授 (40011978)
東 四郎 鹿児島大学, 理学部, 教授 (60041216)
駒形 和男 東京農業大学, 農学部, 教授 (70013331)
NANYAKORN Bo タイ国スラナリー工科大学, 生物工学部, 教授
BAYANI M Esp フィリッピン大学, 生物工学研究所, 助教授
MADE Sri Pra インドネシア国立科学研究所, 生物工学センター, 所長
BOONKERD Nantakorn Professor, Suranaree University of Technology
PRAMA Made sri Director, Indonesian National Institutes of Science, Center for Biotechnology
ESPIRITU Bayani m. Associate Professor, University of Philippines, National Institute of Biotechnol
NANTAKORN Bo タイ国スラナリー工科大学, 生物工学部, 教授
|
研究概要 |
日本学術振興会の拠点大学方式による、学術交流と連動させながら、特定の研究課題を設定して、組織的かつ継続的に共同研究を行うことによって、国際的学術交流の実をあげることを目的とする。生物工学分野で、特に東南アジアの研究者からの要望の高い、窒素固定微生物群の分離・同定・育種の基礎研究とそれらの菌群を用いた穀物・作物・樹木増産への応用研究を総合的に、システマティックに行おうとするものである。特に東南アジア産植物に共生する窒素固定微生物群に焦点をしぼり、菌株の採集、分類、優良株の選抜を行い、酸性耐性菌の育種を行った。 1。新規窒素固定細菌の検索と分類同定:タイ、インドネシア、フイリッピンの土壌および植物根圏より、熱帯性窒素固定細菌を分離した。特に酸性土壌に耐性の細菌に焦点を当て、火山段丘土壌のマメ科植物の根粒より、根粒菌をそれぞれの国より約20種類ずつ分離した。特に研究分担者の小沢は、インドネシア、スマトラの酸性土壌よりダイズ根粒菌を10数株分離した。研究分担者のPuranaらはアカシア樹木の根粒菌を20種類分離した。研究協力者のHazuraらは、インドンネシアのsnake neans,peanut,Bogor peanut,およびcover cropsよりRhizobiumと思われる22菌株およびBradyrhizobiumと思われる4株を分離した。研究分担者のNantakornらは、タイ国の酸性土壌で生育するピ-ナツ、ダイズより根粒菌を分離した。さらに、フイリッピン国のEspiritsuらは、ルソン島火山大地のピ-ナツなどより多数の根粒菌を分離した。 2。これら分離したの菌株の根粒形成能、共生窒素固定活性、薬剤耐性、およびERIC-PIRパターンを調べた。分離した根粒菌の窒素固定能、酸性pH耐性およびアルミニュウム耐性能を調べた。その結果、pH4.0で生育する根粒菌を発見した。 3。上記菌株のいくつかについて、各国の研究者を招請し、研究分担類の所属する駒形、室岡、東、関、小沢研究室で、菌学的性質を化学分類法および遺伝子の相同性をPCRを用いて明らかにした。PCR法は、土壌中の育種根粒菌の生態を追跡調査するのに最も有効であることがこの研究で明らかとなった。 また、フイリッピンの酸性土壌のピ-ナツ根粒より分離した根粒菌は、今までに報告のない、新種であることが判明した。この分類学的性質については現在詳細なデータを集めている。 4。関らはインドネシアの森林から分離した18株のBradyrhizobium属細菌の16SリボゾームRNA遺伝子の塩基配列の比較より、系統分類研究を行っている。 5。魚住らはイネ根圏から分離された、窒素固定菌Azospirillum lipoterumの窒素固定能遺伝子draTGオペロンが、微好気的条件でのみ発現し、好気条件では発現しないことから、この菌の窒素固定は微好気条件でのみ起こることを明らかにした。 6。東らは、窒素固定菌の遺伝子工学的改良のため、プラスミド上のnod遺伝子を、溶原ファージの組み替え領域を使って、根粒菌染色体上へ移行させることに成功した。このようにして得られた転換菌は宿主のマメ科植物に根粒を形成した。 7。室岡らは、酸性土壌耐性・広宿主窒素固定細菌の育種のため、東南アジジで分離された根粒菌の酸性領域での生育を調べ、酸性土壌で生育可能な酸性耐性度の高い菌株を選抜した。この菌株と窒素固定能に優れたレンゲソウの根粒菌との接合伝達およびエレクトロポレーション法による育種を検討している。 8。平成6年度に当該共同研究の成果をとりまとめ、タイ国の関連研究者に情報提供する目的で、公開セミナーをタイ国コンケン市で開催した。研究分担者及び研究協力者による13の演題があり、研究成果の評価と今後の共同研究の進め方について熱心に討議された。セミナー参加者は約50名であった。 9。平成7年度に当該共同研究成果をとりまとめ、インドネシア国の関連研究者に情報提供するため、公開セミナーをインドネシア国ジョグジャカルタ市及びデンパサール市で開催し、研究分担者および研究協力者による17の演題があり、共同研究成果について活発な討論が行われた。セミナー参加者は延べ約60名であった。 10。タイ国、インドネシア国、フイリッピン国の農地における化学肥料及び根粒菌を接種した堆肥にたいする作物成長を比較検討し、根粒菌接種堆肥の著しい成長促進効果を確認した。
|