研究課題/領域番号 |
06044168
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 久留米工業高等専門学校 |
研究代表者 |
谷口 宏 久留米工業高等専門学校, 校長 (10037715)
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研究分担者 |
TIDWELL Thom トロント大学, 化学科, 教授
STANG Peter ユタ大学, 化学科, 教授
北村 二雄 九州大学, 工学部, 助教授 (00153122)
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研究期間 (年度) |
1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
1994年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | 超原子価化合物 / 超原子価ヨウ素試薬 / ヨードニウム塩 / ベンゾチオフエニウム塩 / 液晶性ジアセチレン / ベンザイン発生試薬 |
研究概要 |
有機反応における超原子価元素の役割の解明は、典型元素から遷移金属元素を含めた膨大な数の有機化合物の性質及び反応の解明に役立ち、有機化学を種々の元素まで拡張し、さらに体系化することはこれからの有機化学の進むべき道の一つである。本研究では、このようなことを念頭におき、種々の超原子価ヨウ素化合物あるいは硫黄化合物を中心に研究を行った。 超原子価化合物の合成法を確立するため、種々の高反応性超原子価試薬を開発し、その試薬を用いた新しい超原子価化合物の合成と反応を行った。 1.超原子価試薬の開発 高反応性超原子価ヨウ素試薬の開発として、ヨードシルベンゼン(PhIO)をトリフルオロメタンスルオン酸(TfOH)で活性化させたヨウ素試薬を開発してきたが、2倍のTfOHと反応させると新規なp-フェニレン型ビスヨウ素試薬が得られた。ヨードベンゼンジアセテートを2倍のTfOHを用いても高反応性のヨウ素試薬が得られた。 また、o-ヨードシル安息香酸を2倍のTfOHで活性化させると、高反応性のヨウ素試薬が得られた。この試薬は芳香族化合物やアルキン類との反応によりカルボキシル基を有する種々の置換ヨードニウム塩の合成に有用であることがわかった。 本研究で開発したこれらのヨウ素試薬は、極めて高い反応性を有し、反応性に乏しいハロゲン化ベンゼンとも速やかに反応することが判明した。これらのヨウ素試薬は、これまで知られた有機ヨウ素試薬の中でも極めて反応性の高い試薬の範疇に分類される。 2.高反応性の要因の解明 本研究で開発した超原子価ヨウ素試薬は極めて高い反応性を有することが判明した。この高い反応性を解明するため、PhIOを種々の酸により活性化した試薬を調製し、その反応性を調べたところ、ヨウ素に配位したリガンドの脱離性が高い程反応性も高く、さらに、芳香環に置換した電子吸引性素も反応性も高めていることがわかった。 また、置換反応に対する超原子価ヨウ素化合物の高い反応性は、フェニルヨードニオ基が極めて高い脱離性を有することによる。 3.高反応性超原子価試薬を用いた新規超原子価化合物の合成 本研究で開発した試薬は、種々の芳香族化合物、アセチレン化合物と反応し、新規なヨードニウム化合物の合成に有用であることが判明した。これらの試薬の使用により、p-フェニレン型ヨードニウム塩やカルボキシル基置換ヨードニウム塩が簡便に合成できた。 また、新規な高配位硫黄化合物として1-アリールベンゾチオフェニウム塩をジアリールヨードニウム塩との反応により簡便に合成できることがわかった。このベンゾチオフェニウム塩はビニルカチオンへの分子内環化反応によっても合成された。 本年度は超原子価試薬とそれを用いた新規超原子価化合物の合成を中心に研究を行い、その目的はほぼ達成できたが、今後は本研究で得られた超原子価化合物の新しい反応を開発したい。 特に興味ある結果として、長鎖アルコキシ基を有するアルキニルヨードニウム塩の合成をその反応を利用した液晶性ジアセチレンの合成およびヨードニウム塩の高い反応性を利用した新規ベンザイン発生試薬の開発である。これらの成果は有機合成上極めて重要な成果であり、今後発展させていく予定である。さらに、超原子価化合物の合成・反応の検討により、超原子価元素の本質を解明しこれまでの炭素の有機化学との比較検討により、体系化の基礎としたい。 以上のように、本研究は日米加お互いの協力により順調に遂行できた。特に、平成6年11月、スタング、ティドウェル両教授を招聘でき、超原子価試薬の合成及び反応性に関する研究討論を行ったことにより、多大なる研究の進展が見られ、本研究補助金の助成に深く感謝の意を表する。
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